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最近上映されて良かった映画、以前見て心に残った映画、感銘をうけた本の自分流感想を。たまには旅行・山行記や愚痴も。

『高校生からわかる日本経済―なぜ日本はどんどん貧しくなるの?』(金子勝著 かもがわ出版 2024年刊)を読む

2024-10-19 16:38:00 | 最近読んだ本・感想
  【 2024年10月 15日 】

 総選挙が始まった。
 金権腐敗や裏金問題など究明すべき問題は山ほどあるが、全国民にかかわる最も重大で解決しなければならない根本的な問題は《日本の経済》である。

 本の帯にあるように
  【実質賃金は下がり続け、一人あたりのGDPはG7最下位
   である。しかも、労働時間は北欧などのヨーロッパ諸国に比べれば格段に多く、多くの人が【自由な時間を持てず】、余暇を楽しむこともスポーツをする時間もなく、
   一部の人は過労死状態に置かれている。

        【 労働生産性と実質賃金 】 
           【 G7諸国との賃金水準比較 】
                          
   これでは、どこの政党がどんな政策を掲げ、実際どんなことをやっているのか検証する時間も無ければ、考え、判断する時間も余裕もない。
   
   一方、人口減少がつづき、どこへ行っても人手不足である。運転手が足りない、教師になりたがらない、看護師が不足している、人が集まらない。
   経済が回らないどころか、日本の先行きさえも、どうなるかわからない。 

                    
                    【 人口減少 】                              

 経済学は、一般に難しく敬遠されがちである。様々な要素が重なり合い、何が原因で、どうしてそんな結果が起こったのか釈然としない。専門家ずらした自称「経済学者」がかってな事を言うから、ますます混乱する。

 最近、『14歳の娘に語る~』とかいった、若者向けを意識したタイトルの本が目に付く。今回書籍売り場に並んでいた『高校生からわかる~経済』の文字に惹かれ、著書も過去に読んだ本で、まっとうな事が書かれていて-《失礼ごめんなさい》共感し教えられることの多い著者だったので、即購入する。
 《難しい経済学》を難しく書いた本など読んでも混乱するだけなので、《誰が読んでもわかるような本がいい》と思いながら読み進める。

 読んでみた結果、高校生が理解するには《ちょっと難しい》と感じるのである。そもそも、経済学の分野も元々広範囲な所、専門用語も飛び出し、最新の時事問題・事件も豊富に織り込まれているから付いて行くのが大変である。これらの内容を《四六版の本に収まるように、わかりやすく書く事》自体無理があるし、高校生には荷が重すぎるように感じた。

   〇         〇          〇

 最近、物価の上昇が激しい。コメ不足を契機に、何でもかんでも値上げされているような気がする。それも半端じゃない上がり方だ。最低賃金が50円上がっても、ベースアップが手取りが5%上がっても、とっても物価上昇には追い付けない感じである。

賃金が上がれば、生産にかかる費用が上がり、物価が上昇するのは当たり前ではないか》―というイタチごっこになるのでは、という懸念。

  それに対し、《コストカット型の経済を目指す》とか《生産性を挙げる工夫をする》とかの分かったような分からないような政府や財界の抽象的な言葉。

 《あくまで低金利政策(金融緩和)を続ける姿勢の日銀》に対し、《ああでもない》、《こうでもない》と専門家ぶった連中。

 以下、2,3の項目について、やさしい言葉で紐解いてみる。

◆ 低金利が続けば、金利の高いドルにお金が流れ、円安になり、大企業が潤う

        [FRB]:米連邦準備制度会(米の中央銀行)、[ECB]:ヨーロッパ中央銀行
                 【 欧米との政策金利の比較 】   

   金利が安ければ、貯金をしても利子がつかずお金が増えないので、利子の高いドルを持ちたがる。《円》が売られ《ドル》が買われるから(円が嫌われるから)円安になる。
   その結果どういう事が起こるか?!

   【 為替レート 】(日本円と外貨(この場合=ドル)を交換する場合の「交換割合」》
   極端な例だが、下に円安と円高の場合を比べた例と示すと

    円安の例:1ドル=160円の場合 【1万ドル】の物を外国から買うのに【160万円】払わなければならな → ドルに対して円の価値が低い
    円高の例:1ドル= 80円の場合 【1万ドル】の物を外国から買うのに【 80万円】だけ払えばいい    → ドルに対して円の価値が高い

 上の例で分かるように、円安になれば、円高の時より2倍のお金を輸入相手に払わなければならないから、輸入品(燃料・肥料・食料・原材料等)の物価は上がる。だから一般消費者と中小企業は多大な負担を強いられる。

 自動車産業など大企業・輸出産業は逆だ。 円高の時は80万円の物を1万ドルで売っていたが、円安なら160万円の日本製が同じ1万ドルで売れる。外国から見れば、1万ドルを出せば、以前なら80万円の物しか手に入らなかったものが、160万円の物が買える。同じ札束で、より良いものを安く変える。海外から日本に来る観光客も同じで、航空運賃や日本での滞在費が半分で済むからインバウンドが増えて観光関連業は嬉しい。

 従って、大企業から献金を受けている政府は、大企業に有利な《円安》に導く《金融緩和政策》(=低金利政策を取らざるを得ない。

           
                【 貿易収支 ー コロナ以降、一時を除いて貿易赤字が基調 】 
    
◆ 低金利政策をやめられない最大の理由は、国債費の増大である
 
 先日、郵便局から定額貯金満期(10年)の通知が来た。中身を見たら、50万円の定額預金の金利が10年で2003円で(年利0.04%、内、税金406円)受け取った利息はわずか1597円。かつて、10年物の定期を預けて満期に受け取った額が当初の2倍くらいになったのを覚えているから、《何だこりゃ?》である。

 コロナを機に、追加予算が増え続け、国家予算の不足分(歳入-歳出)をほとんど国債(国の借金証書)の発行でまかなっている。その累積額は、なんと2023年度末で1000兆円を超えると言われている。(この額はGDP(国民総生産)の2倍を優に超える金額!)国民の所得を全て税金に回しても、返済に2年以上かかる額の借金を政府は抱えているということである。

                            [GDP]:国内総生産
                                【 赤字間増える分、国債の発行が増える 】


 一般の金利を上げたら、国債の利率も当然上がる(上げざるを得ない)ことになるので、利払いに充てる国債費が増えるということになる。(この本のP65に『財務省の試算では、金利が1%上がると3年後に国債費が3.6兆円増える』と書かれている。)

 という具合に、一部のポイントだけを挙げると上のようになるが、濃密で専門用語の多い本文からこれらの事を拾い上げ理解するには苦労する。(自分の経済学の知識のなさにもよるが

 いずれにしても、今この国は
      《人口が減り》 《国民総生産はドイツに抜かれ4位になり(一人あたりではなんと31位で)》 《労働時間はヨーロッパより300時間も多く
      《物価は上がり続け》 《貿易収支は赤字続きで》 《国債(国の借金)は増え続け》 《福祉予算は削られ》 《軍事費だけが増大する》という事態で、
      誰もが希望を持てない状態になりかけている。

 この国の経済と国民の生活が大変だ!という事実には変わりなく、今の国の制度とそれを操っている大企業と、その献金で操られている政府を変えない限りどうしようもないというのが現実である。
 まずは、『企業献金』を止めさせ、『政治資金規正法』を抜本的に変えないといけない、ということである。

 最後に一つ、
  消費税は最悪の税制である。仮に、

    手取り20万円の人が10万円の消費をして1万円の消費税を取られ
    手取り20万円の人が8万円の食料を買って6400円の消費税を払い  合計 20万円から18万円の支出と 16400円の消費税

    手取り10億円の人が10万円の消費をして1万円の消費税を納める
    手取り10億円の人が8万円の食料を買って6400円の消費税を納める 合計 10億円から18万円の支出と 16400円の消費税

    手取り20万円以下の人がどれだけいるか! 収入に対し16400円の重みを考えると貧乏人ほど過酷な税と分かる。
    金持ちでも、1ヶ月で1000万円を消費しようと思ったら大変である。

  所得1億円の人が1万円払うことと、手取りが月10万円の人が1万円の税を払うことが、平等とは誰も思わないだろう。
  それが、どんな不公平な税制であるか、誰でもわかることだ。

 1年間に、こうして集められる消費税の額は、2023年度で72兆円を超えるという。
 消費税が社会保障費に充てられるというのは、真っ赤な嘘である(お金に色は付いていない!)
 その分、消費税を導入されてから、法人税が減免され、その分を充当されているのが資料を見れば見て取れる。

     

 そんな恩恵を感じている大企業から献金してもらっている議員や政府に、どうしてまともな政治が期待できるだろうか。
 今度の選挙で、そうした議員を一人でも多く落とさなければならない。


   〇         〇          〇

 この本は読んでみれば、政治・経済全般にわたる、最新情報をふんだんに盛り込んだ内容の濃いものである。資料・グラフも適切で役に立つ。ただ経済分野に関しては読みこなすのに骨がおれる。

 経済学については、もう少しひも解いてから、また続きを書くことにしよう。

 

 
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