3月16日マチネの観劇記です。
~あらすじ~
1800年代ビクトリア朝のイギリス。ジェーン・エアは孤児となり伯母(ミセス・リード)に引き取られるが、いじめられ不遇な幼少期をおくる。プライドが高く媚びることをしないジェーンは伯母に嫌われ、寄宿生としてローウッド学院に行くことになる。そこは規則が厳しく自由がなくジェーンは教師たちに反抗的であった。ただヘレンというかけがえのない友に出会い、「信じて許すこと」を学ぶ。しかし彼女は病気で死んでしまう。成長したジェーンはローウッド学院で教師をしていたが、自由を求めて家庭教師として学院を出る。ジェーンは、広大なお屋敷の主人、エドワード・フェアファックス・ロチェスターの被後見人・アデールの家庭教師となる。
主人のロチェスターは孤独で少し皮肉で謎めいた男だが、ジェーンは自分と共通する何かを感じる。この出会いが自分の人生を大きく変えていくことになるとはまだ知らない。夜になるとこの屋敷には女性の幽霊が現れ、そして大きな運命の歯車が動き出す—
(公式サイトより)
屋比久ジェーン&萌音ヘレンの配役での観劇。唯一取れた公演回だったので……逆バージョンも観たかったのですが配信はどうしよう……
松さん&さとしさんの初演と再演を観ています。本当に本当に素晴らしくて大好きだったのでどうしても比べてしまうところが多々あり。でも甲乙つけがたい、それぞれに軍配の上がる良さがあったと思います。フワフワのお嬢様=当時の理想の女性像
とは真逆の不器用な21歳差の小娘という設定、原作の英文学的な世界観という部分では今回の方が納得できるような感覚があったかなぁ~~決して屋比久ちゃんが不細工と言っているわけではないので誤解しないで~
ロチェスターとの身長差ある並び、ブランチ嬢との対比のバランスは今回の方がしっくり来たかなぁと
舞台のセットは初演&再演と変わらない感じ???当時の記憶が曖昧なので細かいところは違っているかも。前方左右のとちの木?は前はなかったような気がするけど……舞台の上手と下手にステージ席があるのは同じでしたが、今回は黒着用のドレスコードありで徹底されていたみたいですね
ステージ全体が絵画のような雰囲気で物語の中にスッと入っていける……こういうの好きだなぁ~
今回は新演出版。初演&再演はジェーンが出ずっぱりで語っていましたが、今回はコロス役の人たちが順番に語る形に変更されていました。その時々のジェーンの表情や醸し出される雰囲気が堪能できたのが良かったです。お芝居や歌は堅実にゆったり静かな印象。もう少し緩急をつけてほしいかなと思うところがあったのですが、やっぱり前と比べてしまっているところがあるせいなのかなぁと思ったり……。Painting Her Portrait、Sweet Liberty、Secret Soul、、、誰の目もない一人の空間だからこそ出せる感情爆発みたいなものがなくてちょっと物足りない???松さんのジェーンはこういうところの見せ方や演技が素晴らしかったと思うのですが、屋比久ちゃんのジェーンは粗削りな瑞々しさがあってジェーンのイメージにピッタリ。歌の中にそこはかとなく感じる何かがあったしこれまた素晴らしかったんですけどね。でもしつこいけど、演出的にもう少し勢いがほしかったです。あと歌詞ね!これは断然前の方が良かった
今回の方が直訳に近くて情報が豊富。ロチェスターの生い立ちやアデールとの関係、リード夫人の事情等々しっかり語られているので物語を理解しやすくなっていると思いました。ただ詰め込みすぎで説明的すぎるんですよね~~そのせいで言葉の後ろに存在する世界観、観る者の中にある知識との戯れを邪魔していて全く頭も心も広がらない
あと宗教的な部分もね……キリスト教がベースにない日本では若干鼻につくというか宗教色が色濃く出ていることで、せっかくの素晴らしい物語で伝わるものも伝わらないような気がして勿体ないなぁと。。。特に2幕最後のBrave Enough for Love。うろ覚えですが今回の歌詞では「愛する勇気」「信じること」「赦す」という言葉は出ていたと思うのですが……ホントのトコ分かった?と問いたいような
ただただ教訓めいたものに感じちゃったのがちょっとね。言葉をちょい盛りした解釈付きの歌詞だったとしても前の方が良かったなぁ~~「秘密」「生きることは辛いからこそ愛し合い信じる」……こっちの方が逆に聖書の内容がちゃんと浮かんでくるというか現代の教会で牧師さんが話しそうなことに繋がるところが思うんですけどね。
屋比久ジェーン、前半は心の内を絶対に見せない硬い表情。でもヤング・ジェーンを見る時やロチェスターとの絡みで不意に見せる喜怒哀楽の素直な感情に釘付け。歌の端々に秘めた荒らしさと強さを感じました。当時の当たり前だった女性像=ブランチ嬢のような感じ
とは一線を画す自分の足で立って自分の意志で生きる道を選んでいく女性像を見事に演じていました。素晴らしかった~
萌音ヘレン、、、今回はジェーン役とのダブルキャストにしたことで物語の中でのヘレンの存在感が大きくなっていたように感じました。ヘレンが繰り返しジェーンに説いた赦すことの大切さ……レミゼだと司教様的な立ち位置???善く生きることのきっかけになった……萌音ちゃんの真っ直ぐな歌声が心に響きました
ヘレンはストレートに信仰的に生きたと思いますが、そこに留まらないでより人間的な部分に引き寄せて生きたのがジェーンなのかなぁと思うところがあって……その関係性がダブルキャストで更に表現されていたのが良かったです。
芳雄ロチェスター!わたくし、数日前に観劇した演目で美しいことは素晴らしい
と豪語していましたがゴメンナサイ
芳雄くん、かっこよすぎるのが逆に……別にさとしさんがかっこよくないと言っているわけではないので誤解なきよう
ツッコミどころ満載でロチェスターの柄ではない気がしました。ジェーンに対して気になるからこそ出すちょっかいも……腹黒プリンス出たなっ!って感じで(苦笑)いや、ホントね、かっこいいのよ
冒頭のジェーン~ジェーン~の歌声から萌え~
だったし「心密かに」「プロポーズ」の場面はキュンキュンしたし歌声の重なりも素晴らしくて聞き惚れました。ただジプシーの場面はちょっと……声色を変えていても歌い方がザ・芳雄くんだからバレバレ(苦笑)最後の場面も火事に遭ったにして綺麗すぎだし杖の扱いが健康的すぎて……
春風さんのミセス・フェアファックスは人生経験豊かな包容力に溢れた女性を見事に演じていました。ソーンフィールドの歴史を全て見てきたような説得力のある立ち居振る舞いと言葉。最後の場面でジェーンが舞台中央で語っている時にロチェスターの後ろに座って背中をさすってあげている姿が温かくて温かくて全てに良かったね~と涙が溢れました
そしてじい的に一番ツボったのが中井さん演じるシンジュン。良い意味でウザくて良かったわ~~今の感覚では特に
明後日の方向に振り切れていて一歩間違うと新興宗教的ヤバそうな……胡散臭いまでに篤い信仰心のある青年で本当に本当に素晴らしかったです
ジェーンが去った時の表情にも説得力がありました。
いろいろ思うところはありましたが、やっぱり大好きな作品です。曲を聞いただけで心がじんわりしてきて随所で涙涙でした