さまざまなメディアが、国連の安全保障理事会で18日、パレスチナの国連加盟を求める決議案に、アメリカが拒否権を行使したことを伝えています。
パレスチナはこれまで、国連に投票権のない「オブザーバー国家」として参加していましたが、今月2日に正式加盟を申請していたのです。それは、パレスチナのガザ地区やヨルダン川西岸地区でイスラエルの違法な人権侵害や入植活動が長く続いているのみならず、今、激しい武力攻撃を受けているので、国連に正式加盟して、一日も早くパレスチナ国家としてイスラエルと共存する「ニ国家解決」を実現したいということだと思います。
また、国連安保理の中東情勢に関する閣僚級会合でも、パレスチナは、国連への正式加盟について「我々の地域に平和をもたらすための重要な柱となる」と訴え、加盟を求める決議案への賛成を呼びかけたということです。
これに対し、イスラエルの国連大使は、「パレスチナ自治政府は平和とは正反対の存在だ」と主張したとのことですが、それは、ネタニヤフ政権の「ハマス殲滅作戦」が、実は、「パレスチナ人殲滅作戦」であり、「パレスチナ人追放作戦」であることがわかると思います。ネタニヤフ政権は、パレスチナの地をイスラエルの地に変え、パレスチナ人の混在しないイスラエルにしたいのだろうと思います
そして、パレスチナの、国連加盟を求める決議案に拒否権を発動したアメリカのバイデン政権も、ネタニヤフ政権との間に溝があるかのように装いつつ、ほんとうはネタニヤフ政権と一体であることもわかると思います。
上川外相は、16日、イスラエルによるイラン大使館爆撃やイランのイスラエルに対する報復攻撃を受けて、それぞれの外相との電話会談で、双方に自制を求めたというのですが、イランに対しては、イスラエルのイラン大使館爆撃の時とは違い、「強く非難」をしたということを見逃してはならないと思います。会談は、日本側から呼びかけたということで、自主的な会談であったかのように受け止められていますが、実は、バイデン政権の戦略に基づく会談だった、と私は思います。お手伝い外交だったと思うのです。
朝日新聞は、この件に関し、”上川氏、イランの報復攻撃非難、G7対応「二重基準」の指摘も”と題する記事を掲載しました。下記は、その前半部分です。
”イランが在シリアの大使館への空爆の報復として、イスラエルへの直接攻撃に踏み切った中東情勢をめぐり、日本はイランとの「伝統的な友好関係」を生かした独自外交を描き切れずにいる。イスラエル寄りの米国と共同歩調を取り、主要七カ国(G7)メンバー国としてイランだけを非難する立場をとる日本についても、識者からは「ダブルスタンダード(二重基準)と見られかねない」との指摘が出ている。・・・”
この記事にも私は問題があると思うのですが、それは、朝日新聞自身の主張が、何もないことです。識者は、二重基準を指摘しているというだけなのです。
イランは、外交施設へのイスラエルの攻撃は国際法違反として報復攻撃に踏み切ったのに、G7は、その報復攻撃を強く非難する一方、イスラエルによるイラン大使館爆撃や報復に対する報復は非難しないで、イスラエルに連帯を表明しました。それは、人道に反する攻撃を続けるイスラエルを支え、イスラエルの戦争犯罪に加担するものだと思います。欧州連合も臨時の首脳会議を開き、イスラエルへの報復攻撃に踏み切ったイランへの制裁拡大を決定したということなので、同じ姿勢なのだと思います。
だから、日米欧の首脳からは、イスラエルに批判的な言葉はいろいろ聞こえてきますが、こうした具体的な取り組みが、その言葉を否定していると思います。
言い換えれば、イスラエルやイスラエルに連帯を表明したG7諸国、イランに対する制裁を決定したEUなどの首脳は、パレスチナの問題を話し合って解決しようとすることなく、イスラエルの「パレスチナ人殲滅・追放作戦」という武力的解決を支持しているということだと思います。そして、それがアメリカの戦略であることは、歴史が示していることだと思います。
これまでアメリカは、世界中の戦争や紛争に介入してきました。そして、その介入の仕方は、いつも同じであったと思います。親米国家や親米組織は支援し、反米国家や反米組織は潰しにかかるということです。問題を、話し合いで解決しようとはしてこなかったともいえます。反米国家や反米組織を潰すためには、自ら「テロ組織」と指定した組織さえ利用してきたのです。それで思い出すのが、アフガニスタンの戦争です。
アフガニスタンでは、1978年に「サウル革命」と呼ばれるクーデターで、共産主義政権が樹立されました。しかしながら、その共産主義政権は、アフガニスタンにおける旧体制の改革の諸問題、民族や部族間の諸問題、周辺諸国との関係の問題、宗教問題などで、混乱が続き安定することがなかったのです。特に、ムジャーヒディーンと呼ばれるイスラム反政府武装勢力との関係は深刻な問題だったといいます。 ムジャーヒディーンは、アミーン政権に対する抵抗運動を展開し、各地でゲリラ戦を繰り広げたため、国内の治安は急速に悪化することになったのです。だから、 1979年、大統領に就任したハフィーズッラー・アミーンは、窮地に陥り、ソ連へ介入を依頼したようですが、ソ連も、アミーン政権の崩壊とムジャーヒディーンの台頭を恐れていたので、介入を決め、アフガニスタンに侵攻したのです。
問題は、その時に対ソ政策として、アメリカが、ゲリラ戦をくり広げていたムジャーヒディーンに武器や装備を供与し、支援しということです。そして、アメリカによるムジャヒディーンへの支援が、アルカイダのようないわゆる「過激派組織」の台頭をもたらしたと言われていることです。アルカイダの指導者、オサマ・ビンラディンは、ソ連のアフガニスタン侵攻(1979-1989)に抵抗したムジャヒディーンの一員で、彼はアラブ諸国から義勇兵を募り、資金調達を行う組織を設立して、ソ連軍に対する抵抗運動を支えていたのです。
ムジャヒディンに対する武器や資金の提供をはじめとする計画の立案・実行を主導したのは、CIA の特殊活動部 (SAD)で、SADは、CIAの中でも秘密工作活動の、特に重要な役割を担う部門だといいます。ソ連のアフガニスタン侵攻開始後、SADはムジャヒディンへの支援活動に深く関与し、武器や資金の提供、訓練、情報収集などを行ったと聞いています。だから、その計画には「サイクロン作戦」というコードネームがついていたといわれています。
また、見逃してはならないことは、ソ連軍の侵攻前から、アフガニスタン民主共和国政権とも戦闘を行っていたイスラム武装勢力への支援を、アメリカは強力に推進しており、数十億ドルもの資金を投入してたということです。さらに、それは「ソ連の軍事介入を誘発すること」が目的であったとも言われているのです。冷戦のさなかであったことを考えれば、簡単に否定できることではないと思いますし、ウクライナ戦争でも似たような作戦が展開されたのだおると思います。
だから、アメリカの対外政策や外交政策は、いつも 親米国家や親米組織は支援し、反米国家や反米組織は潰しにかかるものであったといいたいのです。アメリカは、国際社会の戦争や紛争を、話し合いで解決しようとはしない国であるということです。
先日、国連安保理は、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)について公開会合を開いたようですが、イスラエルは多くの理事国の主張を退け、UNRWAはイスラム組織ハマスの一部と主張したといいます。でも、その一方的な主張をするイスラエルを支援するアメリカのバイデン政権とイスラエルの関係を、正しく認識する必要があると思います。
パレスチナの地に移住してきたユダヤ人が、パレスチナの地に「イスラエル」というユダヤ人国家を建国し、パレスチナの地から、パレスチナ人を追放しようとしている現実は、きわめて理不尽なことだと思いますが、それを止めることができないのは、アメリカが主導する西側諸国の対外政策や外交政策が、法や道義・道徳に基づいておらず、軍事力や経済力に依拠しているからだと思います。
そして、それは、アメリカの政策決定におけるユダヤロビーをはじめとするユダヤ人諸団体のの影響力の結果であると思います。
正確な数字はわかりませんが、現在、アメリカには、イスラエルとそれほど変わらないユダヤ人が住んでいるといいます。そして、アメリカ・イスラエル公共問題委員会(AIPAC)やアメリカユダヤ人連合会(AJC)その他を組織し、ロビイング活動、政治キャンペーンへの支援、有権者教育などを行っているといいます。特に、アメリカ・イスラエル公共問題委員会(AIPAC)は、毎年多くのロビイストをワシントンD.C.に送り込み、議員や政府職員と会談しているのです。また、ユダヤ系ロビー団体は、シンクタンクやメディアを通じて世論に大きな影響を与えているともいわれています。
また、富裕層の多いユダヤロビーは、政治献金においても、大きな力を持っており、ユダヤ系献金者は連邦候補者と政党行動委員会に多額の寄付するともいわれています。
昔、ユダヤ人は「ジュー」(英語で「Jew」)と呼ばれて蔑まれたということですが、それは、ユダヤ人がキリスト教徒が忌み嫌う金融業や貿易を中心とする商業で、成功を収めていたことに由来するといいます。今も、ユダヤ人には、富裕層が多く、大きな政治的影響力を発揮するのは、そういう歴史があるからだろうと思います。
だから、バイデン政権は、決してイスラエルを突き放すことはないと思います。突き放せば、自らの政権が崩壊することになるのだと思います。
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