九月の冗談クラブバンド・監督 長崎俊一
半紙
かずら筆
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今活躍中の映画監督でもっとも好きなのは誰? と聞かれたら、
迷うことなく長崎俊一と答える。
ぼくは、若い頃の8ミリ映画の回顧上映会にも参加したことがある。
長崎俊一は、栄光学園卒業生の映画監督第1号なのだ。
その映画のどれを選ぶかは迷うところだが、
やはり「九月の冗談クラブバンド」(1982)こそを取り上げるべきだろう。
今では、見る人も少ない映画かもしれないが(DVDはまだ入手可能)、
映画の中の暴走族の暴走シーンの撮影中に事故が起き、
監督自身がその事故に巻き込まれ重傷を負ってしまった。
映画の完成も危ぶまれたが、
奇跡的に回復した監督によって完成したのだった。
まさに命をかけてつくった映画だ。
今はなきATG映画で、
長崎監督の初の35ミリ映画である。
まだほとんど無名だった内藤剛志が、とんがった若者を演じている。
この長崎俊一と栄光学園で同期だった保坂和志も、
高校時代長崎と映画作りに関わったことを折に触れて語っている。
長崎、保坂の二人は、栄光学園にとっては宝石のような存在なのだ。