観測にまつわる問題

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ペルーの遺伝子資源とアンデスブランド

2018-02-07 22:22:53 | 日記
本日は時間がありましたが、記事は一点だけ「ペルーと貿易」に関連して書きます。TPP11も発効の見込みですし、わりとタイムリーなテーマかと。TPPそのものやメキシコあたりもその内やりたいですが、何時になりますことやら。新しいものにチャレンジすると、兎に角時間がかかります。何となく今日はペルーで何か書こうと思ったのですが(名護も書いてニュースチェックまで行けると思ってましたが)、何時ものことながら、超見込みが甘かった。でも、自分が面白いと思わないことは、絶対記事にしたくないですからね。(中)南米は筆者にとって地球の裏側もっとも縁遠い部類の地域でしたが、トランプ大統領とTPPの絡みで、このところ関心が高まってきています。

始める前に一点だけ、最近のペルーの政治状況の不透明さは指摘しておかなければなりません。

ペルー・フジモリ元大統領、恩赦で混乱は避けられない(WEDGE 2018年2月7日)

詳細は上記リンクに譲りますが、産経新聞でもお馴染みの故岡崎久彦氏の岡崎研究所が「しばらく様子を見る必要があります」と指摘しています。別に動乱が起こるとかそういうことではないんでしょうが、政治状況が不透明だと投資のリスクは否めないかもしれません。それを踏まえた上で以下「ペルーと貿易」記事をご覧ください。


(ペルーの輸出品目の内訳、出所:ペルー中央準備銀行)
参照:資源国としてのペルー(クラウドクレジット株式会社 社長杉山智行のブログ)
>金、銅、亜鉛の生産額はそれぞれ世界のトップ5に名を連ねています。
>同じく資源国であるチリが資源の輸出先のかなりを中国が占めているのに対してペルーの場合は資源の輸出先を多くの国に分散しており、価格の下落の影響は受けたものの、輸出量自体への影響は相対的に軽微にとどまっています。
>ペルーの民間企業は経常赤字を上回る海外からの期間の長い借り入れを行っており、これがマクロ経済の頑健性への信頼につながっています(短期の対外借入が多い場合は、対外ショックに弱くなる)。
>資源価格の下落によって資源関連の投資プロジェクトは年々減少していますが、今度はインフラ投資が官民ともに増加しており、民間だけでみてもペルーの国内投資は2017年にプラスに転じると予測されています。
>ペルー経済全般でみても、消費の減退等も特に近年みられず、消費者信頼感指数は2014年3月を谷として改善トレンドが続いています。
>また、中国経済の成長が鈍化した際のオーストラリア等への影響が大きいために日本では中国経済の減速≒資源国の減速と言われがちですが、ペルー経済の中国経済との感応度はとても低くなっています。

まず、ペルーと言えば資源ということになるのかもしれませんが、今回、資源については詳しく取り上げません。ペルーは今後期待できる成長株のようですから、TPPで投資環境が整うことは、双方大きな意味があると思います。

ペルー共和国(Republic of Peru)基礎データ(外務省)

>クチンスキー大統領は,公約で特に太平洋同盟の強化を重視する他,中国,EUとの関係強化,APEC,TPPの重要性,OECD加盟を目指すことを強調。また,CELAC,アンデス共同体を通じたペルーの国際場裏におけるプレゼンスを高めることについても言及しており,経済外交を主軸とする外交を展開している。

>2016年7月に発足したクチンスキー政権は,歴代政権の自由経済政策を踏襲する他,一般売上税減税等の税制改革を通じ,企業活動のフォーマル化や正規納税者の拡大を図り,より一層の財政健全化に努めるとともに,同時に行政手続きの歓送化等を実施することで更なる経済成長を目指している。この中で,空港・港湾,道路,鉄道等のインフラ整備や上下水道整備などに力を入れることとしている。

>考古学,人類学等を中心に日本のアンデス社会研究の中心的対象国となっており文化交流も活発。また,約10万人の日系人の存在等もあり,日本語学習熱は高く,毎年日本文化週間が開催されている。

現在チリは準加盟国ですが、アンデス共同体(他にコロンビア・エクアドル・ボリビア)の本部はペルーの首都リマにあります。ペルーの観光と言えば、ナスカの地上絵も有名ですが、マチュピチュ・クスコといったインカ帝国の遺産が筆頭に挙げられるでしょう。クチンスキー政権のインフラ整備重視もインカ帝国の交通網をあるいは意識しているかもしれません(インカ帝国を支えた5万kmの道路網「カパック・ニャン」(建設コンサルタンツ協会))。TPPに政府調達規定はありますから、日本のゼネコンにもあるいはチャンスもあるのかもしれませんね。「従来わが国建設業の弱みと言われてきたコスト競争力、マネージメント能力についても、近年はかなり向上させてきており、欧州企業はもとより、中国、韓国などアジア企業と価格、技術で十分に競争できるようになっている。」(わが国建設業の海外市場戦略(概要版)(国土交通省)とのことです。日本もインフラ投資には力を入れてきましたし、相性は良さそうです。また、日本語学習熱が高いということですから、日本にとってはビジネスチャンスも比較的大きい国かもしれません。


ペルー・マチュピチュの楽しみ方| 近畿日本ツーリスト

さて、今回の記事でもっとも着目したいのはペルーの遺伝子資源です。中でもアンデス原産作物が世界に与えた影響は大きく、今でもペルーの食材を活かしたペルー料理は魅力があるようですね(参考:FOOD アンデス原産作物 JETRO)。インカ帝国の主食はジャガイモでペルーには1000種類以上のジャガイモがあるようですが、トマトもペルーあたりが原産で、トウガラシも独自の種類があって、トウモロコシやカモチャ、豆、サツマイモ、アボガドも古くから栽培されていたようです。原産地は中米メキシコのものも含まれますが、いずれにせよアンデスに根付いていたのは間違いないようです。ペルーの農作物で生産量が多いのはアスパラガスやアボガド、バナナ、アーティチョーク、コーヒー、カカオ、トウモロコシのようですが、アボガドやトウモロコシは兎も角、他は特にアンデス原産ではないようですね。別に原産地でなくてはならないという決まりはありませんが、遺伝子資源の豊富さという優位性を含め、アンデスのブランド化の可能性を感じます。経産省で検討された地域ブランド化の定義は①「地域の事業者が協力して、事業者間で統一したブランドを用いて、当該地域と何らかの(自然的、歴史的、風土的、文化的、社会的等)関連性を有する特定の商品の生産又は役務の提供を行う取組み」②「地域発の商品・サービスのブランド化と地域イメージのブランド化を結びつけ、好循環を生み出し、地域外の資金・人材を呼び込むという持続的な地域経済の活性化を図ること」だそうです(参考:農林水産物・地域食品の地域ブランドの現状と課題 農林水産省知的財産戦略チーム)。メキシコではテキーラ人気で原料不足が深刻のようですから(参考:アングル:メキシコでテキーラ原料不足が深刻化、人気が裏目に ロイター 2018年2月1日 / 15:28)、潜在的可能性はあるのではないでしょうか?これは現地の努力次第ですが、ペルーも鉱物資源以外の収入源を育てていくことが重要だと思いますね。

日本でも農業生物資源ジーンバンクが、農業分野に関わる遺伝資源について探索収集から特性評価、保存、配布および情報公開までを行う事業を行っているようですし(農業生産物資源ジーンバンク)、1993年の生物多様性条約発効以降は、その遺伝子資源を有する国家の主権的権利が及ぶものであると認識されるようになっているようです(日本の遺伝子資源の保存とその課題 三菱UFJリサーチ&コンサルティング)。それほど儲かるものではないかもしれませんが、アンデスの遺伝子資源の収集は学問的には重要であるような気もしますね。

ペルーの輸出上位に繊維があるようですが、高級コットンであるピマコットンがペルー原産であるようです(ピマコットンについて Raffa)。また、日本ではピマコットンを『ペルヴィアンピマコットン』として伊藤忠商事が国内でブランディングしたようです(Project of 高級原料ブランド『ぺルヴィアンピマ』)。アルパカも重要なようですね(ペルーアルパカ - Perú Moda)。「アルパカ繊維には様々な色があり、強く柔軟性に富み、肌触りが良く保温性や耐久性にも優れている。アルパカ繊維の「輸出先上位3か国は米国(37.4%)、ドイツ(13.8%)、フランス。4位以降のチリ、日本、英国、カナダ、オーストラリア、スイス、イタリア、スペイン、ベルギー、アイルランドを始め、アルパカ衣料は世界45か国に輸出されている。」とのことです(ペルーのアルパカ衣料輸出先 日本は5位 keikoharada.com)。ここでも独自の遺伝子資源がブランドに結びついているようです。

最後に海産物資源ですが、「沖合は栄養塩を多く含むフンボルト海流により世界有数の漁場を形成している」(ペルーの農林水産業概況:農林水産省)とのこと。あるいは水産資源のブランド化も可能であるかも?

最初に挙げたペルー中央準備銀行のグラフでもagriculture and livestockの輸出は伸びていますね。そういう訳でペルーとの貿易、ペルーへの投資はアンデスブランドに着目してはどうかと思った次第です。これはペルーをはじめとしたアンデス諸国の優位性ですが、TPPを期にまた古代アンデス文明の中心地であった歴史を活かしていち早くペルーがブランドを育ててしまうかもしれません。

え、ペルーのブランドを育ててどうするのって?魅力的な投資先というのもありますが、儲けた金で日本の自動車でも買ってくれんかね?と思っています。その自動車はあるいはメキシコでつくられたものかもしれませんが。結局のところ儲かってない国がものを買うことはありません。TPPで共に発展しようということですね。


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