「閑話放題」②

2010-06-24 22:22:00 | 「閑話放題」
                  「閑話放題」②


「そーか?」

すると、それまで黙って焼酎を飲んでいた知り合いの男が私の言っ

たことに反論した。

「そんな大袈裟なことかね、ただ国内の人種問題が代表チームにも

表れただけのことじゃねえの」

私は裏を掻かれたことに慌てふためいて、彼の口撃を封じようと彼

をマークした。

「もちろんそれもあるさ、しかし、その背後にはEU統合という大

きな時代転換の流れがあるんじゃないかって言ってんだよ」

「じゃあ何で他の国はあっさり勝ち進んでいるんだよ。オランダな

んて人種の坩堝だぜ。それでも何の問題もなく戦ってるじゃんか。

チームが纏るかどうかはさっき誰かが言った中心になる選手が、例

えばフランスならジタンがボールコントロールして前を向けば、全

員が『さあ攻撃だ!』って攻め上がるじゃない、ただ、そういう選

手が確かに居なくなったとは思うけど」

私もムキになって言い返した。

「そりゃあ、国によってチーム事情が違うことは判り切ったことだ

けど、これまでなら差別的な扱いをされても定住する為に耐えてき

た移民たちが、世代を重ねて社会に定着し、そして自己主張をする

ようになった背景には統合が影響しているんじゃなかって言ってる

んだ」

「大体EU統合なんて上手くいく訳ないさ」

「もちろん簡単な訳ないさ、地域紛争は絶え間なく起こるだろう。

それでも世界はグローバル化したんだから、何時までも民族だ国家

だなんて言ってられなくなるさ」

「そんなこと言ったら、人種が混合してしまうで」

「そうだよ、何れ人類の皮膚の色は混血を繰り返して褐色になる。

その主な原因はオゾン層の破壊によって紫外線量が爆発的に増加し

て、色素を持たない白人は致命的なプレッシャーを受けて真っ先に

淘汰され黒人だけが生き残る。そもそも『国家』なんて白人の創っ

た概念だからね、やがて人類は混血化した褐色人種だけが生き延び

て世界を支配し、そこでは民族や人種といった違いが無くなり、唯一

の褐色人種の下で国家なんて消滅するだろう」

「そっ、そんなことになったら商売上がったりだよ!」

「ところで、あんた何屋さんだっけ?」

「タトー屋!」

「・・・」

 閑話休題、ハーフタイムが終わって後半戦が始まった。

                                    (完)②

「閑話放題」

2010-06-21 15:57:25 | 「閑話放題」
             「閑話放題」


 ワールド杯サッカーをテレビで観てると、ヨーロッパの強豪が予

想に反して苦戦している。フランス、ドイツ、イタリア、スペインとい

った人気の国内リーグを抱えるサッカー王国だけでなくサッカー

発祥の地イングランドまでも一次予選敗退の可能性さえ出てきた。

 その原因をつらつら考えていると、ヨーロッパのクラブチームは、

いずれも世界中から卓越した選手を選りすぐって獲得し、何れのリ

ーグも人気があるが、いざ国別のワールド杯になってそれらの選手

が母国に引き揚げると、実は、自国の若手選手は出場の機会を奪

われて育っていなかった。つまり、ウインブルドン現象がサッカーで

も起きている。更に、ヨーロッパの代表チームは相次いで主力選手

が引退して、ゲームを作る司令塔を失い、単純な攻撃や連携のない

パスを繰り返していた。

 有名選手は、クラブチームでの活躍が情報の発達によってリアル

タイムで全世界に伝えられ、すでにワールド杯が自分の実力を認め

させる場所ではなく、もはや国の代表として選ばれてもそれほどモ

チベーションが高まることがないのかもしれない。更に、EUの統

合によって自らのアイデンティティをかつての国家に求め難くなり、

選手たちの国家意識が希薄に為りつつあるのかもしれない。

 一方で、ヨーロッパへ渡って活躍する南米の有名選手たちは、自

らのアイデンティティを金銭によって簡単に放出するクラブチーム

に求める訳にはいかず生まれ育った自国に見出し、国の代表に選ば

れたことを誇りに感じ、代表チームの勝利の為にモチベーションを

高めて、ゲームでは綿密な連携プレーを披露している。

 私は今回のワールド杯サッカーは、選手たちの国家に対するアイ

デンティティの違いが、統合されたEUと南米などの新興国の選手

たちのモチベーションの違いとなって現れているのではないかと、

少しオフサイド気味ではあるがそう思った。もしも、EU統合によ

って人々の古い国家アイデンティティが曖昧になったとすれば、そ

れはそれですごいことだなあと、例えばいつの日か「かつてそれぞ

れは国と呼ばれる共同体に別れていました」などと語る日が来ると

すれば、武力制圧に拠らないで国家が統合するという、人類史上初

めての画期的な出来事ではないだろうか。後半戦が待ちきれないハ

ーフタイムに、言いたい放題の閑話に花が咲いた。

                                    (完)

「休筆宣言」

2010-06-19 16:46:15 | 「閑話放題」
         「休筆宣言」


 ワールド杯サッカーに熱中して小説の更新が全く捗りません。

パソコンの前に座っても、まず頭の中に浮かんでくるのはピッチ

を駆ける選手の姿ばかりです。このまま続けると主人公にサッカー

をさせてしまうかもしれませんので、しばらく小説は休みます。さて、

今夜は日本対オランダ戦ですが、とても勝てる相手だとは思いませ

ん。

 大体マスコミはゴールを決めた本田を持ち上げ過ぎではないか。

カメルーン戦のゴールはそれ程すばらしいシュートだったのか?

トラップしたボールが運よく右膝に当たり跳ねずに足元に落ちて、

もしバウンドしていれば飛び込んできたバックスに潰されていた

に違いない、云わば「ごっつあんゴール」だぜ。巧い選手ならダ

イレクトで叩き込むさ。ところが、センターリングの精度の悪さ

は日本のお家芸だが、ディフェンダーをかわして見事なセンター

リングを上げた松井こそ称えられるべきだと思う。そんな訳であ

まり日本チームに過大な期待はしていないが、1-3で負けても

そこそこ見れるゲームをすれば次のゲームへの期待が膨らむかも

しれない。ただ、フランス、イングランド、ドイツといったヨー

ロッパ勢の不甲斐ない結果を見て、オランダも同じ轍を踏まない

保証はない。

 なお、ゲーム終了後の結果からこの記事があまりにも的外れだ

った場合不明を恥じて自身の一存で削除しますので悪しからず。

 がんばれニッポン!そんなに期待してないけど。

 アッ!ひとつ言い忘れた、「大久保!すぐにコケるな!」

                                   (完)