日常

音楽劇「君よ 生きて」

2015-01-27 01:09:18 | 芸術
望月龍平さんの舞台、「君よ 生きて」のDVDを見た。
途中で何度も泣けた・・・。

僕らの上の世代の、戦後のシベリア抑留をテーマにしたお話。
ただ、あまり重くならないよう、音楽とユーモアが散りばめられていて、誰にでも見やすいような工夫が随所に行われていた。




自分は週に1度在宅医療をやっている。
相手のお宅にお邪魔するので、相手の素が出る。だから個性的なエピソードも多い。

これも4-5年前に書いたエピソード。懐かしい。

株(2010-09-14)
あおーの、でーもん(2010-10-26)
ピアノを弾きに来る謎の男(2010-11-02)


在宅医療の現場でで得た経験はすべて財産だが、この仕事をやって一番よかったと思っている経験は、戦争の話をかなりの当事者から聞けた事だ。

亡くなった母方の祖父がシベリアに行っていた。もっと祖父の話を聞けばよかったな、と思った。
だから、在宅医療でそう言う話を聞くことが多かったのは不思議だったが、必然の流れだったのかもしれない。


望月龍平さんの舞台「君よ 生きて」を見て、その時の色んなエピソードが自分の中に重なった。




人は、死が近くなると、世間体などの狭い価値観から解き放たれて自由になる。
ほんとうに話したかったことを、最後の最後に自然に話すようになる。
それは、ある意味で自然なプロセスだ。
そうして当事者から聞いた戦争の話は、生々しく、1つとして同じ話はなかった。そして、常に手に汗握る壮絶な話でもあった。


***********
キューブラー・ロス(Elisabeth Kübler-Ross)『ライフレッスン』
「死にゆく人は自分が失うものとその価値を知っている。みずからを欺いているのは生きている人の方なのだ。」
***********



時には、人をあやめたのではないか?と思われる、苦々しい話しぶりをする人もいた。

その罪悪感こそが病を生み出し、見えない深い層で毎日苦しんでいたのだろう、と思う方にも多数お会いしたのだった。
ご家族も、そういう話をほとんど聞いていないことが多い。
だから、こういう話は少し距離がある人間の方が、いい聞き手役になれるようだ。


戦争経験者は、ほとんどが90歳近くの高齢者。どんどん亡くなっている。
話を聞けるのは、おそらく今が最後の時期だろう。


戦争の話をあまりしたくないのは、やはりその時間を否定されたくないからではないかと思った。
その人にとって大切なものであればあるほど、深い体験であればあるほど、それはその人のたましいに近い場所で起きていること。
一般的に、臨死体験も誰にも話したがらない人が多いのは、その言葉にできない深い体験を言葉にするのが難しいだけではなく、聞き手が否定して聞くこと多いからではないかと、常々思っている。



そういう戦争の話を聞く度に、思わずこう言う言葉が出た。
「あなたたちのおかげで、今の日本があります。ほんとうに有難うございます。とても感謝しています。こうして日本語が話せて、神社も残っていて、日本の中を自由に行き来出来て、、、、すべてあなたたちのがんばりのおかげです。本当に有難うございます。
みなさんが残してくれたこの日本を、必ずやもっともっと、すごくいい国にしていきます。
そして、次の世代へとつなげていきます。だから大丈夫ですよ。あなたたちの思いを、少しも無駄にしませんよ。」
と。

こう伝えると、大抵の人は何か重荷がとれたような表情をする。
戦時中、僕らの祖父母の世代は、未来の祖国や未来のひと(それはわたしたちのことだ)のために命がけで戦争に参加した。
戦後は、手のひら返しのように冷ややかな目で見られたらしい。
糸くずのように複雑に絡み合ったこころ模様が透けて見えるような複雑な表情をするとき、その当時の心の痛みがこちらにも伝わる。


僕らは、上の世代に対して、こういう感謝の気持ちを、もっと素直に表現していいと思う。
祖先が一人欠けても、いまは存在しないわけだから。それは感謝としてしか表現できないだろう。


「いのち」は、自分が受け取ると決めないと受け取ることはできないし、自分が次につなげていくと決めないと、次につなげていくことはできない。
それは、あくまでも誰かがやることでも誰かが決める事でもなく、自分が決める事なのだと思う。




「君よ 生きて」を見ながら、自分の色々な体験も同時に思い出した。


望月龍平さんの音楽劇「君よ 生きて」は、ほんとうに素晴らしい演劇でした。
DVDで見たものの、あっという間に時間が過ぎて驚きました。

俳優さんの歌も声も芝居も踊りも、すべて素晴らしかった!!
今度は是非、生で見に行きたい!!
みなさんも機会を見つけて是非ご観劇ください。



音楽劇 「君よ 生きて」(HP)

音楽劇 「君よ 生きて」2014.3ダイジェスト Youtube動画

演劇人 望月龍平

望月龍平シアターカンパニーのブログ


2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (安藤)
2015-02-02 20:55:00
最近、泣ける映画やお芝居は苦手です。感情移入しすぎて、何だか恥ずかしいのです。でも、ご紹介頂いたDVD興味があります。

私も在宅医療で、お宅を訪問していろいろなお話をうかがうのが楽しくて好きです! ちょうどプライマリケアについて学ぼうと考えていました。 最先端医療も大切ですが、私は、それだけだと何だか医療というより科学という感じでで、人間らしい感情や優しさを抜きにしてしまう気がしています。もちろん、医学の進歩には科学が大切と思います。ただ、人体はすべてが科学で解明されているわけではなく、確かに目に見えない何ものかに守られている感覚をもつ方も多く、それによって病気が治癒したりする方もといらっしゃるようですね。(^-^)
返信する
Unknown (いなば)
2015-02-12 09:35:41
>安藤さん
そうですね。自分も泣こうと思っているわけではなく、かってに体が反応しているので、その涙、というからだの素直な反応をそのまま素直に経過させますよ。からだは賢いので、必要なことを必要な分だけ反応してくれますしね。


未来は、古代から多くのものを学び、それを現代とブレンドしたところにあると思います。
そういう意味で、どんなジャンルであっても歴史的な感覚、ときの流れの感覚というのは大事だなぁ、と常々思っています。(^^)
返信する