「あほリズム」
(454)
芸術は、ニーチェの精神に即して芸術家の側からとらえると、創
作活動であり、これは美に関係づけられている。これに対応して、
認識の関係対象は真理である。したがって、今問題になっている芸
術と真理との――驚愕をひき起こす――関係は、芸術と科学的認識
との関係、ないしは美と真理との関係としてとらえられなくてはな
らない。(ハイデッガー「ニーチェⅠ」)
(455)
「世界は生成であり、力への意志である」とすれば、我々が「信
じる」科学文明でさえも、永遠不変の盤石な真理の上に構築されて
いるわけではない、つまり近代科学文明社会は決して永遠不変では
ない。
(456)
それは、かつて神の名の下に「真なる世界」を創造し、神の世界
を信じて疑わなかった人々が、科学技術の福音を耳にして真理が疑
われ始めるとたちまち信仰に躓いたように、いずれ「科学的認識」
もまた見捨てられる日が来るに違いない。