「真理とは幻想である」
(5)のつづき
「存在とは何であるか?」の答えが「真理とは幻想である」とすれ
ば、《真理》は理性によって規定されるのであるから、それは理性
の限界にほかならない。理性の限界とは、科学的実証が可能な事実
存在《仮象》については認識できても、そもそも存在者の「存在と
は何であるか?」という本質存在《真理》には的中できない。ニー
チェは、理性による形而上学的思惟はニヒリズムに陥ると言い、そ
して「芸術はニヒリズムに対する卓越した反対運動である」、或は
「芸術は真理よりも多くの価値がある」と説き、芸術、つまり創作
への陶酔こそがニヒリズムから遁れる唯一の方法であると語る。と
ころで、理性によって規定される《真理》の定義とは絶対不変の堅
固な表象であるとすれば、無常に遷り変る生成の世界を読み解くこ
とはできない。つまり、もはや理性はわれわれの存在目的を思考す
るための手段としては無価値でしかない。
(つづく)
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