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EBMについて

2016-06-08 | 勉強会

 4          EBMについて

 

(1)EBMの定義

 今まで述べてきたように、望ましい医療技術評価の実施のためには医療技術評価とそれに基づいた「正しい医療技術」による医療の実践、つまりEBMが必要である。EBMという概念を医療現場に普及させるとともに、臨床医がEBMを実践するための環境整備を進める必要がある。

 EBMは次の3要素を統合するものと考えられる。

利用可能な最善の科学的根拠

患者の価値観及び期待

臨床的な専門技能

 即ち、EBMとは、「診ている患者の臨床上の疑問点に関して、医師が関連文献等を検索し、それを批判的に吟味した上で患者への適用の妥当性を評価し、さらに患者の価値観や意向を考慮した上で臨床的判断を下し、専門技能を活用して医療を行うこと」と定義できる実践的手法である。

 

(2)EBMの実践手順

 EBMの実際の手順は次の5段階に分かれる。即ち、

目の前の患者に関して臨床上の疑問点を抽出する、

疑問点に関する文献を検索する、

得られた文献の妥当性を自分自身で評価する、

文献の結果を目の前の患者に適用する、

自らの医療を評価する、

ことである。(具体的な手順に関しては省略させていただきます。)

 これら5段階の手順を意識的に行って、はじめてEBMが実践されていることになる。

 

エビデンスレベル

 

水準根拠の種類

Ⅰa 無作為化対照比較試験のメタアナリシスから得られた根拠

Ⅰb 少なくとも1つの、無作為化対照試験から得られた根拠

Ⅱa 少なくとも1つの、無作為化はしていないがよい対照比較研究から得られた根拠

Ⅱb 少なくとも1つの、よくデザインされたその他の準実験的研究からの根拠

Ⅲ比較研究、相関研究、症例対照研究といったよくデザインされた非実験的記述研究からの根拠

Ⅳ専門委員会、代表的権威者の意見や臨床経験からの根拠

 

医学文献のEBM的読み方

 

(1)治療法についての文献

1)ランダム化比較がなされているか

2)盲検法であるか

3)drop outは少ないか

4)intention to treat analysisが使用されているか

5)baseline riskは両群で大きな差はないか

6)十分なサンプル数でおこなわれているか

7)臨床的outcomeで評価されているか

8)統計学的有意差検定はおこなわれているか

9)臨床的な現実(日本の日本人)において有用か

10)重篤な副作用は少ないか

 

(2)診断検査法についての文献

1)gold standardの検査と盲検的に比較がなされているか

2)症例群の母集団は適切か

3)症例群のほとんどにgold standardの検査がなされているか

4)テスト特性(感度、特要度)は算出されているか

5)テストの再現性は十分か

6)医療経済的にみて可能か

7)正常値の定義は正しくおこなわれているか

8)臨床的な現実において有用か

 

(3)予後や危険因子についての文献

1)症例群のコホートは疾病の早期の時期に登録されているか

2)十分な期間で十分な観察がおこなわれているか

3)客観的な結果を盲検的に比較されているか

4)他の関連する危険因子について調節されているか

5)他の独立した症例群validation cohortでも確認されているか

 

 (4) スクリーニングについての文献

1)mortalityについてのランダム化比較がなされているか

2)length biasやlead time biasはないか

3)pseudo-disease biasはないか

4)cost effectivenessは評価されているか

5)incidenceの異なる症例群でも確認されているか

 

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