トラウマとフルインクル(その74)
《ノームのトランポリン》
5才のノームは、教室の窓から、目の前にある世界貿易センターに飛行機が突っ込むのを目撃した。そして少し前に送ってきた父親と再会し、瓦礫と灰と煙の中を逃げのびた。
翌日ノームは絵を描いた。
そこには、ビルに激突する飛行機、巨大な火炎、消防士たち、窓から飛び降りる人々が描かれていた。
そして下の方に小さな黒い丸があった。
それが何かノームに尋ねると、「トランポリン」と答えた。
なぜ、そんなところにトランポリンがあるのか――?
ノームは言った。
「今度、人が飛び降りなくちゃならなくなったとき、安全なように」
5才の男の子が「いつか助けを必要とする誰か」のためにトランポリンを置くこと。
それは自分自身を助けるために、自分ができることでもあった。
誰かに手をかすことで、自分と世界とのつながりを守ろうとした。
生きるための希望をなくさないために、そこにトランポリンを置いた。
《贈りたいもの》
子どもへの支援・援助を考えるとき、大切なのは大人が予め助け方・守り方を決めてあげることではない。
子どもに贈りたい「自信と安心」は、閉じられた場所で守ってあげることではなく、開かれた出会いの場で、子ども自身が、自分と誰かのためにトランポリンを置く気持ちを信じることだ。
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