「あほリズム」
(883)
ニーチェ著「悦ばしき知識」信太正三訳(ちくま学芸文庫)より
第三書
124
『無限なるものの水平圏内で。――われわれは陸地を後にして、舟
に乗り込んだのだ!われわれは背後の橋梁を撤去した――と言うよ
りむしろ、戻るべき陸地を撤去したのだ!いざ、小舟よ!心せよ!
お前のかたわらに広がるのは太洋だ。まこと、太洋はいつも吼え立
ててばかしいるのではない、おりおりは絹かのように金かのように
好意の幻夢のように臥していることもある。けれども、それが無限
であるのを、そして無限にまさる怖るべきものの何一つないのを、
お前が認める時が来るであろう。ああ、身の自由を感じたのに無限
というこの鳥籠の壁につきあたっている、哀れな鳥よ!そこにはさ
らに多くの自由があったとでもいうように、陸地への郷愁がお前を
襲うとしたら、いたましいことだ!――もう「陸地」はどこにも無
いのだ!』
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