「真理とは幻想である」(5)のつづき

2020-11-18 07:18:15 | 「ハイデガーへの回帰」

         「真理とは幻想である」


            (5)のつづき

 
「存在とは何であるか?」の答えが「真理とは幻想である」とすれ

ば、《真理》は理性によって規定されるのであるから、それは理性

の限界にほかならない。理性の限界とは、科学的実証が可能な事実

存在《仮象》については認識できても、そもそも存在者の「存在と

は何であるか?」という本質存在《真理》には的中できない。ニー

チェは、理性による形而上学的思惟はニヒリズムに陥ると言い、そ

して「芸術はニヒリズムに対する卓越した反対運動である」、或は

「芸術は真理よりも多くの価値がある」と説き、芸術、つまり創作

への陶酔こそがニヒリズムから遁れる唯一の方法であると語る。と

ころで、理性によって規定される《真理》の定義とは絶対不変の堅

固な表象であるとすれば、無常に遷り変る生成の世界を読み解くこ

とはできない。つまり、もはや理性はわれわれの存在目的を思考す

るための手段としては無価値でしかない。

                         (つづく)

 


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