「お母さん、どうして翔ちゃんのおばちゃん、学校に来ないの?」
「えっ、翔ちゃんのママ?」
ナオが思いきって話しだす。
「おばちゃんがこないから、翔ちゃんが給食、食べられないって。先生が。だから、良太くんもコージくんも、私も分からないの」
お母さんが首をかしげる。
「ごめん、ナオ。ゆっくり話してね。良太くんが叱られたのは、翔ちゃんのせいなの?」
「うん…」
ナオも首をかしげる。
「そうかも…。またおばちゃんが来てくれれば、翔ちゃんも一緒に食べれるのに…」
お母さんがゆっくり何度もうなずく。
「そう…。翔ちゃんはいま、どこで給食を食べてるの?」
「職員室…」ナオの声がまた小さくなる。
「そう」
「先生が、職員室で食べてるから大丈夫ですって、分かりましたか?って…。でもみんな黙ってたら、分からない人は手をあげなさいっていって、それで…良太くんとコージくんが手をあげたの。私もあげたかったのに……」
そういって、ナオは泣いた。
「そう。がんばったのね。いいのよ。ナオはがんばったんだから。」
お母さんがそういうと、ナオはまっすぐにお母さんの顔をみた。
「どうしておばちゃんは学校にこないの? ずっと一緒だったのに。お母さん、知ってるんでしょ。」
お母さんが話しかけた時、健太が帰ってきた。
「ただいまー。腹へったぁ」
「おかえりー」
お母さんが大きな声で返事をする。
「ごはん、まだーー?」
健太が台所に顔を出す。
「いま作るから、ちょっと待っててね」
「もうだめだぁー。腹へって死ぬー」
健太の声が家中にひびく。
お母さんがナオに小さな声で言う。
「またあとで話そうね」
ナオは黙ってうなずいて、自分の部屋に戻る。
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