お互いの気持ちを話すやり方が「言葉」しかないというのは、大人たちの思いこみに過ぎません。
子どもたちは、もっとよくものがわかっていることを、わたしは確信できるようになりました。
この社会の子どもたちは、「言葉」を話せる人間だけが偉いとことさら言い聞かされて育ちます。
「文字」をもつ人間は地球上の生き物のなかで特別な存在だと教えこまれます。
ちゃんとしゃべらないと、誰も分かってくれない。
ちゃんと話せないのは、「赤ちゃん」と同じと言われ、「赤ちゃん」であることは恥ずかしいことのように思わされます。
でも、ちょっと前まで赤ちゃんだった子どもたちは知っています。
ちゃんとしゃべらなくても、ことばは通じるということを。
あかちゃんだった自分の気持ちをわかってもらったことを、幼い子どもたちはまだちゃんと覚えています。
言葉をしゃべらないときにも、思いがいっぱい言葉にならないときにも、抱きしめてもらったり、背中をとんとんしてもらって、ちゃんと気持ちをわかってもらったことのある子どもたちは、賢いままでいられます。
子どもたちはちゃんと知っているのです。
自分の人生の経験のすべてをかけて。
いつも一緒にいることで、自分がここにいることを忘れないでいてくれる人がいる安心を、手に入れたばかりの子どもたちはよく知っています。
言葉を知らなかったときも、言いたい言葉がみつからず泣いているだけだったときも。
それに、夢の中の不安を、言葉にする方法を知らなかったときにも。
言葉にはならない思いを伝える方法があることを、子どもたちは知っています。
言葉とはべつの、「いること」「息をしていること」「いっしょにいること」「おなじなかまであること」で、話すやり方や、理解しあう方法があることを、子どもたちは知っています。
これは本当のことです。
だから、一年生のこどもたちや、保育園の子どもたちは、障害のある子どもたちの表現を、大人よりもずっとよく理解しあえることがあるのは、決して不思議なことではありません。
なかでも、言葉以外のコミュニケーションや人の気持ちを感じることが、人並みはずれてうまい子どもがいます。
きっとその子どもたちは、言葉を話さないことや、うまくしゃべれないこと、箸をうまく使えないことや、おもらしをしてしまうことを、「赤ちゃん」のようだなどと言われたことがないのでしょう。
あかちゃんであることを本当に大事にされた子どもは、「しゃべれないこと」や「一人でできないこと」「どうして泣いているのかもつたえられないこと」も、そのまま抱きしめられて、一緒にいる安心を感じることができたのでしょう。
誰もが大切にされる社会のあり方や学校のあり方を本当に知りたいなら、その子どもたちの行動や言葉に耳を傾ければいいのです。
私がこのブログに書いているのは、その子どもたちの行き交う姿と、私が分かる言葉に翻訳してもらったことばに教えられたことばかりです。
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