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一日一書 203 初恋 4

2013-09-27 22:15:13 | 一日一書

 

島崎藤村「初恋」第四連

 

 

ここで、「初恋」の全文を。

 

まだあげ初(そ)めし前髪の

林檎のもとに見えしとき

前にさしたる花櫛(はなぐし)の

花ある君と思ひけり

 

やさしく白き手をのべて

林檎をわれにあたへしは

薄紅(うすくれない)の秋の実に

人こひ初めしはじめなり

 

わがこゝろなきためいきの

その髪の毛にかかるとき

たのしき恋の盃(さかずき)を

君が情(なさけ)に酌(く)みしかな

 

林檎畠の樹(こ)の下(した)に

おのづからなる細道は

誰(た)が踏みそめしかたみぞと

問ひたまうこそこひしけれ

 

 

島崎藤村の詩集「若菜集」の代表作であり

古くから愛唱されてきた詩です。

今、改めて読んでみると

詩も時代の子であることが実感されます。

今の時代には、誰もこのような詩は書けないでしょう。

 

でも、この詩の持つ、とれたての林檎のような

初々しく新鮮な香りと味わいは

今でも、十分に感じ取ることができます。

これが詩というものの持つ神秘的な力なのでしょう。

 

 


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