「ぼんやりした不安」

2018-03-05 03:16:30 | 「パラダイムシフト」

          「ぼんやりした不安」


 最近の世界の出来事をニュースなどで見ていると政治権力者たち

による暴挙を耳にすることが多い。列挙すれば、アサド政権による

反政府勢力への攻撃が激化しているシリア内戦、ミャンマー政府に

よるロヒンギャ民族に対する迫害、カンボジアのフン・セン政権に

よる野党弾圧や、その政権を支持する中国もまた憲法改正して習主

席に権力の集中を目論んでいる。さらにロシアではプーチン大統領

が再選され長期政権が確実視されている。それらのことから見えて

くるのは強権を掌握しようとする独裁者とその支持者たちによる人

権侵害と民主主義の軽視で、いまや世界は急速に右傾化し始め、戦

後レジームの終焉のあとに戦前レジームへ回帰したような錯覚を覚

えてぼんやりした不安を感じる。グローバリゼーションがもたらし

た世界経済の限界の下で、各国とも経済成長の行き詰まりから格差

社会が拡大し、誰もが分配を求めて権力に擦り寄ろうとしているの

かもしれない。かつては世界の「自由と民主主義」を守るために派

兵も辞さなかったアメリカさえも、トランプ政権の下で人種問題や

格差問題などの様々な内憂が顕在化して対立が激化して外患にばか

り目を向けてられなくなっている。世界秩序を監視してきたアメリ

カンポリスが居なくなると、たちまち権力に執着する権力者たちが

この時とばかりにのさばり始めた。

 さて、目をわが国に向けると、安倍一強政権は国民の安定した支

持を得て、プーチン大統領や習近平主席と肩を並べるほどの長期政

権を目指そうとしているが、その政治姿勢は決して民主的な議会運

営によって政策を決議しようとしているとは思えない。そもそも民

主主義政治は対立する議論を闘わせて政策の不備を補うものであれ

ば、議論の根底となる資料や統計の公開は当然のことで、捏造され

た統計の下での如何なる議論も成り立たない。それはかつて原発政

策を推進する際の議論に於いて、反対派の不安を「安全神話」とい

う壁で遮断して疑義を受け入れなかったことと重なって見える。森

友・加計問題にしてもデータの隠蔽が甚だしく、よって議論の決議

を迫るのは民主主義政治を蔑ろにしているとしか思えない。斯かる

ずさんな議会運営を目にすると、戦後レジームの終焉とともに戦前

レジームの始まりを予感せずには居られない。

 行き詰った社会を打開するために姑息な手段でその場を乗り切っ

たとしても未来に禍根を残すだけである。

                        (おわり)