真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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ウクライナの戦争の背景と格差問題

2022年04月02日 | 国際・政治

 3月31日付朝日新聞で、また、気になる記事を見つけました。”賃金「年齢よりも職務で」”という記事です。年齢が上がるにしたがって給料の増える「年功序列型賃金」ではなく、職務に応じて賃金を決める「ジョブ型雇用」にしようという動きがあるというのです。私は、これは間違いなく、中間層をさらに衰退させ、格差の拡大をもたらす「働き方改革」であると思います。
 私は、小泉内閣の「働き方の構造改革」を思い出しました。竹中平蔵氏がメディアに盛んに登場し、「働き方の構造改革」を主張していたのです。そして、「新しい時代にふさわしい働き方が求められているのです」とか「いろいろな働き方ができるようにするのです」などといって、働き方の構造改革を強引に進めたのです。もちろん、いろいろな働き方ができるということを歓迎した人もいたと思いますが、その「改革」の結果、派遣労働者その他、非正規の労働者が増え、格差の拡大につながっていったように思います。
 働く人たちを、景気の状況に合わせて自由に切り捨てることのできる体制になったと言ってもいいと思います。景気のいいときには、正社員を派遣労働者や期間労働者などの非正規労働者に置き換えて儲け、景気が悪化したら切り捨てる、この大企業の非人間的な対応を、簡単にできるようにする仕組を作ったのが、小泉内閣の「働き方の構造改革」であった、と私は思っています。

 そして今、大手企業は、「ジョブ型雇用」の制度を取り入れ始めているようですが、それが、前稿で取り上げたマルクスの「きわめて勤勉な労働者層の飢えと苦しみと、資本制的蓄積にもとづく富者の粗野または上品な贅沢的消費との内的関連は、経済的諸法則を認識することによってのみ暴露される」という指摘に当たるものだと思います。
 資本主義体制のもとでの生産は、労働者が生産過程で創出する剰余価値(利潤として現れる)を、資本家が搾取し、それによって社会的生産力を高めるため、資本家は、労働者に支払う賃金を最小化し、剰余価値を増大させる労働時間の延長労働強度の増大過度の労働労働生産性の発展を意図するのですが、それが、労働者の隷属状態を作り出し、また、”すべての労働者を窮乏化させるよう作用する”ということです。
 したがって、世界的に格差が拡大しているということは、マルクスが指摘したように、労働者の窮乏化によって、資本主義体制が行き詰まってきていることを示しているのだと思います。
 労働者の団体が”企業経営者の皆さまは、私たち労働組合の大切なパートナーです。なぜなら、私たち働くものにとって雇用や労働条件、安心できる生活は、企業の成長や発展がなければ実現しません。企業経営者の皆さまにも自社の業績アップが一番だと思います。 生産性をあげることはパートナーとして共通のテーマです。そのためには労使協調を築きあげ、労使一丸となることが早道です”(日本労働組合総連合会福井県連合会ホームページ)などというようなかたちで、経営者(資本家)側にすり寄っていく現在、マルクスのいう資本主義体制の根本的打破である「革命」など起こりようがなく、したがって、資本主義体制は、自滅の道を進んでいると言ってもよいのではないかと思います。

 国際間の取り引きが日増しに増大する現代、格差の拡大は一国でできるものではありません。国際社会が、自滅を免れるために一致して対応しなければならない重要課題だと思います。
 でも、現実はそうした方向に進む気配がほとんどなく、経営者(資本家)や経営者(資本家)と一体となった政治家が、より多くの剰余価値を得るために、様々な工夫をしつつ東奔西走しているのだと思います。
 ノルドストリーム2によるロシアのヨーロッパに対するエネルギー供給をはじめとする影響力の拡大が、アメリカの利益や影響力を損なうため、アメリカは黙視出来ず、動いた結果が、NATO(北大西洋条約機構)東方拡大の問題と絡み合って、ウクライナで爆発するに至ったという今回の戦争の背景を見落としてはならないと思います。

 私は、そうした背景を見ようとしない人たちが、バイデン大統領と同じように、プーチン大統領を「虐殺者」、「真の悪党」「戦争犯罪人」「人殺しの独裁者」などと信じ、ロシアを屈服させるために、ウクライナ軍を支援する方向に進んでいるように思います。ロシア政府は、厳しい制裁を課したアメリカ、イギリス、欧州連合(EU)加盟国、カナダ、オーストラリア、シンガポール、台湾および日本などを「非友好国」と指定しましたが、指定された国々は、ウクライナの戦争終結ではなく、ロシアを屈服させるために、アメリカと一体となってウクライナの戦争を支え、拡大させる道を選んだということだ、と私は思います。

 私は、国家間の対立を、戦争によって決着させようとするこうした考え方は野蛮であり、終わりにすべきだと思います。もはやそういう時代ではないと思います。核兵器の使用による人類の破滅も考えられる時代ですし、戦争ではなく、環境破壊や気候変動その他による、人類の終焉も語られる時代です。一致して、話し合いで解決すべき問題だと思います。
 
 ロシアのウクライナ侵攻前、バイデン米大統領は「ロシアによる “ウクライナ侵攻”は、2月16日だろう」などと予言していましたが、なぜそれを止めるための話し合いを呼びかけなかったのでしょうか。また、「ロシアのウクライナ侵攻は、北京冬季オリンピックの閉幕式(20日)前のいつでも起こり得る」などとも言っていました。そして、現実にウクライナ駐在の大使館を撤収し、職員たちを退避させたりもしたようですが、どうしてウクライナの人たちのために、何が何でも侵攻を止めようと努力しなかったのでしょうか。なぜ軍人を周辺のNATO諸国に送ったりしたのでしょうか。

 日本は、アメリカとの同盟関係を強化する方向に進んでいるようですが、それは、進む方向が逆だと思います。軍事同盟などは、縮小したり、無くしたりする方向に進まなければいけないと思います。
 アメリカを中心とするNATO諸国も、徐々に加盟国を増やして、ロシアを脅えさせてきたのではないかと思います。それが、ウクライナの加盟問題で爆発に至ったのではないかと思います。進む方向が逆だと思います。
 ロシア非難決議で棄権した中国に対するアメリカの対応も敵対的であり、気になっています。台湾に要人を派遣し、台湾の関係者との話し合いを進めているようですが、私は、中国との考え方の違いは、経済制裁などではなく、国際機関とともに、直接、中国と話し合いをすべきではないかと思います。

 先日、ウクライナに関するテレビの報道で、「プーチンの手口」などという表示があるのを見て思い出しました。アメリカの共和党は、2020年の米大統領選で、バイデン氏の息子、ハンター・バイデン氏が、ウクライナ企業役員として高額の報酬を受け取っていた疑惑を追及したのです。日本のメディアも取り上げていました。
 また最近、ロシアが、ウクライナ国内での生物兵器開発に、バイデン大統領の息子ハンター・バイデン氏が関わっていたことを示す書簡が見つかったと発表したのです。ハンター氏が、生物兵器関連施設への資金提供で重要な役割を果たしていたというのです。もちろん、その真偽は、私にはわかりません。きちんと検証すべき問題だと思います。でも、もしそれが事実なら、それは、ロシアのウクライナ侵攻を挑発する「バイデンの手口」とも言えるものであると思ったのです。

 さらに溯れば、リビア内戦の際、当時のヒラリー・クリントン国務長官が、大量の武器をリビアの反政府勢力に密売したとして、問題視されたことがありました。詳細はわかりませんが、アメリカは、反米的な国家に対しては、反政府勢力に武器を売ったり、供与したり、直接軍事介入したりして反米政権を倒しにかかった前歴があるということです。アメリカによる、そうした反政府組織に対する武器の売却や供与や軍事支援について、プーチン大統領は、ウクライナ侵攻直前の演説で指摘しています。
 そういうこともあって、私は、ロシア軍がウクライナ侵攻に至る経緯の詳細を知りたいと思います。どんなやり取りがあったのか、また、ロシアはどんな情報や考えに基づいて侵攻を決断したのか。

 また、アメリカ政府が台湾に要人を派遣し、何を話し合っているのか。

 朝日新聞の「あすを探る」というコーナーに、三浦まり氏の文章があり、私は、適確な指摘であると思いました。一部を抜萃します。
冷戦後のグローバル経済の伸展は富と権力の極端なまでの集中を許し、持たざる者を追い込んだ。民主主義国家では民主主義の後退や右翼ポピュリズムの伸張を、権威主義国家では武力行使を伴う国際秩序への挑戦の誘因をもたらした。このように考えれば、ウクライナの人道危機は、私たちが道徳的に破綻した経済システムに生きていることをまざまざと見せつけるものだといえる。劣勢が明らかになりつつあるロシア軍を前に、民主主義の勝利と捉える向きもあるが、どのような帰結を迎えるにせよ、グローバルな格差問題に有効に対処しない限りは、安定的な秩序は作り出せないだろう。つまりは、迂遠なようでいて、環境に配慮し、ジェンダー差別を撤廃し、格差を是正することが、実は平和に資することになる。
 折しも岸田政権にて「新しい資本主義」が議論されはじめた。有識者メンバー15人のうち7人が女性であることは歓迎したいが、非正規雇用などの当事者の声が十分届くのかは不明だ。グレーテス氏が語ったような大胆なクオーター制度、ケア経済への投資、公正な税制、家父長制を終わらせるための権力の平等な配分が、具体的な構想に盛り込まれなければ看板倒れになる。日本経済の立て直しだけではなく、世界平和の観点から新しい資本主義のあり方を追求することこそが求められている。
 私は、この考え方で、世界規模の話合いをしなければいけないように思います。どの問題も、日本だけでは解決が難しい問題ばかりだと思うのです。

 ウクライナの戦争は、まさに、”道徳的に破綻した経済システム”のもたらしたものだ、と私も思います。
 だから、プーチン大統領を「戦争犯罪人」とか「人殺しの独裁者」などと呼んで、ロシアを屈服させようとしても、それは、ウクライナの被害を大きくするだけで、根本的問題は解決しないと思います。また、ウクライナの戦争を「ヒトラーに重なるプーチンの野望」によるものであるとか、「プーチンのねらいは崩壊したソビエト帝国の復活」であるというような根拠の明確でないとらえ方で、ウクライナ軍を支援することは、平穏な生活をしたいと願うウクライナの人たちの思いに反するものであるとも思います。

 ウクライナの戦争が、”道徳的に破綻した経済システム”のなせるわざであるという側面を自覚しなければいけないと思うのです。そうでなければ、ウクライナとアメリカやNATO諸国が、たとえプーチンを倒しても、何も解決しないと思います。野蛮な争いを引き起こす”道徳的に破綻した経済システム”を、国際的な話し合いで改めることが必要だと思います。
 
 日本は、アメリカに追随し、ロシアのウクライナ侵攻を非難するだけ終わりしないでほしいと思います。ロシアのウクライナ侵攻を非難すると同時に、国際機関の了解なく、他国に武器を売却したり、供与したり、軍事介入したりすることを禁じるなど、戦争や内乱による被害の拡大を防ぐための提言などもしてほしいと思います。

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