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『ナチス、偽りの楽園』-世界を欺くためのプロパガンダ用《模範捕虜収容所》の実体を描いた記録映画

2011-08-20 23:12:03 | 最近見た映画


    【 2011年8月17日 】 京都みなみ会館

 アウシュビッツとは別の、もう1つの捕虜収容所の、一人のユダヤ系ドイツ人の俳優であり映画監督もした数奇な運命と重ね合わせ、その実態を暴いた記録映画である。

 その収容所の名前を『テレージエンシュタット』といい、チェコの北部の片田舎にあったらしい。『アウシュビッツ』のほか、『ビルケナウ強制収容所』とか『クラクフ・ゲットー』とかは聞いたことがあるが、『テレ-ジエンシュタット』というのは初めて聞いたように思う。
 
 以前、兵舎だったところという話だが、アウシュビッツなどの『絶滅収容所』とは様相が異なる。


     
           【テレージエンシュタット】


 緑の多い敷地に小奇麗な建物が並び、花も飾られている。ここには多くの芸術家が収容され、定期的に音楽界や演劇・映画も上演されていたという。
 しかしこれは、まやかしであった。収容所でユダヤ人が虐待されているという世界の批判をかわすための見せかけの《楽園》だった。


          
                【クルト・ゲロン】


 ユダヤ系ドイツ人の『クルト・ゲロン』が、その才能からショウビジネスに台頭するころに話がさかのぼる。映画『嘆きの天使』(地位ある大学教授が、ひとりの娼婦の虜になり、身を破滅させていく、ものすごく悲惨な映画である。その娼婦役を演じているのが《世紀の女優》で、ナチを嫌いアメリカに渡った『マレーネ・ディートリッヒ』が演じている。)に出演したことで更に、名が売れ、その後映画監督も始める。

 ナチが台頭し、政権を取ってもゲロンは映画制作に夢中で、世の中の動きには無頓着だった。ユダヤ系の文化人や芸術家、有力な人々が驚異の迫るなか、アメリカなどに逃れていったのに対し、亡命の機会も何度かあったのに、その機会を逃して、仕事の機会も奪われフランスやオランダ等を転々とするなか、ついに捕らわれて、ここ『テレージエンシュタット』に連れてこられる。

 そこでは、それまでの才能を見込まれ、収容所内では慰安のための「キャバレー」などの運営をまかされ活路を見いだすが、所詮収容所内のことである。



                          




 ゲロンは所長より、プロパガンダ-《ナチの収容所は清潔で文化的な環境におかれており、収容者はそこで自由で快適な生活をしている》という、現実とは全く違う宣伝》-のための映画を作るように命じられる。その直前に行われた赤十字の査察団も、無難に切り抜けたナチ指導部は、映画によりさらに全世界を欺こうとしていた。

 ゲロンは悩むが引き受けるしかない。制作がすすみ、何ヶ月か後撮影が終了すると、ゲロンら収容者の大半が、直後に『アウシュビッツ』に移送され即刻ガス室に送られる。

 ナチ親衛隊司令官のハインリヒ・ヒムラーがガス室の永久閉鎖の指示を出したのは、ゲロンが処刑された翌日という。



     ○     ○     ○

 
 ナチスの非人間性を暴いた映画を数多く見てきた。『野獣たちのバラード』、『アウシュビッツの女囚たち』-今は画像がなかなか手に入らない貴重な映画。『ふたりのトスカーナ』、『パティニョールおじさん』、『赤い鼻の先のピエロ』、『ソフィーの選択』、『シンドラーのリスト』、『コルチャック先生』、『ぼくの神様』。『独裁者』と『サンドイッチの年」』も忘れてはいけない。
 みな印象に強く残っている。



 また一つ、『忘れてはならない映画』のリストに1つ加わった。



                
       
『ナチス-偽りの楽園』-公式サイト


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