「その島の人たちは、ひとの話をきかない」(その2)
この本の著者を、「漂流老人ホームレス社会」を読んで知った。
若いころ石川先生に会ってみたいと思ったように、この人に会ってみたいとおもった。
この人は「子どもを分けること」については、どんなふうに考えるんだろうと思った。
何度か講演会に出かけたが、なかなか話す機会はなかった。
でもこの本の中に書いてあった。

《お互いによく出会っているから助けられる》
岡さんの調査によると、この地域のひとは他の地域に比べると「特別支援学級反対」と考える人が多いという。……
…障がいをもつひととそうでないひとを子どものころから分けると、お互いにお互いのことがよくわからなくなってしまう。
どういった場面でどういった助けが必要なのか、それを自然とできるようになるためには日常の中にお互いがいなければならない。
そしていざ大人になって出会ったときに、お互いの生活してきた場所が違いすぎれば、お互いにどうしたらいいかわからなくなる。
最も重要なことはお互いに助け合えることである。
困っているひとがいたら困っている部分を助ける。
その当たり前のことができないのはお互いをよく知らないからなのだろうと思う。
旧海部町ではひとは、お互いによく出会っている。
お互いにどういう手助けがあったらいいのか何をしてなくてもいいのかを知っている。
お互いに自然である。
そして、旧海部町では、うつ病の有病率は高いのだが精神科病院に入院するひとはとても少ないこともそのことに関連しているかもしれない。
それは障害をもっていたとしても区別しなくていいからだということかもしれない………。
(「その島のひとたちは、ひとの話をきかない」森川すいめい 青土社)

いままで、介護や医療、災害支援などの本を読んで素敵な人だなとおもうことはたくさんあった。
でも、特別支援教育(特殊教育)に反対という人はあまりいなかった。
だから、この一文は新鮮だった。
これは、「自殺希少地域」についての本であって、教育についての本ではない。
わたしの本棚に並ぶ大切な本のほとんどは、「教育」以外のものだ。