現代語訳 RONINのすすめ (其の六)
卒業から一年が過ぎてなお、みんなのいる場所に向かうことをやめない。
定員内で不合格にされてもあきらめずに高校へと向かう。
この子のどこに、そんな力があったのだろう。そう思ったこともある。
でもその思いと一年暮らせば、この子が高校に向かう姿は、自分の行動に何らかの力があることを体験してきたからこそ生まれる、主体性の表現なのだと分かる。
自分が手をのばせば、仲間とつながることができることを知っているからこそあきらめない。
その自信と成長こそが、小学校と中学校で仲間と共に学んだものだと、言葉がなくても分かる。
ふり返れば、中学校の時には、先生の音読を黙って聞くことなどなかった子が、5時間の試験をまっとうする。ふだんは、介助者の指示を嫌がり、自分のやり方を通そうとする子が、受検の時には、介助者が隣に座り、試験への指示に従う。
いまこの時が、介助の手をかり、自分の身体を使い、自分の居場所を守る時だと、この子たちは感じとる。親も先生も見たことのないがんばりと、予想できない姿。その向かう姿勢こそが、みんなと一緒に高校に行きたいという、この子の意思と希望のありったけの表現だった。
定員内不合格とは、そのすべてを否定することだから、この子は揺らぐことなく全身全霊で高校に向かう。定員内不合格という大人の嘘に、この子たちの絆が負けることはない。
小学校、中学校で、「できないこと、苦手なこと」があっても、自分にはみんなと一緒に歩む力があるという体験をしてきたことが、今もこの子を支える。
障害のあること、できないことがあることは、恥ずかしいことではないという、一番大事なことを、この子はちゃんと学んできた。
この子にとってかけがえのない財産、義務教育の成果、共に育ったことの宝物がここにある。
【ふ】「ふつう学級のよさは、学校を終えてからよく分かる」
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