ロイター(2018年2月3日 / 08:26)の「焦点:米国の橋は本当に危険か、インフラ「劣化説」を検証」では米連邦道路管理局(FHWA)の2012年の橋梁改修支出は164億ドルに達しており、道路や橋梁の保守・拡充のためには、年間約370億ドルの予算を追加すれば十分だという指摘を紹介していますが(予算を3倍にしろと言っているように見えますが)、日本では2013年に国土交通省が2013年度は年間で3.6兆円必要で、これが10年後には最大で5.1兆円と今年度比4割増となる見込みと指摘しています(インフラ更新費、10年後は最大5.1兆円必要 国交省推計 日経新聞 2013/12/25)。国土の広さ・人口を考えると、日本の方がコスト高の印象があります。これは日本では高度経済成長期などに集中してつくったインフラが老朽化しているという事情があるかもしれませんし、人口密度が高いため山間部に多くのインフラを造ったからかもしれません。
労務費は「世界の建設市場における労務費を比べてみる!-佐藤隆良の海外建設市場シリーズ(2)-労務費編」(アーキブック)を参照すると、先進国としては安い部類になります。アメリカは結構高いですね。
「建設業の人手不足」の理由と打破するための3つの改善ポイントを解説(BOWGL 2018.01.23)を参照しましたが、やはり建設業界の人手不足は深刻なようです(建設業界人材動向レポート(平成29年8月)を見ても有効求人倍率が高い水準にあることは確認できます(建設転職ナビ))。職人の労務費は上昇を続けているようです。次の図はBOWGLの記事にあった総務省労働力調査より作成した図です。
建設業の労働者がドンドン減っていることが分かります。全産業の労働者数の推移と比較しても、これは明らかに過剰な減り方です。ニュースを見ている日本人ならこの理由はピンときます。筆者もそうですが、やはり要らないインフラのイメージが強過ぎて、建設が斜陽だと思い込んでいたところがあると思います。労働者が不足したら、給与の上昇は必至です。これは建設コストの上昇を招きます。これから日本の建設業の労務費は上昇に向かうでしょうが(一般のイメージと異なり、今後有望だと思われます)、建設業者の総数を減らさないようにしておけば、労務費の上昇は抑えられましたし、必要なインフラ更新もドンドン進んだのにと思わざるを得ません。(潜在的な)人手不足の業界から人手不足の業界に人が流れたならまだ分かりますが、他業種の有効求人倍率を見るにつけ、大して人手不足でないところに就職活動を頑張って流れ込んで、他業種の人余りを促進しているのではないかと懸念されます。キツイ仕事に若い人がいかない傾向もありますし、団塊世代の大量離職者の問題もあります。高度経済成長の時期のインフラ更新の仕事がヤケに多そうなことを考えても、日本の建設業界の人減らしは大失敗だったのかもしれません。そうだとすると(筆者も含めて)日本の判断に疑問符がつくところです。必要なのは、需要の無いインフラ投資を切ることだけでなく、需要のあるインフラ投資を見据えて人を残しておくことだったでしょう。どうして切られる側の建設業界が声を上げなかったか不思議ですが、バッシングみたいな空気の中では何も言えなかったのかもしれませんね。バッシングする側は如何に間違っていても反省することはありません。
アメリカが何でも正義と思いませんが、やはり若者がやりたがらないキツイ職業の給与が高いのがアメリカということであれば、この辺はアメリカのやり方が正解だと考えざるを得ません。さすがに経済No1の国です。人生金が全てではありませんが、金が重要であることは論を待ちません。需要があって供給が少ない仕事は給与を上げて当たり前、需要を掘り起こすのが経営者であり、それをサポートするのが政府であり規制緩和ではないでしょうか?そういう経済における当たり前ができてないのが社会主義的とも言われるニッポンで、経済における当たり前ができているのがアメリカという国なのかもしれません。
建設が集中したら更新も集中します。人口が多い世代が退職したら一気に穴が開きます。需要の正確な予測は誰でも難しいかもしれませんが、基本的なことがプロに分からないとは思いません。今では日本の問題はある程度予測できているかもしれません。ですが、こうなる前に徐々に対応できていれば、問題が少なかったはずです。日本が夏休みに宿題を追い込まれて最終日に一気に片付ける子供みたいになっています。
建設業を取り巻く情勢・変化 参考資料(国土交通省 平成28年3月2日)
最後にロイター記事で言及されていた水道管破裂問題ですが、検索してみつけた日本の記事に触れてこの記事を終わります。
日本列島を襲う「水道管破裂」 老朽化の波が押し寄せる(Yahooニュース 2016/5/2(月) 20:31)
>統計によれば、「管路」と呼ばれる基幹の水道管だけで年間に約2万5000もの事故が起きている。
>厚生労働省や日本水道協会のデータによると、日本各地に張り巡らされた水道管は延べ約66万キロに達する。地球を16.5周できるほどの長さだ。そのうちの12%にあたる延べ約8万キロが耐用年数を超えているという。
>なぜ水道管の更新が進まないのか。水道事業に詳しい東京大学大学院工学系研究科の滝沢智教授(都市工学)は、ずばり「財源」だと答えた。
>「水道は公営企業という形を採っています。財源は、市民が払っている水道料金。残念ながら、そこに水道管を更新する費用が十分に計上されてこなかった。単年度では収支バランスが取れていても、設備資産の更新費用が含まれていないのです」
別に難しいことではないですね。分かっている人には分かっている当たり前のことが何故か野放しになって危機が到来しています。問題を聞きたくない上司が多いのか知りませんが、逐一言動をチェックされて指導されている訳でもないんでしょうし、下のものの耳に痛い話もたまには聞かないとえらいことになりますね。その下のものも上になったら同じことをするんでしょうが。
労務費は「世界の建設市場における労務費を比べてみる!-佐藤隆良の海外建設市場シリーズ(2)-労務費編」(アーキブック)を参照すると、先進国としては安い部類になります。アメリカは結構高いですね。
「建設業の人手不足」の理由と打破するための3つの改善ポイントを解説(BOWGL 2018.01.23)を参照しましたが、やはり建設業界の人手不足は深刻なようです(建設業界人材動向レポート(平成29年8月)を見ても有効求人倍率が高い水準にあることは確認できます(建設転職ナビ))。職人の労務費は上昇を続けているようです。次の図はBOWGLの記事にあった総務省労働力調査より作成した図です。
建設業の労働者がドンドン減っていることが分かります。全産業の労働者数の推移と比較しても、これは明らかに過剰な減り方です。ニュースを見ている日本人ならこの理由はピンときます。筆者もそうですが、やはり要らないインフラのイメージが強過ぎて、建設が斜陽だと思い込んでいたところがあると思います。労働者が不足したら、給与の上昇は必至です。これは建設コストの上昇を招きます。これから日本の建設業の労務費は上昇に向かうでしょうが(一般のイメージと異なり、今後有望だと思われます)、建設業者の総数を減らさないようにしておけば、労務費の上昇は抑えられましたし、必要なインフラ更新もドンドン進んだのにと思わざるを得ません。(潜在的な)人手不足の業界から人手不足の業界に人が流れたならまだ分かりますが、他業種の有効求人倍率を見るにつけ、大して人手不足でないところに就職活動を頑張って流れ込んで、他業種の人余りを促進しているのではないかと懸念されます。キツイ仕事に若い人がいかない傾向もありますし、団塊世代の大量離職者の問題もあります。高度経済成長の時期のインフラ更新の仕事がヤケに多そうなことを考えても、日本の建設業界の人減らしは大失敗だったのかもしれません。そうだとすると(筆者も含めて)日本の判断に疑問符がつくところです。必要なのは、需要の無いインフラ投資を切ることだけでなく、需要のあるインフラ投資を見据えて人を残しておくことだったでしょう。どうして切られる側の建設業界が声を上げなかったか不思議ですが、バッシングみたいな空気の中では何も言えなかったのかもしれませんね。バッシングする側は如何に間違っていても反省することはありません。
アメリカが何でも正義と思いませんが、やはり若者がやりたがらないキツイ職業の給与が高いのがアメリカということであれば、この辺はアメリカのやり方が正解だと考えざるを得ません。さすがに経済No1の国です。人生金が全てではありませんが、金が重要であることは論を待ちません。需要があって供給が少ない仕事は給与を上げて当たり前、需要を掘り起こすのが経営者であり、それをサポートするのが政府であり規制緩和ではないでしょうか?そういう経済における当たり前ができてないのが社会主義的とも言われるニッポンで、経済における当たり前ができているのがアメリカという国なのかもしれません。
建設が集中したら更新も集中します。人口が多い世代が退職したら一気に穴が開きます。需要の正確な予測は誰でも難しいかもしれませんが、基本的なことがプロに分からないとは思いません。今では日本の問題はある程度予測できているかもしれません。ですが、こうなる前に徐々に対応できていれば、問題が少なかったはずです。日本が夏休みに宿題を追い込まれて最終日に一気に片付ける子供みたいになっています。
建設業を取り巻く情勢・変化 参考資料(国土交通省 平成28年3月2日)
最後にロイター記事で言及されていた水道管破裂問題ですが、検索してみつけた日本の記事に触れてこの記事を終わります。
日本列島を襲う「水道管破裂」 老朽化の波が押し寄せる(Yahooニュース 2016/5/2(月) 20:31)
>統計によれば、「管路」と呼ばれる基幹の水道管だけで年間に約2万5000もの事故が起きている。
>厚生労働省や日本水道協会のデータによると、日本各地に張り巡らされた水道管は延べ約66万キロに達する。地球を16.5周できるほどの長さだ。そのうちの12%にあたる延べ約8万キロが耐用年数を超えているという。
>なぜ水道管の更新が進まないのか。水道事業に詳しい東京大学大学院工学系研究科の滝沢智教授(都市工学)は、ずばり「財源」だと答えた。
>「水道は公営企業という形を採っています。財源は、市民が払っている水道料金。残念ながら、そこに水道管を更新する費用が十分に計上されてこなかった。単年度では収支バランスが取れていても、設備資産の更新費用が含まれていないのです」
別に難しいことではないですね。分かっている人には分かっている当たり前のことが何故か野放しになって危機が到来しています。問題を聞きたくない上司が多いのか知りませんが、逐一言動をチェックされて指導されている訳でもないんでしょうし、下のものの耳に痛い話もたまには聞かないとえらいことになりますね。その下のものも上になったら同じことをするんでしょうが。