「あほリズム」
(879)
いまやわが国も「格差社会」が顕著化して、去年就任した岸田総理
はこれまでの新自由主義的な経済政策を見直して「成長と分配の好循
環」の下で「分配」を重視した「新しい資本主義」を掲げているが、
かつて政府が近代化を目指していたおよそ100年ほど前、思想家北
一輝は、当時の「格差社会」を『生きるとより死に至るまで脱する能
わざる永続的飢饉の地獄は富豪の天国の隣りにて存す』と社会的不平
等を憤ったが、1896年、官立大学教授、金井延・福田徳三・桑田
熊蔵らが、『社会主義には反対だが、貧富の差の激化を放任しておく
わけにもいかない』と、国家による社会政策の必要をといて『社会政
策学会』を作って運動したが、しかし北一輝は「情けによる救済は事
態を誤らすばかりで、法の理想によって政治の現実を変えることは不
可能だ」と断言した。限界に達した経済成長を前提にするかぎり「分
配」など生まれるはずがなく、その結果「寡(すく)なきを患(うれ)いて
、而(しか)も均(ひと)しからざるを患う」ことになる。