名取里美
青空をあつめてひらく梅の花
半紙
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名取里美さんの、最新句集「森の螢」より。
「森の螢」は、Kindle版が発売になりました。是非、お買い求めください。
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この句は、芭蕉の「五月雨をあつめて早し最上川」を思い起こさせます。
そらから無限に降ってくる雨をすべて「あつめて」流れる最上川は、自然の雄大さそのものですが、
この句は、無限の青空を「あつめて」梅の花がひらくと言っています。
その「青空」と「梅の花」の極端な対比が、「雄大さ」以上の「神秘」を感じさせます。
染織家志村ふくみさんのエッセイに、
桜の花の色は、木の幹をいっせいに流れる色素が花に集まってくるのだというようなことが書かれていました。
桜の花びら一枚一枚は、その木全体から流れてくる色素の最後の表出だということでしょう。
花は、単体として、個々の花がそれぞれ勝手に咲くのではなく、
自然の一部として、その全エネルギーを「あつめて」咲くのだ。
そう考えると、この句のもつ神秘性と限りなく豊かな世界に、あらためて驚くのです。