入学の半年前、集会の時のかいとくんの自覚と自信。
それは、親の覚悟をしっかりと感じ、
親の愛情をいっぱいに浴びた子どもだけが持てるもの。
私はそんなふうに感じました。
そのころのコメントです。
【きのう、かいとに友達のはるちゃんが
入院して手術をしたことを話しました。
「はるちゃん、これ(カニューレ)なくなったの?
ないといいねぇ。」
「そうだね。」
「かいとも、これがない子になりたいよ。」】
保育園で、自分だけが「気管切開」していて、
いろんなことに制限がある…。
「どうして? ぼくだけ…」
そんな思いを感じる場面はたくさんあるでしょう。
でもそうした苦労を抱えながらも、
それ以上に、「親の覚悟」をきちんとくぐりぬけて、
自分の覚悟(自分への自信)を持った子どもは、
やはりとても幸せな顔をしているように、私にはみえます。
勉強ができるとか、何かができるとかいうのは、
その後の話だと思うのです。
集会が終わり、小学校への看護師の配置が決まってしばらく、
かいとママさんは「学童保育」の話をしませんでした。
小学校の交渉でエネルギーを使い切ってしまったのだろうと、
私たちは「学童」には触れませんでした。
もちろん、「もったいないなぁ~」とは
つぶやいていましたが(-。-)y-゜゜゜
年があけて、ママさんは自分から重い腰を上げました。
迷いに迷って、闘うエネルギーを貯めたのでしょう。
ところが、市の方では「ようこそ、お待ちしていました」と
待っていてくれたのでした(>_<)
そうして学童にも看護師がつく方向で話は進みました。
かいとくんはこの一年、
「親の覚悟」が生まれるまでの不安を肌で感じてきました。
特別支援教育を勧める国や教育委員会に抗い、
「普通学級」を貫くこと。
しかも、子どものために親でなく看護師をつけてほしいと
貫くこと、学童保育でも受け止めてほしいと貫くこと。
それは、簡単な決意や覚悟ではありません。
どんなに「覚悟」したって心は揺れます。
しかもうまくいく保障などなかったのです。
どうしてそんなに苦しい思いをしているのか、
どうしてそんなに不安に揺れているのか、
よく分からないまま、「自分のこのカニューレ」が
問題なのだということだけを感じながら、
「ぼく、がっこう、いかないよ」というしかなかった日。
その後、揺れながら、泣きながら、覚悟を決め、
自分のためにがんばってくれている親の姿を、
誰よりも日常に感じているのはかいとくんでした。
自分のためだけに覚悟を決めて、闘ってくれる親の姿を、
いつも肌で感じながら、かいとくんはこの一年、
成長してきたのです。
私には、それこそが「子どもの自信」と
「自尊感情」「自己肯定感」を育てるのだと思います。
そのことが、かいとくんにもたらしたものは何だったか。
私が好きなのは、「宿題やらないよ!」と、
堂々とわがままに言えるかいとくんです。
【学童でやり残した宿題プリントを帰宅後やっているなぁ…。
いいぞ、いいぞと思っていると…、ななんと!!!
動物やら風船やらを数え色を塗るはずが、
動物やら風船にすべて×印をつけてありました。
「なにやってんのぉー???」っと、ちょっと怒りながら言うと
「やりたくないから×つけといた。」と、
ケロッと言い放ちました。
いやぁ…こんな小学生になるとは想像を超えていました。
親ばかか、ばか親か、なんか、勉強は解からないけれど、
宿題なんて一生懸命やっちゃったりなんかするのかなぁ…
で、出来るようになっちゃったりするのかなぁ…
なんて甘い妄想をしていたんだけどなぁ。】
「やりたくないから×つけといた」と、
ママさんに平然と言い切れる強さ、
それは、一年前のかいとくんには見えなかったものでした。
がっこうに行く楽しみよりも、
母親を気遣っていたかいとくんには
言えなかった言葉だと感じます。
「ぼくは、ぼくのままで、いつも大丈夫なんだ。
ママの言うことをいつも聞かなくても、
先生の言うとおりにしなくても、
ぼくはぼくのままで、だいじょうぶなんだ」
その時その時の、かいとくんを見てもたぶん見えなかったもの。
その時々の表情を、この一年の流れの中で
見せてもらえたからこそ、子どものセンサーが感じ、
たどりついた答えを私はこうして言葉にしてみることができます。
「外」の評価ではなく、いつもそばいる家族が
一番大切にしあいたい思いを貫くこと、
その親の覚悟と信頼を通して、かいとくんが手に入れたのは、
自分であることへの信頼という最大の贈り物でした。
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