三好達治
「Enface finie(アンファンス フィニ)」より
25×40cm
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詩の全部は以下の通り。
Enface finie
海の遠くに島が……、雨に椿の花が堕ちた。鳥籠に春が、春が鳥のいない鳥籠に。
約束はみんな壊れたね。
海には雲が、ね、雲には地球が映つてゐるね。
空には階段があるね。
今日記憶の旗が落ちて、大きな川のやうに、私は人と訣(わか)れよう。床(ゆか)に私の足跡が、
足跡に微かな塵が……ああ哀れな私よ。
僕は、さあ僕よ、僕は遠い旅に出ようね。
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題名はフランス語ですが、「幼年時代の終わり」とでもいうことでしょうか。
結局、「約束」というものは、
どこかで「みんな壊れる」ものだなあと、しみじみ思います。
何を約束したかも忘れたけど。