「介助」者から「対話」者へ(その5)
《子どもからもらった大切な贈り物》
「ふつう学級の世界」とは、
未だ先入観を持たない幼い人たちが、
ただお互いを知り合い、
つながりはじめる世界のことだった。
そこには、お互いに身体一つで
相手と向かい合う子どもたちがいた。
そこには、お互いを、対話し合う仲間の一味と
無条件にみなす子どもたちがいた。
だから、その場にいてはいけない子どもはいない。
その場にいるべきでない子どもなんかいない。
生まれてこなかった方がいい子どもなんかいない。
誰もが誰かに大切に思われている仲間だと、
無条件の信頼をもつ生き物を、子どもという。
だから、子どもである限り、
だれもが堂々と子どもでいていい。
その世界を見守り、子どもが自分の興味や関心を広げ、
なりたい何かを見つけ、信じられる未来に向かう姿勢を、
支える人を子どもは「せんせい」とよぶ。
その世界に、対話者として参加することを許された大人を、
子どもたちは「せんせい」とよぶ。
その先生と親たちが協力して作る、
子どもたちの生きる場を、
ふつう学級と私たちは呼んできた。
◇
それが、私が子どもたちからもらったものだった。
子どものころから、疑い続けることをやめられなかった、
わたしがみんなの仲間だという実感―――。
あのときあの場に
みんなと一緒に過ごした時間もつながりも
ほんとうのことだったと、
まぼろしやゆめやかんちがいじゃなく、
ほんとうにあったわたしのものがたりだと―――。
知識ではなく、感情の流れが、
時間を超えて重ね合わさる感覚に連れていってくれた。
みんなとおなじなかまだという実感。
みんなとおなじ子どもだと疑わずに過ごす子ども時代。
わたしが子どもの頃にほしかったもの。
ほしかったけれど、手に入らなかったもの。
それを、私は大人になってから
出会った子どもたちに、もらってきたのだった。
それが子どもたちからのおくりものだった。
それで十分だった。わたしには。
もしも、今日生まれてくる子どものだれかに、
このおくりものが必要なとき、
どうしたらその子の手に届けられるだろう…。
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