ひとりの子どもの「こだわり」には、大切な意味や役割があって、
それを自分でほどいていくには、「時間」がかかります。
大切なこだわりを、自分の中で他の何かに明け渡すには、
十分に信頼できるものとの出会いが必要になります。
ひとりの子どもが大切に守ろうとしたもの。
「こだわり」と呼ばれるカタチで守らなければいられなかったもの。
それを、そんなに必死に守らなくても大丈夫だと思える
おだやかな時間と関係を経験することが必要です。
たとえば「多動」といわれる落ち着きのない行動も、
人と人の中で繰り返し、受けとめられ体験を重ねることで、
自分の確かめたいことをゆっくりと確かめられるようになります。
安心できる自分の居場所。
安心できる自己イメージ。
安心できる関係のなかの自分。
それらを、どんな場所で、どんな関係のなかで、
誰といっしょに作るのか。
ふつうに子どもが集う場所で、とまどいながら、ぶつかりながら…。
泣きながら、怒りながら、笑いながら…。
不安や、悲しみ、喜びの感情を一緒に感じる関係の中で、
ほどけていくものがあります。
そのこだわりがほどけた場所に、
仲間のなかにいる安心とうれしさが生まれます。
溶けていくこだわりがある一方で、溶けないこだわりもあります。
私たちはそれを「こだわり」とは呼ばず、
趣味とか特技とか、その人らしさと呼びます。
お互いに「了解しあえるこだわり」のカタチがあることが分かれば、
それはこの子の大切な趣味であり、特技であり、
マイブームだと思えるようになります。
自分の「こだわり」が溶けることで、
私たちはそうした心の柔軟さを持てるようになるのです。
また、ひとつのこだわりが溶けることで、
本当に大事なこだわりに自信を持てるようになることもあります。
それは正体の分からない不安から身を守るためのこだわりではありません。
人との関係を警戒して閉じこもるためのこだわりではありません。
「これはぼくの大切なこだわりだよ」と、人に開くこだわりになります。
人と人とのつながりの中で育った子どもには、
「つながりを開くこだわり」もあるということを、
私は子どもたちに教えてもらいました。
子どもたちと一緒に生活し、受けとめ合い体験を繰り返すなかで、
私たちが間違ってきた「障害=こだわり」という「こだわり」もまた
溶けていくのです
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