トラウマとフルインクル(その77)
《わたしが、「いる」ということ》
わたしが、わたしの体の中に「いる」ということ。
それは、生きていれば当たり前、ではない。らしい。
虐待の被害や事件事故のトラウマに苦しむ人たちが教えてくれること。
そのことを思い出すだけでパニックになり、自分で自分の感情に振り回され抑えられなくなるとき、「わたし」は自分の体の中に安心して「いる」ことができない。
わたしが、わたしの体の中に「いる」ということ。
それは、わたしが生きていれば、いつも体の中にいられる、という訳ではない。
体が「呼吸」さえしていれば、いつも体の中にいられる、という訳ではない。
◇
【私たちの人生を台無しにする参事は戦争だけではない。
アメリカ人の大多数が人生のどこかで暴力的な犯罪に遭遇する…。
アメリカではレイプの被害者の女性は1200万人にのぼる…。
レイプの過半数は、15歳未満の女子に対して起こる。
アメリカでは毎年約300万人の子供が虐待やネグレクトの被害者になる。
そのうち100万人は深刻で疑いの余地がないので、地元の児童保護サービスあるいは法廷が行動を起こさざるを得ない。
言い換えると、国外の交戦地帯で軍務に就く兵士1人につき、10人の子供が自宅で危険にさらされている計算になる。
これはとりわけ悲劇的だ。恐怖と苦痛の源泉が敵の戦闘員ではなく自分の養育者であるときには、未熟な子供は回復するのが非常に難しいからだ。】(042)
◇
トラウマを抱えた人生では、「見える能力、聞こえる能力、歩ける能力、言葉が話せる能力、勉強ができる能力」は、「安心して生きられる人生」の基本の能力ではない。
それらの能力が十分に備えられていても、その能力を使う「わたし」という「主体感覚」がなければ、「わたし」が生きていくことが難しい。
(№76につづく)
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