真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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CIAの「国家転覆の手引書」

2023年07月30日 | 国際・政治

 アメリカの中央情報局( Central Intelligence Agency、略称:CIA)については、多くの研究者や学者、ジャーナリストなどが、さまざまな事件に関し、関わりのある元CIA諜報員や秘密工作員、また、その他関係者の証言を得、さらに、あらゆる種類の公文書を基にして、その犯罪行為や不法行為を明らかにしてきたと思います。だから、CIAに関わる著作物は少なくありません。
 それらを踏まえれば、CIAの関係者が裁かれるべきことは、多々あったと思います。また、CIAの存在そのものが問われるようなことも少なくなかったと思います。
 にもかかわらず、CIAやアメリカ政府は、それらを一貫して黙殺してきました。
 そして、CIAは今も厳然として存在し、活動を続けています。先日、バーンズ長官が、中国の 習近平国家主席が「2027年までに台湾侵攻の準備を整えるよう軍に命じたことを指すインテリジェンスを把握している」などと語ったことが報道されました。でも、どこから得た情報なのかが不明で、本当かどうか怪し気です。だから私は、対立を煽るための虚言ではないかと疑わざるを得ません。
 そうした流れの中で、下記のような報道がなされました。
Biden OKs $345 Million for Taiwan Defense as Chinese Embassy Urges US Not to Escalate Tensions.
 バイデン大統領が、台湾の防衛に345万ドルを費やすことに合意したという内容ですが、それは中国にとっては、「挑発」にほかならないと思います。だから、中国が”緊張を高めるものだ”と非難するのは当然だと思います。

 下記は、「CIA」斎藤彰(講談社現代新書)からの抜粋ですが、CIAは、90ページに及ぶ「国家転覆の手引書」を作成しており、それに基づいて他国の内政に干渉し、政権転覆にも手を染めてきたということです。見逃すことのできない重大な指摘です。

 私は、「国家転覆の手引書」にある”大衆集会に、ナイフやカミソリ、チェンソーなどをもったアジテーターを潜り込ませておき、警備当局を挑発し、警備隊が市民に襲いかかってきたら、一斉にデモ参加者を蜂起させる”などという内容は、2014年のウクライナの政権転覆、すなわちユーロマイダン革命でも、実践されたのではないかと思います。
 Kla.tv(https://www.kla.tv/21962)などが報じた暴力的なデモの様子は、そのことを示していたと思います。

 ”ヤヌコビッチ政権によって、平和的なデモが暴力的に潰されようとしている”という西側メディアのプロパガンダと正反対の実態が、Kla.tvによって明らかにされているのです。そして、”ナイフやカミソリ、チェンソーなどをもったアジテーター”に代わって、ウクライナでは、CIAは、銃を持ったアジテーターやスナイパーを潜り込ませ、発砲させているのです。「平和的なデモ」が、聞いて呆れます。 


 そして、私はそこに、かつて他国を植民地支配し、今もいろいろなかたちで搾取や収奪を続けるG7など西側諸国の政治家やメディアの傲慢さを感じます。特に、G7を主導するアメリカの、反ロ・反中の姿勢は病的であり、国際社会で、法や道義・道徳が通用しないのは、アメリカのそうした姿勢が主な原因だ、と私は思います。アメリカは、覇権や利益の維持を、法や道義・道徳より優先し、敵対する国や集団に対しては、簡単に武力を行使してきたと思います。
 だから、CIAの犯罪行為や不法行為が黙認され続け、アメリカが、自らの覇権や利益の喪失を理性的に受け入れることができなければ、台湾有事が現実のものとなり、世界はさらに壊滅的な争いに突入することになるのではないかと心配しています。
 かつて日本軍は、現実を客観的に把握し、それをもとに軌道修正するということができず、敗戦まで突き進みました。今、アメリカが、似たような状況にあるのではないかと思います。もはやアメリカの一極体制は崩れつつあり、今までと同じような政策では、復活は難しいと思います。
 局面を打開するための話し合いが必要だと思います。だから、アメリカに盲従せず、日本は中国やロシアとの関係改善に尽力するべきだと思うのですが・・・。 
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                          4 スパイ工作

                        4 ダーティー・ワーク復活

 ニカラグアへの介入
 CIAの海外支局員(工作員)は、任地国での各種情報収集のほかに、その国で政府干渉、政権転覆工作にも乗り出すことがある。こうした”ダーティー・ワーク”(汚れた仕事)は、もちろん、NATOや日本のような西側先進同盟諸国では無縁と言っていいだろうが、開発途上国とりわけ中南米諸国では、今日も続けられている。
 CIAの”ダーティー・ワーク”の具体例は、ニカラグアに見ることができる。
 ニカラグアのサンディニスタ革命政権に対する干渉の口火を切ったのは、意外にも、CIA機構の合理化や、対外秘密工作活動の規制に取り組んできたカーター民主党政権である。
 79年7月、ソモサ親米軍事政権が倒れ、代わって左翼ゲリラ組織サンディニスタ政権が誕生した当初、カーター大統領は「民主主義の勝利」として、革命政権樹立を歓迎し、半年足らずの間に、「民生安定化」という目標のために、旧ソモサ体制にアメリカが行った過去十年分以上の規模に相当する経済援助を行った。ホワイトハウスや国務省当局者たちは、サンディニスタ政権が、一時的には急進的な社会主義路線をとるとしても、時間がたてば、民衆の幅広い支持の下に、安定した民主体制を確立するものと期待していた。
 だが、実際にフタを開けてみると、人民裁判、食糧配給制、秘密警察、言論弾圧、強制収容など、アメリカ型理想主義とはああまりにかけ離れた強権、抑圧政治であり、米政府としても、ソ連型社会主義が、キューバの支援の下に中米にジワジワと広がることに強い懸念を抱くに至った。
 そして、カーター大統領は、1979年12月に、米議会に対し、サンディニスタ政権に干渉するための秘密工作活動を開始した旨、通告した。秘密工作活動の狙いは、新政権内部の反対勢力を支援して撹乱し、最後は準軍事的な行動ができるような”環境づくり”に乗り出すことにあった。
 しかし、アメリカの干渉が強まるほど、国内的な弾圧、締めつけがひどくなり、このために1980年までに何万人という難民が国外に逃れたり、地下に潜って右派ゲリラ活動を開始した。アメリカはアルゼンチンとともに、反革命グループ「コントラ」の支援に乗り出した。「コントラ」の人数は、ホンジュラスとコスタリカ両国を合わせ、3000人とふくれ上がってきた。

 国家転覆のマニュアル
 そうした状況下で、CIAの手で作成されたのが、反政府軍用の「国家転覆の手引書」(90ページ)である。同手引書は1984年10月、AP通信など、一部のマスコミの手に渡って暴露され、米議会でも、大論議の的になった。
 その中身は、政権を混乱に陥れるための心理作戦ガイドブックだが、政府要人暗殺をも示唆するような、きわどい部分が少なくなく、レーガン大統領も世論を気にして、ケーシーCIA長官に対し、CIAがニカラグアで不穏当な行使をしていないかどうか、実態調査するよう指示したほどだった。

AP通信によると、心理作戦には、たとえば以下のようなものが含まれている。
〇抑圧されている一般市民をテコ入れし、判事、警察、治安当局者たちを攻撃目標にした反乱行為へと駆り立てる。

〇各市町村の軍事施設や警察署を破壊したり、電話、放送などの通信手段を攪乱するゲリラ作戦を同時多発的に展開し、中立的あるいは比較的無抵抗な市町村は、ゲリラ部隊で占領する。

〇サンディニスタ政権の姿執政官たちや軍人を誘拐し、一般大衆集会で糾弾する。

〇武装宣伝隊をいくつも組織し、各種の宣伝活動を通じて、政府の弱点や恥部を暴露し、反政府デマ攻勢をかける。たとえば、ビジネスマンや農民に対しては、サンディニスタ政権は商業、農業活動をさまざまな形で形で規制し、抑圧しつつあるので、利潤はほとんど期待できず、酷税で締めつけられる」といった宣伝を流し、教師、僧侶、大学生などの知識階層に対しては「著作活動の検閲が徹底的に行われる」と不安をあおる。

〇ゲリラと武装宣伝活動をニカラグア全土に拡大できれば、サンディニスタ政権の基盤を揺るがすことができる。

〇大衆集会に、ナイフやカミソリ、チェンソーなどをもったアジテーターを潜り込ませておき、警備当局を挑発し、警備隊が市民に襲いかかってきたら、一斉にデモ参加者を蜂起させる。

 中米では許される汚い仕事
 外国政府要人の暗殺については、カーター政権当時に、はっきり禁止されたはずなのに、その後、作成された手引書は、「弾圧を加える政府高官、裁判官、警察官などを選択的暴力の使用によって”中和”しても構わない」と、要人を暗殺したり、危害を加えることを教唆している点が、米議会でとくに問題になった。
 このため、ホワイトハウスのスピークス副報道官は「これまで政治的暗殺を米政府が容認したことはなく、今後も容認しない」との声明をわざわざ出し。CIAスキャンダルの火消しつとめた。ま
 た、問題の手引書は、CIAの現地ニカラグア関係者らが作成したものであり、大統領はもとより、国務、国防両長官、ケーシーCIA長官などの承認も何も得ていなかった、といわれている。
 とはいえ、出先のCIA工作員がこうした時代に逆行するような作戦を常に念頭においていたことは確かであり、それは言い換えればダーティー・ワークの伝統を持つ、CIA秘密作戦部(DDO)の最近のムードをある程度反映したものとみることができるだろう。
CIAは、手引書の存在が発覚する以前の同年2月、ニカラグアを経済封鎖するため、同国港湾に機雷を敷設する隠密作戦の指導まで行っている。
 一歩間違えば、第二のベトナムになりかねない。このような政府干渉をなぜアメリカはやろうとしているのだろうか。
 それはアメリカ人にしか分からない、裏庭のゴタゴタに対する一種独特の懸念からきている。フロリダ半島のすぐ目と鼻の先に、共産主義国キューバがあり、しかも、そのキューバはニカラグア・サンディニスタ政権を軍事、経済、政治面で積極支援している。このまま放置しておくと。ニカラグアと国境を接するホンジュラス、コスタリカ、エルサルバドルにも共産革命が転移し、あげくの果てはグアテマラ、メキシコまでがドミノ式にソ連勢力圏の中に取り込まれることになる──といった不安感なのだ。
 最初はきれいごとを言っていたカーター民主党政権までがニカラグアをターゲットにしたCIAの秘密工作活動を許可したこと自体、アメリカには、こと中米に関するかぎり。超党派的な共産主義アレルギーが存在していることの証左である。
 もちろん、いくら共産主義浸透阻止という名目があっても、外国政府要人暗殺は、米国世論も支持しない。しかし、同じ中米の小国グレナダに米軍が侵攻し、社会主義政権を踏みつぶした強硬策に対し、米国民の圧倒的多数が熱烈拍手を送ったことでもわかるように、いざとなれば、少々汚い秘密工作作戦を、今後もCIAが行うことは十分に予想される。

 途上国では有効
 前述したように、CIAの秘密工作活動は、本来、冷戦時代の遺物である。今日、その遺物の部分が、依然としてCIA内部で主流をなしていることは、いかにも時代錯誤と言うべきである。
 そしてアメリカの専門家や議員の間では、CIAは情報収集のみに徹し、秘密工作活動の部門は、切り落とすべきだとする改革案が検討されている。
 たしかに、公開情報が氾濫し、写真偵察や通信傍受技術などが目覚ましい進歩を遂げた今日、秘密工作活動の果たす役割は小さくなる一方である。
 だが、アメリカは中米のように自国の死活的利益が関わっている地域においては、単なる情報収集だけでは満足できず、手口の汚い秘密工作活動をも今後もやめないだろう。
 やめない理由は、二つある。第一に、中米のような途上国では公開情報がほとんどなく。新聞も左右どちらかに偏ったものが多いため信用できず、また。通信傍受したところで、費用対効果の面から有益なものが少ないことが挙げられる。
 第二に、秘密工作活動には、必ず金銭がからむが、途上国では買収工作に対する役人や軍人の感覚はマヒしてしまっている場合が多いことなどから、作戦の効果が、具体的な形で、しかも短期間のうちに期待できるからである。
 そうした有利な環境に乗じて、ソ連KGBが暗躍しているのを横目に見ながら、CIAが何もしないでいるとは考えにくい。
 ニカラグアの「国家転覆の手引書」は、CIA内部に大きな衝撃をもたらし、こうした危険な手引書の作成を放置していた担当部局のスタッフ数人が、減俸処分を受けた。しかし、ニカラグアの今後の情勢展開次第では、CIAはかなりきわどい工作までいとわないだろう。

 


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