『現代詩手帖』の12月号。「現代詩年鑑」が届いた。短歌関連の「短歌年鑑」を長らく読んでいたものには新鮮な刺激があった。
構成が充実している。「展望鼎談」が巻頭の18ぺージを占め、「総展望」が20名の執筆者が評論を掲載している。そのあと書評12冊、新人への「今年度の収穫」というアンケート。アンソロジー、詩人の住所録と続く。
「展望鼎談」も「総展望」も社会や人間に如何に切り込むかが語られている。「80年代以降の社会の変化」「現代詩のライトバースが果敢に人間に切り込んでいること」「改めて戦後詩の意味を考える」「生活詩で知られた茨木のり子没後10年の論評」「沖縄の基地の問題」を踏まえた随想、「バブル崩壊、オウム真理教事件、9,11、東日本大震災、IT革命と長期不況を経て現代詩はどうあるべきか」が次々と語られる。
「現代詩は文学であり、社会や人間に切り込むのだ」という詩人の矜持が伺える。詩人60人余りへのアンケートも「印象に残った詩集3冊」「印象に残った詩作品5編とその理由」「ジャンルを問わずに関心を持ったもの」が挙げられている。
現代詩の一年の総まとめに相応しいものだ。
「2016年 代表詩選」というアンソロジーも読みごたえがある。100人を超える作品が収録されているが、これが読み応えがある。毎年顔ぶれがかわるようだし、自選ではないようだ。ここを読んで気に入った作品を読むだけで大きな収穫がある。
アンソロジーでは、大江麻衣、高平よしあき、細田傳造、北原千代、高橋順子、大木潤子、三角みづ紀、谷川俊太郎、井川博年、池井昌樹、大橋政人、清水あすか、田野倉康一の作品が完結で抒情が凝縮されていると感じた。詩集のタイトルが書いてあるからアマゾンで詩集を買う目安にもなる。
「ここに詩がある」「詩情がある」と歌人は良く言う。だがこれらの作品群、評論の前には圧倒される。「短歌は立ち遅れている」と正直思う。
ここには言葉遊びではない分厚い文学論、圧倒されそうな熱意が感じられる。短歌に携わるひとに一読を勧めたい。
