2009年1月20日、今朝の朝日新聞の第1面トップ記事は、「コンビニ百貨店抜く」であった。
そして、”全国のコンビニエンスストアーの年間売り上げが2008年、初めて百貨店を抜いた。百貨店は高額品の売上が激減した一方、コンビには「たばこ特需」に加えて、割安なプライベートブランド(PB)商品で、主婦層や高齢者の需要も掴んだ。コンビニ登場から約40年、消費者志向は大きく変化している。”・・・とある。
私は、すでに現役を引退しているが、長年、流通業に携わってきた。
流通業とは、流通(りゅうつう)を業とするものを言うが、簡単に言えば、商品を消費者まで届ける各産業、つまり、商社や問屋などの卸売業、運送業、倉庫業、小売業などをいうが、マーケティングの世界では通常小売業をさして使われる場合が多い。(因みに、この流通と言う言葉は、もとは仏教で経典や教えを広めていく「流通分(るずう、るづう・ぶん)」を意味していたが、それが転用されるようになったそうだ。)
私が、初めて仕事に付いた昭和30年代初頭、小売業で企業らしいものといえば、都市部に存在していた百貨店くらいのもので、後は、商店街に多数存在する中小零細な小売店が殆どであった。
しかし、その頃、アメリカで目覚しい成長を遂げていたチェーンストアーの科学的管理法を学んだダイエーなどが日本でもスーパーマーケットなどを展開し始めるが、当時は、このようなスーパーなど世間では、「スーと出てきてパーと消える」・・などと言って蔑視していた。現に当時大阪の総合商社の営業部門にいた私は、それらの企業の信用力を興信所などを通じて調べたことがあるが、当時の信用力はまだ非常に低かったのを覚えている。
しかし、その後、これらのスーパーマーケットなどを展開するチェーンストアー業界は目覚しい成長を遂げるが、1974年(昭和49)年に、旧百貨店法の対象を拡大する形で、施行された大規模小売店舗法(略称「大店法」)により、出店が制約され事業展開に苦労をするようになる。本来、この法律は、「消費者の利益の保護に配慮しつつ、大規模小売店舗の事業活動を調整することにより、その周辺の中小小売業者の事業活動の機会を適正に保護し、小売業の正常な発展を図ることを目的」としたものではあったのであるが、法が実施されると実際には、中小零細商業者で構成される商店街の出店反対を根拠に一種の既得権を与えることや、又、すでに出店していた既存大型店についてもライバル店の出店を阻止しうることに利用されるなどにより、日本での大型店の正常な企業活動を規制するものとなっっていた。このように法律の目的とは逆の消費者利益の保護ではなく、既得権益者が保護される形での小売業活動が長い間続いていたのである。
その後、流通の国際化とともに、主としてアメリカから「大店法は海外資本による大規模小売店舗の出店を妨げる非関税障壁の一種である」という批判と市場開放を求める圧力が強まり、こうした外圧に対応する形で「大店法」の規制緩和が進められることとなる。特に重要な分岐点となったのは、1990年頃の日米貿易交渉におけるトイザらス進出をめぐる議論である。これによって規制緩和措置に関する改正省令・通達が施行さ、1994(平成 6)年には大店法も規制が大きく緩和され、郊外への大型店出店が加速することとなった。
そしてとうとう、これらのチェーンストアー業界がそれまで、日本の流通・・・小売業界の王座を守ってきた全国百貨店売上高を抜く時代が来たのはそう古い話ではない。だが、これらの大型チェーンストアー等の郊外への出店ラッシュにより、地方都市や郡部では既存の商店街がシャッター街化するケースも増加しているのは事実である。
確かに、私の住んでいる町の商店街や市場なども閉店しているところが多くなっており、その中には、私の中学時代の同期の人の店もあり、お気の毒には思うのではあるが、流通業に携わってきた私たちの目から見れば、廃業の原因は、大型店の出店による要因が大きいことは分かるのだが、実際に今でもなんとか頑張って存在している商店を見ていても、その店で買いたいと思う商品がないのである。・・・つまり、消費者の本当に希望する商品の品揃えや価格設定が出来ていないことから、大型店が出店を機会に客が離れているのである。現に、小さな店であっても個性のある店舗については、消費者に見放されることもなく今でも支持されている。
売上は消費者がその店を指示しているバロメーターであり、売れていないところは、消費者にとって買うものがない、そこで買うだけのメリットがないから売れていないと言えるだろう。今まで、日本には世界でも類を見ないほど数多くの店舗が存在していたが、それらの店は、戦後の何もない時代、ただ、物さえおいて置けば売れた時代の商売をそのまま継続しており、何の改革もしてこなかったから売れなくなってきたのである。俗に老舗と言われる店などは、古くからの伝統は守りながらもその時代時代に適応してきているからこそ存続していると言って良い。そのように、時代時代に適応した商売をしているところは、小さいからといってもダメになっているわけではない。それは、たとえ、大型店であっても、その時代について行けないところは、消滅していく運命にあるということだろう。現に、チェーンストアー業界のトップを走っていたダイエーが事実上倒産し今は商社の丸紅およびライバルであったイオン(元ジャスコグループ)の傘下に入り再建中である。
そして遂に、町の中で小さな店舗を運営しているコンビニエンスの業界が百貨店の売り上を抜く時代が来た。つまり、新しく、1つの歴史が塗り替えれれる時代が来たと言うことだろう。
少子高齢化で市場が縮小しているにもかかわらず、未だに、品ぞろえをテナントまかせにしている百貨店が多い中、POS(販売時点情報管理)システムにより、消費者の望む売れ筋商品を適格に捉えているスーパーやコンビニ業界に消費者の人気が集まるのは当然だろう。
私は、今、ある大手の食品スーパーの株式を少しだけ持っているが、そのスーパーの株価はサブプライムローン問題以降若干下がりはしているものの、損はしていないし、株主優待制度があり、決算ごとに10%引の株主優待のお買い物券を貰っている。今日は、そのスーパーの5%引きの日なのでお買い物券を使用すると15%引きになる。しかもその会社には、自社開発商品のプライベートブランドに、安くて良い物が多くある。普通でもお買い得な商品が15%も安く買える。今日は、家人と2人でリュックを背負ってそれらのお買い得品をまとめ買いしてきた。
(画像は、今朝の朝日新聞より「百貨店、コンビニ、スーパーの売上と既存店前年比の推移」)
参考:
流通 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%81%E9%80%9A
マーケティング - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0
大規模小売店舗立地法 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E8%A6%8F%E6%A8%A1%E5%B0%8F%E5%A3%B2%E5%BA%97%E8%88%97%E7%AB%8B%E5%9C%B0%E6%B3%95
科学的管理法 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A7%91%E5%AD%A6%E7%9A%84%E7%AE%A1%E7%90%86%E6%B3%95
大規模小売店舗法 - 教えて!goo
http://oshiete1.goo.ne.jp/qa1985255.html
大阪明浄大学>附属図書館>紀要>大阪明浄大学紀要開学記念特別号>大規模小売店舗法廃止とその歴史的意義:
http://www.meijo.ac.jp/library/no.0KunioTsukimoto.pdf
規制緩和と地域経済
http://66.102.1.104/scholar?hl=ja&lr=lang_ja&q=cache:trxakRroWt8J:dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/handle/2065/9880+1994%E5%B9%B4%E3%80%80%E8%A6%8F%E5%88%B6%E7%B7%A9%E5%92%8C%E6%8E%AA%E7%BD%AE
そして、”全国のコンビニエンスストアーの年間売り上げが2008年、初めて百貨店を抜いた。百貨店は高額品の売上が激減した一方、コンビには「たばこ特需」に加えて、割安なプライベートブランド(PB)商品で、主婦層や高齢者の需要も掴んだ。コンビニ登場から約40年、消費者志向は大きく変化している。”・・・とある。
私は、すでに現役を引退しているが、長年、流通業に携わってきた。
流通業とは、流通(りゅうつう)を業とするものを言うが、簡単に言えば、商品を消費者まで届ける各産業、つまり、商社や問屋などの卸売業、運送業、倉庫業、小売業などをいうが、マーケティングの世界では通常小売業をさして使われる場合が多い。(因みに、この流通と言う言葉は、もとは仏教で経典や教えを広めていく「流通分(るずう、るづう・ぶん)」を意味していたが、それが転用されるようになったそうだ。)
私が、初めて仕事に付いた昭和30年代初頭、小売業で企業らしいものといえば、都市部に存在していた百貨店くらいのもので、後は、商店街に多数存在する中小零細な小売店が殆どであった。
しかし、その頃、アメリカで目覚しい成長を遂げていたチェーンストアーの科学的管理法を学んだダイエーなどが日本でもスーパーマーケットなどを展開し始めるが、当時は、このようなスーパーなど世間では、「スーと出てきてパーと消える」・・などと言って蔑視していた。現に当時大阪の総合商社の営業部門にいた私は、それらの企業の信用力を興信所などを通じて調べたことがあるが、当時の信用力はまだ非常に低かったのを覚えている。
しかし、その後、これらのスーパーマーケットなどを展開するチェーンストアー業界は目覚しい成長を遂げるが、1974年(昭和49)年に、旧百貨店法の対象を拡大する形で、施行された大規模小売店舗法(略称「大店法」)により、出店が制約され事業展開に苦労をするようになる。本来、この法律は、「消費者の利益の保護に配慮しつつ、大規模小売店舗の事業活動を調整することにより、その周辺の中小小売業者の事業活動の機会を適正に保護し、小売業の正常な発展を図ることを目的」としたものではあったのであるが、法が実施されると実際には、中小零細商業者で構成される商店街の出店反対を根拠に一種の既得権を与えることや、又、すでに出店していた既存大型店についてもライバル店の出店を阻止しうることに利用されるなどにより、日本での大型店の正常な企業活動を規制するものとなっっていた。このように法律の目的とは逆の消費者利益の保護ではなく、既得権益者が保護される形での小売業活動が長い間続いていたのである。
その後、流通の国際化とともに、主としてアメリカから「大店法は海外資本による大規模小売店舗の出店を妨げる非関税障壁の一種である」という批判と市場開放を求める圧力が強まり、こうした外圧に対応する形で「大店法」の規制緩和が進められることとなる。特に重要な分岐点となったのは、1990年頃の日米貿易交渉におけるトイザらス進出をめぐる議論である。これによって規制緩和措置に関する改正省令・通達が施行さ、1994(平成 6)年には大店法も規制が大きく緩和され、郊外への大型店出店が加速することとなった。
そしてとうとう、これらのチェーンストアー業界がそれまで、日本の流通・・・小売業界の王座を守ってきた全国百貨店売上高を抜く時代が来たのはそう古い話ではない。だが、これらの大型チェーンストアー等の郊外への出店ラッシュにより、地方都市や郡部では既存の商店街がシャッター街化するケースも増加しているのは事実である。
確かに、私の住んでいる町の商店街や市場なども閉店しているところが多くなっており、その中には、私の中学時代の同期の人の店もあり、お気の毒には思うのではあるが、流通業に携わってきた私たちの目から見れば、廃業の原因は、大型店の出店による要因が大きいことは分かるのだが、実際に今でもなんとか頑張って存在している商店を見ていても、その店で買いたいと思う商品がないのである。・・・つまり、消費者の本当に希望する商品の品揃えや価格設定が出来ていないことから、大型店が出店を機会に客が離れているのである。現に、小さな店であっても個性のある店舗については、消費者に見放されることもなく今でも支持されている。
売上は消費者がその店を指示しているバロメーターであり、売れていないところは、消費者にとって買うものがない、そこで買うだけのメリットがないから売れていないと言えるだろう。今まで、日本には世界でも類を見ないほど数多くの店舗が存在していたが、それらの店は、戦後の何もない時代、ただ、物さえおいて置けば売れた時代の商売をそのまま継続しており、何の改革もしてこなかったから売れなくなってきたのである。俗に老舗と言われる店などは、古くからの伝統は守りながらもその時代時代に適応してきているからこそ存続していると言って良い。そのように、時代時代に適応した商売をしているところは、小さいからといってもダメになっているわけではない。それは、たとえ、大型店であっても、その時代について行けないところは、消滅していく運命にあるということだろう。現に、チェーンストアー業界のトップを走っていたダイエーが事実上倒産し今は商社の丸紅およびライバルであったイオン(元ジャスコグループ)の傘下に入り再建中である。
そして遂に、町の中で小さな店舗を運営しているコンビニエンスの業界が百貨店の売り上を抜く時代が来た。つまり、新しく、1つの歴史が塗り替えれれる時代が来たと言うことだろう。
少子高齢化で市場が縮小しているにもかかわらず、未だに、品ぞろえをテナントまかせにしている百貨店が多い中、POS(販売時点情報管理)システムにより、消費者の望む売れ筋商品を適格に捉えているスーパーやコンビニ業界に消費者の人気が集まるのは当然だろう。
私は、今、ある大手の食品スーパーの株式を少しだけ持っているが、そのスーパーの株価はサブプライムローン問題以降若干下がりはしているものの、損はしていないし、株主優待制度があり、決算ごとに10%引の株主優待のお買い物券を貰っている。今日は、そのスーパーの5%引きの日なのでお買い物券を使用すると15%引きになる。しかもその会社には、自社開発商品のプライベートブランドに、安くて良い物が多くある。普通でもお買い得な商品が15%も安く買える。今日は、家人と2人でリュックを背負ってそれらのお買い得品をまとめ買いしてきた。
(画像は、今朝の朝日新聞より「百貨店、コンビニ、スーパーの売上と既存店前年比の推移」)
参考:
流通 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%81%E9%80%9A
マーケティング - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0
大規模小売店舗立地法 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E8%A6%8F%E6%A8%A1%E5%B0%8F%E5%A3%B2%E5%BA%97%E8%88%97%E7%AB%8B%E5%9C%B0%E6%B3%95
科学的管理法 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A7%91%E5%AD%A6%E7%9A%84%E7%AE%A1%E7%90%86%E6%B3%95
大規模小売店舗法 - 教えて!goo
http://oshiete1.goo.ne.jp/qa1985255.html
大阪明浄大学>附属図書館>紀要>大阪明浄大学紀要開学記念特別号>大規模小売店舗法廃止とその歴史的意義:
http://www.meijo.ac.jp/library/no.0KunioTsukimoto.pdf
規制緩和と地域経済
http://66.102.1.104/scholar?hl=ja&lr=lang_ja&q=cache:trxakRroWt8J:dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/handle/2065/9880+1994%E5%B9%B4%E3%80%80%E8%A6%8F%E5%88%B6%E7%B7%A9%E5%92%8C%E6%8E%AA%E7%BD%AE