ワニなつノート

わたしのものがたりと、あなたのものがたり




わたしのものがたりと、あなたのものがたり



わたしはあなたじゃない。
あなたは、わたしじゃない。
わたしはあなたのことがわからない。
あなたが、何を感じ、何を思い、どんな人生の物語を生きていくのかをわたしはしらない。
わたしにはわからないことがたくさんある。

でも、わたしとあなたは同じだと感じている。
わたしの命があなたにつながって、わたしの物語があなたにつづいている。
それは確かなこと。
わたしがここにいて、あなたがここにいる。
あなたがここにいて、わたしがここにいる。

あなたが今日も言葉を使わないこと、
明日も、あさっても、もしかしたら30年後もあなたは言葉を話さずにあなたの人生を紡いでいくのかもしれない。
でも、そのころにはわたしも言葉を忘れているかもしれない。
でも、きっとそのときにも、わたしとあなたの物語はすぐ隣で肩を寄せ合っている。
そのとき、あなたは、ことば以外の、あなたのやり方で、わたしに話してくれるでしょう。
わたしはそのとき、確かに、あなたの物語を聞くでしょう。
あなたが、どんなあかちゃんだったか。
あなたが大好きだった保育園のお友だちの名前も顔も声も、あなたたちが呼び合う声が、あなたの物語のなかから、わたしに聞こえることでしょう。

分からない授業はかわいそう、と言われ続けた学校で、あなたが学んだのは、あなたの人生だった。
授業という生活のなかで、授業の中身がよく分かる子どもや、そうでない子どもたちの顔を見ながら、あなたが見たもの聞いたもの、感じたもののすべてが、あなたの人生を褪せることなく彩り続けることを、わたしは知っている。

それは、わたしの人生と同じ彩り方。
わたしの命と同じ行き方。
あなたの人生をわたしは信じてる。
あなたが出会う人たちを、あなたの物語の登場人物のすべてを、わたしは信じてる。
物語にはときに悪役もいる。
あなたが生きるあなたの人生を、わたしはわたしの人生と同じように信じてる。

1歳のあなたを遅れているといい、
3歳のあなたに何ができない、6歳のあなたにこれができないと。
あなたが生まれてから、あなたに足りないものを数える人ばかりが、わたしに話しかけるようになったけれど、どの人もただの脇役。
あなたの物語にとっても、わたしの物語にとっても。

あなたはいつもここにいる。
1歳のあなたは、1歳の姿で、ここにいた。
3歳のあなたは、3歳の姿で、ここにいた。
6歳のあなたは、6歳の姿で、ここにいた。
わたしの人生で、あなたがここにいることより確かなものなどなかった。
これから先も、あなたはあなたの姿で、あなたの人生を生きていく。
だから、わたしはあなたの6歳の人生をまるごと信じている。
これからの一年一年、あなたの10歳、15歳、20歳、40歳、90歳のあなたの人生をわたしは祝福する。
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