ナオがベッドに入ると、お母さんが隣に座った。
「ナオ、真ちゃんのことだけどね…」
「真ちゃん?」
「うん、ナオは真ちゃんがどこに行ってるか知ってる?」
「保育園…。おばちゃんが言ってた」
2年生になって最初に日にナオが聞いた。
「おばちゃん、真ちゃんは?」
「保育園よ」
「えー、また遊べると思ってたのにー」
おばちゃんは笑いながら言った。
「ありがとう。いつもナオちゃんが遊んでくれて助かったわ」
あのとき、おばちゃんは、「もう2歳になるから、保育園にいくことになったのよ」って話してくれた。
ナオの手を握りながら、お母さんが話を続ける。
「ナオは真ちゃんのこと、大好きだったでしょ。いつも学校から帰ると、今日しんちゃんがね…しんちゃんがねって話してくれたわね。」
「うん」
「この前、真ちゃんの保育園でお誕生会があったの。お友だちがお母さんの膝に抱っこされてるのをみて、真ちゃんが先生に言ったの。
『ママはお兄ちゃんのがっこうにいるんだ。だからここにはこないんだよ』
翔ちゃんママはね、『お仕事があるから」って言ってたのよ。
でも、真ちゃんは分かってたのね。それでね、保育園の先生に、『来月のお誕生会には必ず、来てあげてくださいね』って言われたの。
でも、翔ちゃんママは学校があるでしょ。それで、ずっと悩んでたの…」
ナオはだまって聞いている。
「翔ちゃんママは、校長先生にもお願いしたんだけどだめだったみたい。だからやっぱりお誕生会には行けないかもって思ってたの。そんなとき、朝、真ちゃんが保育園に行きたくないっていうから、『ママはお仕事だからね』って話したんだって。そうしたらねえ、真ちゃんがね、『ママはしんちゃん、いらないんだね』って言ったの。
『しんちゃんもがっこういきたいっていうから、ママ怒って泣くんだよね』って。
まだ2歳なのに…。なんでも分かってるのねって、翔ちゃんママ、泣いてた…」
「真ちゃん…」
ナオは、赤ちゃんだった真ちゃんの顔を思い浮かべた。
「ナオ、お母さんも学校のことは何にも聞いてないのよ。でも翔ちゃんママが学校に行かなくなったって聞いて、すぐに真ちゃんのこと思い出したの」
「お母さん…」
ナオがお母さんの手をにぎる。
お母さんが握り返しながらいう。
「翔ちゃんママは、翔ちゃんと真ちゃんと、二人のママなのよね」
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