「閑話放題」

2010-06-21 15:57:25 | 「閑話放題」
             「閑話放題」


 ワールド杯サッカーをテレビで観てると、ヨーロッパの強豪が予

想に反して苦戦している。フランス、ドイツ、イタリア、スペインとい

った人気の国内リーグを抱えるサッカー王国だけでなくサッカー

発祥の地イングランドまでも一次予選敗退の可能性さえ出てきた。

 その原因をつらつら考えていると、ヨーロッパのクラブチームは、

いずれも世界中から卓越した選手を選りすぐって獲得し、何れのリ

ーグも人気があるが、いざ国別のワールド杯になってそれらの選手

が母国に引き揚げると、実は、自国の若手選手は出場の機会を奪

われて育っていなかった。つまり、ウインブルドン現象がサッカーで

も起きている。更に、ヨーロッパの代表チームは相次いで主力選手

が引退して、ゲームを作る司令塔を失い、単純な攻撃や連携のない

パスを繰り返していた。

 有名選手は、クラブチームでの活躍が情報の発達によってリアル

タイムで全世界に伝えられ、すでにワールド杯が自分の実力を認め

させる場所ではなく、もはや国の代表として選ばれてもそれほどモ

チベーションが高まることがないのかもしれない。更に、EUの統

合によって自らのアイデンティティをかつての国家に求め難くなり、

選手たちの国家意識が希薄に為りつつあるのかもしれない。

 一方で、ヨーロッパへ渡って活躍する南米の有名選手たちは、自

らのアイデンティティを金銭によって簡単に放出するクラブチーム

に求める訳にはいかず生まれ育った自国に見出し、国の代表に選ば

れたことを誇りに感じ、代表チームの勝利の為にモチベーションを

高めて、ゲームでは綿密な連携プレーを披露している。

 私は今回のワールド杯サッカーは、選手たちの国家に対するアイ

デンティティの違いが、統合されたEUと南米などの新興国の選手

たちのモチベーションの違いとなって現れているのではないかと、

少しオフサイド気味ではあるがそう思った。もしも、EU統合によ

って人々の古い国家アイデンティティが曖昧になったとすれば、そ

れはそれですごいことだなあと、例えばいつの日か「かつてそれぞ

れは国と呼ばれる共同体に別れていました」などと語る日が来ると

すれば、武力制圧に拠らないで国家が統合するという、人類史上初

めての画期的な出来事ではないだろうか。後半戦が待ちきれないハ

ーフタイムに、言いたい放題の閑話に花が咲いた。

                                    (完)