≪「選ばない」ということは、ありのままを「受けとめる」ということ≫
子どもは、何も選ばずに生まれてきます。
何一つ選ばないということは、
すべてを選ばず受けとめる度量をもって生まれ来るということでした。
私が忘れていたのは、このことです。
この地球のすべての命と同様に、子どもの命もまた、
寿命をまっとうできる保証があって生まれくるのではありません。
何一つ選ばず産み落とされた環境が、
運悪くその子の無条件の受けとめを、軽く受け流してしまえば、
その命は終わってしまいます。
命の世界では少しも珍しいことではありません。
でも、命のつながりのなかでは、それを終わりとは言わないのでしょう。
命の連鎖そのものが命なのですから。
子どもは、何も選ばずに生まれてきます。
すべての生き物の中でも、とびぬけて無力な状態で生まれてきます。
こんなにも無力な状態で生まれることに、抵抗できず、
受身で、この世に産み落とされるのです。
でも、人間であることは、
その無力さという力をもって、生まれてきたとも言えるのです。
できることと言えば、息すること。泣くこと。
飲むこと。出すこと。笑うこと。そして感じること。
そして、それさえ危うい子どももいます。
そんな状態だから、子どもはすべてのあるがままを、
いったん受けとめる以外に、そこから始まる道はないのです。
ただ、無力な子どもがいくらがんばってすべてを受けとめても、
母親が何も受けとめずそこに放置すれば、
生まれた命は数時間で終わるでしょう。
では、子どもは何ひとつ受けとめていないのでしょうか?
いいえ、生まれてすぐに、大きな魚に食べられてしまうような運命をも、
受けとめているのです。
それを「根源的受動性」という言葉で表せるとしても、
その命が、ここで生きていくことを、受けとめているのだと、
やはり私は思います。
そこには、ちゃんと、自分の苦労を受けとめていこうとする
命の主体が確かにあります。
子どもは、自分の身に起こることのすべてを、いったんは受けとめています。
受けとめるから、受けとめ返してほしい、と言っているのです。
それが、「子どもは受けとめられなければいけない」という、
私の一番の根拠です。
☆ ☆ ☆ ☆
ここは、わたしを受けとめてくれる世界。
わたしといういのちが、生きる世界。
わたしはこの世界で、生きることを受けとめるから、
わたしを受けとめ返してほしい。
わたしはまだ小さくて、一人で生きてはいけないから。
だれかわたしを受けとめてほしい。
おっぱいをのませてほしい。
あたたかくて、やわらかいばしょで、眠らせてほしい。
ここちよいぬくもりと、わたしを呼びかけるこえとまなざしがほしい。
あなたがどんな人か、どんな人生を生きてきたのか、
わたしには分からないけど、
わたしはあなたを選ばずに受けとめるから、
だから、あなたもわたしを受けとめてほしい。
「これが、わたしよ。」
わたしはまだ子ども。
わたしはただの子ども。
わたしは「特別な子」じゃないわ。
わたしは石から生まれた子どもじゃない。
わたしは木から生まれた子どもじゃない。
わたしはお母さんから生まれた、ただのふつうの子ども。
障害があっても、病気があっても、
わたしはこのわたしを受けとめるから、
だから、わたしが受けとめ切れないものを、支えてほしい。
わたしがまだ小さくて、小さいこの手では、
ひとりだけでは受けとめ切れない荷物を、
お母さんに少しだけ受けとめてほしい。
わたしが大きくなったら、自分で受けとめるから。
わたしはわたしを受けとめるために生まれてきたの。
でも、いまはまだ、全部受けとめることができないの。
せいいっぱいがんばってるけど、いまは受けとめられないことがあるの。
だから、わたしを受けとめてほしい。
わたしが、わたしを受けとめられるときまで、
そばにいて、わたしを見守ってほしい。
「これが、わたしよ。」
☆ ☆ ☆ ☆
(6月15日のブログに、
「受けとめられるために」という文章を書きました。
その時点での、私の理解がそこに書かれています。
それと比べてもらうと、私の理解の何が変わったのか分かると思います。)
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