≪たんじょうび≫
去年の5月、ゆみの誕生日。お母さんはまだ病院にいた。
お父さんとゆきと三人でいちごのケーキを買った。
お父さんのオムライスはおいしかった。
ゆきは「お母さんの方がおいしいね」って言った。
ゆみは、小さい声で「しー」と言ってウインクした。
ゆきも両目でウインクして「ちー」といった。
ゆみが笑うと、ゆきも笑った。
「おいしいだろう」と言いながら、お父さんも笑った。
冷蔵庫からケーキを出してろうそくを7本立てた。
お父さんが火をつけてくれて、ゆみがふうーっと吹き消す。
それから、ゆみはゆきに、一本だけ火をつけてあげた。
ゆきも火を吹き消して、うれしそうだった。
ケーキを食べているときに電話がなった。
「ゆみ、ゆき、ごめん、お父さん、ちょっと会社に行ってこなきゃ。すぐに帰るから、二人でお留守番できるかな。」
「できるーー」
ゆきがクリームのついた口でいう。
ゆみもうなずく。
「ゆみ、ゆきのことお願いな。すぐに帰るから。」
「うん。だいじょうぶ」
さっきの電話は、きっと病院からだと、ゆみは思う。
ゆきの好きなトトロのビデオをつけてあげると、ゆきはいつものように途中で眠ってしまった。
ビデオを消して、それから、ゆみは明日の時間割をそろえる。
連絡帳のうらの電話番号が目に入る。
「翔ちゃんのだ…」
昨日、翔ちゃんの代わりに連絡帳を書いてあげたら、おばちゃんが「こんど家に遊びにきてね」と言って書いてくれた。番号を押すと、おばちゃんの声が聞こえた。
涙がこぼれた。
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