ひとまず幼稚園をやめて、しばらくたったある夜、
ニィが先生に手紙を書きたいと言い出した。
手元にあったハガキを3枚あげた。
ニィは真剣な顔で、お世話になりましたという感じの
文章を自分で考えて書き始めた。
1枚目、2枚目のハガキはよかった。
たどたどしい文字とセーラームーンのイラストのかわいい手紙だった。
そして3枚目のハガキ。
おげんきですか。
ニィもげんきです。
いままでもありがとう。
こどもにぺんはしないで
くださいニィは
かわいそおだとお
もいます。
ではさよおなら
ニィより
せーらーむーん
これを読んで、一瞬、固まった。
ニィが何度か話してくれたことを思い出した。
男の子がピアノにさわったりするとペンされるんだよ、
と何度か聞いたことがあった。
5月に、その件で、別の先生に私が手紙を書いたこともあった。
ただ、園を辞めた直後に、このハガキを出すと、
これが原因で辞めたと思われるのも面倒だな、という思いが頭をよぎった。
その時、ニィが言った。
「これもらうと、せんせい、いやなきもちがするかなー」
その言葉を聞いて、迷いは消えた。
このハガキはそのまま出そうと思った。
クラスの男の子がたたかれるとき、
ニィはとても嫌な思いをしていたのだ。
「かわいそお」と心を痛めていたのだ。
3才・4才の子どもの、その気持ちを伝えるだけのこと。
「いやなきもちがするかなー」と、
4才の子どもに気を遣わせることではないと思った。
それを伝える相手は「大人」なのだから。
ちょうどその頃、私は定時制高校で、体罰についての授業をしていたので、
娘の手紙のことを話してみた。
ハガキのコピーを配って、生徒に意見を聞いてみた。
ふだん、私の授業を聞かない生徒も感想を書いてきた。
多くの生徒が、手紙はそのまま出した方がいいという意見だった。
「手紙を受け取れば、子どもの気持ちが少しはわかると思う」
「子どもだってたたかれるのはイヤだから」
「子どもの視点でものを見た場合を知らせるため」
「この手紙をもらえば、少しは気持ちがゆれると思う」
そうした言葉の裏に、「子どもの気持ち」を「分かってもらえなかった」
という思いがあふれているのを感じた。
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