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最近上映されて良かった映画、以前見て心に残った映画、感銘をうけた本の自分流感想を。たまには旅行・山行記や愚痴も。

『政府は必ず嘘をつく-アメリカの「失われた10年」が私たちに警告すること』-橋下独裁の手本が(2)

2012-03-04 19:58:39 | 最近読んだ本・感想

               『政府は必ず嘘をつく-アメリカの「失われた10年」が私たちに警告すること』-(その2)


《プロローグ》-続き


 9・11以降のアメリカは『テロの驚異』を口実に『愛国者法』 *註1 などを導入し国民の監視体制を強化する一方、『大幅な規制緩和とあらゆる分野の市場化を実施、この10年間でアメリカの貧困層を3倍に拡大させた。』(P-5)
 また、教育現場では、『「大学市場化」の嵐の中、教員へのしめつけや高騰する授業料などへの反発がふくれあがっ』(P-9) たという。
 一方、ニューオリンズは、『ハリケーン・カトリーナによる洪水被害後、結託した政府と大資本によって「特区」にされ、暴力的に市場化さた』(P-8)という。
 『そして、大惨事につけ込んで実施される過激な市場原理主義『ショック・ドクトリン』*註2によって、貧困格差は加速し続けている。』(P-9)

 問題は海外の出来事で済ますことでない。
 
 大事なことは、3・11以後、今の日本でアメリカと同じようなことが日本で起きているということだ。

 『日本は、アメリカと同じ道を進んでいる。アメリカの教育現場で何が起きているいるのか*註3も、サッチャー改革*註4の末路も、日本では報道されないのか?アメリカが9・11直後にやったことを、今度は日本が3・11後にやるのか。まるで示し合わせたように。』(P-10)

 『2011年12月。被災地や避難先でいまだに苦しんでいる住民と、一向に収束せず海や大気に大量の放射性物質を毎日放出している原発をよそに、野田佳彦総理は世界に向かって、「収束宣言」を出した。・・(中略)・・年金、医療については将来が全く見えない状況だ。急増する失業者や生活保護者の数、そして実態のわからないまま強引に進められている〈TPP〉。』(P-10 )

 『TPP』*註5は国内で何の議論もないまま、いきなり政府が加入に向けての会議の参加を突然打ち出した。『消費税』に関しては国会で説明する前に、海外に向け増税を宣言し《公約》する有様だ。

 そして、大阪では《独裁者》が、中央政府の蛮行を横目に、『教育基本条例』『職員基本条例』を持ち出したり、憲法違反で時代を逆戻りされるような《職員アンケート》を実施したり、メールを盗聴したりと、職員や地域住民までも萎縮させるようなことをして、独裁体制を固めるとともに、アメリカの悪政の後追いをしている。


 プロローグの最後に、著者はこの本を書く動機を語っている。
 
 『3・11以降、日本国内の状況を追いながら、並行して貧困大国化するアメリカを取材しに何度も足を運んだ。そこで目にしたものや出合った人々、日本に帰国するたびに抱く違和感。、はじめはバラバラの点だったそれらが、やがてすこしずつつながり一本の線になった時、この本を書かなければと思った。・・(中略)・・
 米国で取材中、何度言われたことだろう。
「アメリカを見ろ、同じ過ちを犯すな。」と。
 あの震災でたくさんのものを失った私たちにとって、先が見えない不安の中で前に進むためのヒントが、アメリカの〈失われた10年〉のあちこちに散りばめられている。』
(P-10)


 *註1:「2001年10月26日にアメリカ議会をスピード通過した〈愛国者法〉は、アメリカ国内をすみずみまで監視する許可を当局に与えた。表向きは「危険思想を持つテロリスト予備軍のあぶり出し」だったが、、実際には電話盗聴やネットの検閲の対象は自国民だ。」(P-57)

 『2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件後45日間で成立し、米国内外のテロリズムと戦うことを目的として政府当局に対して権限を大幅に拡大させた法律である。この法律において電話やEメール、医療情報、金融情報や他の記録について当局に対し調査する権限を拡大し、アメリカ合衆国国内において外国人に対する情報収集の制限に対する権限を緩和し、財務省に対し金融資産の移転、とりわけ外国人や外国法人について規制する権限を強化し、テロに関係する行為をとったと疑われるものに対し司法当局や入国管理局に対し入国者を留置・追放する権限を高めることを規定している。さらに、「テロリズム」の定義を拡大し「国内テロ」をも含め、その結果本法は司法当局の拡大された権限を行使する場面が飛躍的に拡大している。』(ウッキペディアより)
     「ウッキペディア」同サイトへジャンプ



 *註2:「大惨事につけ込んで実施される過激な市場原理主義改革」という意味で、カナダのジャーナリスト、ナオミ・クラインが著した本のタイトルである。この本にも引用のある、ミルトン・フリードマンの「真の変革は、危機状況によってのみ可能となる」(P-64) という主張に対する批判となっている。
     『ショック・ドクトリン』の参考サイトへジャンプ


 *註3:著者の前著作『ルポ貧困大陸アメリカⅡ』の第1章(公教育が借金地獄に変わる)に詳しい。
   『ルポ貧困大陸アメリカⅡ』の記事のマイ・ブログへジャンプ


 *註4:『新自由主義』に基づてサッチャーが行った、経済・金融・教育などの政治手法の総称。電話・ガス・空港・航空・水道等の国有企業の民営化や規制緩和、金融システム改革を掲げ、強いリーダーシップで断行。さらに改革の障害になっていた労働組合の影響力を削ぎ、所得税・法人税の大幅な税率の引き下げを実施。一方、付加価値税(消費税)は1979年に従来の8%から15%に引き上げられた。
 また 1988年には教育法を改定し、それまで教育機関は独自性が強かったイギリスの教育を、サッチャーは(イギリスの人種差別や、植民地支配の歴史を批判的に扱う内容)が自虐的な内容であるとして使用を止めさせようとして、教育界の反対を押し切り、「(1)全国共通のカリキュラムを作り、非キリスト教徒に対してもキリスト教の授業を必修とするなど「自虐的」内容の是正」「(2)全国共通学力テストの実施」「(3)学校当局に、地方教育委員会からの離脱を認め、その場合は政府直轄とする(政府と共に、親の発言力を強める)」という内容の法改正案を成立させた。

    大阪の独裁者が今からやろうとしている事と似てはいまいか!!


 *註5: 『TPP』の解説記事のマイ・ブログへジャンプ
    この記事を書いたときは、『医療保険』への影響や、この本で強調されている、外国の企業が《国内の公的支援や保護政策を自由取引を阻害するもの》として相手国政府を提訴できる『損害賠償請求』については言及していないが、これもTPPの大きな影響のある悪しき項目である。    





 第1章の「政府や権力は嘘をつくものです」-「・・・ですから歴史は、偽りを理解し、政府が言うことを鵜呑みにせず判断するためにあるのです。」
     -ハワード・ジン(章の扉にある言葉)

 この章は、主に「福島原発事故」をめぐっての、政府や東京電力の対応や発表がいかにでたらめでいい加減なものか暴いている。

 最近の報道で、SPEEDI(スピーディー)という、漏れた放射能物質の行方を即座に割り出すシステムがあるのだが、『その存在・利用法を政府関係者がまったく知らなかった』という内容のことが流れていた。一部の人間だけが知っていた情報を、地元住民には公表せず、米軍だけには通知していたというから驚きである。
 いまでこそこの事故が、「スリーマイル島」「チェルノブイリ」の原発事故に匹敵する大事故であるという認識に至っているが、当初、国民の多くは「福島原発周辺」だけの小規模な事故のように報道され、そう信じ込まされていたのではないか。

 アメリカが9・11テロのわずか4日後に『フセインは9・11に関係している』、『大量破壊兵器を持っている』という理由で『イラク攻撃』が議会で発案され、実行に移された経緯と関連させ、『日本の3・11』で感じたことを、原発事故直後にアメリカに帰った英語教師にインタビューしているが、10年後の今になって

 「・・・アルカイダとの関連も大量破壊兵器も、はじめから全く嘘だった。そのことがアメリカの国民が気づいた頃には、途方もない数の人が犠牲になっていました。」と聞かされる。
 
 福島も東北も、同じようなことが起こりかけている。

 「情報隠ぺい」が作ってきた世界の原発の歴史」(P-31以降)では、過去の世界各地の原発事故での隠蔽工作の実態が上げられている。その多くの事実を、私を含め多くの人が知らないということは、重大な事故のもかかわらず、意図的に隠されたか、あるいは報道されなかったということだ。

                                     【 つづく 】



     『同記事』-(その1)に戻る(ジャンプ)






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