新シリーズ。勝手に翻訳です(>_<)
昨日から、向谷知生良さんの『技法以前』を読み始めています。
まだ「はじめに」だけです。
以前は、本を読み終わってから、
自分なりにちゃんと理解してから、
言葉にしようとしてきました。
でも、人生の残り時間を考えるようになって、
それは無理、と思うようになりました。
だから、自分に都合よく翻訳することを、
勝手にやることにしました。
ちなみに、「原文」は、下に貼り付けます。
□ □ □
どの子も地域の普通学級へ。
0点でも高校へ。
そのなかで問われたのは、
「分からない授業はかわいそう」ということでした。
「みんなと一緒」への共感が広まる一方で、
「何もしなくていいのか」という言い方がたえずあります。
しかし、ただ「普通学級に通う」日常には、
数え切れない日常の差別がついてきます。
ささいな差別から露骨な差別まで、
いつも身構えている自分を意識することさえ忘れて暮らす
親の思いの上に、子どもの「ふつうの子どもの生活」が
かろうじて支えられています。
「なんとかついていけそうだから」、
「普通でやれますよと、先生も言ってくれたから」といった、
覚悟の乏しいままに普通を選んだ場合、
学年があがるにつれて、特別支援に「移る」可能性は高まります。
特別支援学校の教室が足りない、という現実はそういう理由です。
だから、「0点でも高校へ」に至る道には、
それまでの9年あまりの年月の中で、
実に手間暇かけた関係づくりの結果として
手に入れることのできる覚悟があるのです。
木村明則さんの「私が育てるのではない。私は見守るだけ」
という眼差しの背後には、鋭い観察力と、
「なにをしなければいけないか」ではなく
「なにをしてはいけないか」という発想があります。
私たちも、親や先生や介助者が「何をしてはいけないか」
を考えながら日々を重ねてきました。
木村さんがリンゴと土の力を信じるように、
私たちも「障害のあるふつうの子ども」と
「普通学級という場」のもつ可能性を信じてきました。
あらゆる問題解消の糸口は、
「問題自身」と「問題が起きている場」のなかに備えられています。
それを信じることができないままに、
子どもの「障害」だけに理由をみつけ、
問題解決のために子どもをほかに移してしまうから、
その後に多くの行き詰まりが生じるのだが、
そのときには、そうしたものが見えなくなってしまい、
うまくいかない失敗はすべて、
子どもの「障害」のせいですませられるのです。
「同じ子どもとして人間をあつかってくれる友達や
先生に出会う中で手に入れる仲間としての実感」や
「みんな同じ高校生になれた実感」こそが、
子どもたちにとって社会人としての自覚を
促す条件としてかけがえがないのだ。
その大切な出会いを生み出すものは、
おそらく「教育」や「介助」以前にある何かであり、
それが一体どんなものなのか、
本書を通して探っていきたい。
□ □ □
『技法以前』 向谷地生良 医学書院
《はじめに》
・・そのなかでときおり問われたのが、
「私(向谷地)は何をしたか」ということだった。
べてるから発信された「非援助論」への共感が広まる一方で、
非援助とは「何もしないこと」という
一面的な理解がなされるようにもなってきた。
しかし、「非援助の援助」とは、ゆっくりであるが
実に手間暇かけた関係づくりのなかで見いだされるものなのである。
木村明則さんの、「私が育てるのではない。私は見守るだけ」
という眼差しの背後には、鋭い観察力と、
「なにをしなければいけないか」ではなく
「なにをしてはいけないか」という発想がある。
私も、「何をしてはいけないか」を考えながら
浦河で日々を重ねてきた。
木村さんがリンゴと土の力を信じるように、
私も「当事者」と「場」のもつ可能性を信じているからである。
あらゆる問題解消の糸口は、
「問題自身」と「問題が起きている場」のなかに備えられている。
それを信じることができないままに、
問題解決の切り口をほかに探そうとするところに
行き詰まりが生じるのである。
多くの当事者は
「人間として自分にぶつかってきてくれた感覚」や
「同じ人間だと実感できる現実感」こそ、
回復を促す条件として口にする。
その大切な出会いを生み出すものは、
おそらく「技法以前」にある何かである。
それが一体どんな姿をしているのか、
本書を通して探っていきたい。
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