案外目立たない花だ。
カキツバタ(杜若)の名前の由来は、昔、花の汁で布を染めたので「書き付け花」となり、だんだん「かきつばた」に転訛していったらしい。「燕子花」とも書く。
三河国八橋(現在の知立市八橋)で『伊勢物語』で在原業平がカキツバタの歌を詠った
から衣
きつつなれにし
つましあれば
はるばる来ぬる
たびをしぞ思ふ
は超有名だという。
唐衣を繰り返し着てよれよれになってしまった「褄(つま)」、そんな風に長年つれ添って親し
く思う「妻」があるので、その衣を永らく張っては着てまた張っては着るように、はるば
る遠く来てしまったこの旅をしみじみと思うことだ。
(『古今和歌集』〈新日本古典文学大系5〉新井栄蔵ほか校注 岩波書店)
とある。