真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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米国覇権の衰退に比例して貧困化し、戦争に向かう日本の悲劇

2023年09月29日 | 国際・政治

 先日、米宇宙軍トップが来日し、「日米宇宙軍」の創設を明らかにしたという報道がありました。米宇宙軍は、宇宙監視や統合作戦で自衛隊との連携や、日本の準天頂衛星システムとの協力も進めていくとのことです。宇宙領域でも、中国やロシア、北朝鮮を敵視する日米一体化の政策が進み、国際平和は遠のくばかりだ、と私は思いました。
 そして、そうした日米一体化の政策のために、日本の国民が額に汗して働き納めた税金が、惜しげもなく使われるのだろうと想像しました。

 私はアメリカが、どのようにして圧倒的な軍事力と経済力を持つに至ったのか、また、今世界はどのようの方向に動いているのかを理解することが、アメリカの覇権が衰退しつつある今、とても大事なことだと思います。
 だから私は、アメリカの対外政策や外交政策の問題を、いろいろな学者や研究者の著書をもとに、考えるようにしています。
 今回は、「混迷するベネズエラ 21世紀ラテンアメリカの政治・社会状況」住田育法・牛島万(明石書店)から「第四章 ベネズエラ、何が真実か?」のなかの「2、グアイドー暫定大統領の正当性」を抜萃しました。プロパガンダに影響されず、アメリカという国を正しく理解するのに役立つ文章だと思います。

 以前に取り上げましたが、世界的な言語学者で哲学者のノーム・チョムスキーは、アメリカは「世界一のならずもの国家」であると言いました。また、「アメリカ自身がテロ国家の親玉」だとも言いました。
 私は、それを、世界的な言語学者で哲学者のノーム・チョムスキーが言ったからということではなく、彼が確認した事実や、下記のような文章で、間違っていないと確信するのです。
 
 下記の抜粋文で明らかにされているように、2018年12月に、ベネズエラで国民議会議長に選出された反体制派グアイドー氏は、正当に選出されたチャベスマドゥロなどを大統領とする反米左翼政権を顚覆するために、くり返しクーデターを画策しました。それを支えたのが、アメリカであることを見逃してはならないと思います。
 そういう意味では、ロシアの特別軍事作戦(ウクライナ侵攻)を受けて、即座に「国民総動員令」に署名し、18歳から60歳の男性市民の出国を全面的に禁止しするとともに、希望者全員に武器を提供する方針を示したゼレンスキー大統領も、独裁者か、それに類する人物だろう、と私は思っています。
 ゼレンスキー大統領が民主的な大統領親であれば、ロシア派政党の結成を禁止する法案に署名したり、ロシア国籍を持つウクライナ人の国籍を剥奪したり、正統派ウクライナ正教会の信者の権利を侵害したり、今年10月の議会選挙や来年3月の大統領選挙の計画を無視したりはしないだろうと思うのです。 

 アメリカは、ウクライナやベネズエラと同じように、数え切れない国々の内政に干渉し、反米政権の顚覆を支援したり、独裁者と手を結び、搾取や収奪をくり返して、圧倒的な軍事力と経済力を持つに至ったのだ、と私は思っています。

 だから、そうしたアメリカの内政干渉や軍事介入から免れるために、中南米で2011年に、ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)が生まれたのだと思います。加盟国がアメリカ合衆国とカナダを除くアメリカ大陸33カ国であることが、それを示していると思います。
 メキシコ先住民が組織するサパティスタ民族解放軍の指導者が発した 「もう、たくさんだ!」という言葉が、象徴的です。

 さらに、アフリカでは、2001年にアフリカ連合(African Union: AU)が設立され、2002年7月に正式に発足しています。アフリカ大陸に位置する55の加盟国からなる大陸連合であるのみならず、「アフリカ合衆国」に発展する可能性を秘めているということも見逃せないと思います。
 覇権国家アメリカを中心とする西側諸国の切り崩しがあるでしょうから、「アフリカ合衆国」の実現は、簡単な話ではないと思いますが、欧米の支配や内政干渉・軍事介入に対抗しようとするアフリカ諸国の動きとして、注目に値すると思います。
 現在の日本は、完全にアメリカの影響下にあるために、そうした現実やウクライナ戦争の客観的報道が、ほとんどないと思います。だから、SNSでは、くり返し
”ロシアはウクライナ侵攻しなければ北海道を攻めてきたと言われております。北海道を攻められないのは日米安保があるからです。なので、日本にとってアメリカはありがたい存在だと思います。
とか、ウクライナ戦争に関して、 
ロシアが侵略をやめ、占領している土地から撤退したら戦争はすぐに終わる。至ってシンプル”などというような主張が、投稿されるのだと思います。
 アメリカという国のことが、何もわかっていないと言わざるを得ないと思います。
 下記をじっくり読んで、アメリカこそが「世界一のならずもの国家」であり、武力衝突をもたらしているということを、知ってほしいと思うのです。 
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                   第四章 ベネズエラ、何が真実か?

                   2、グアイドー暫定大統領の正当性

(1) 無法なグアイドー議長の大統領自己宣言
 2019年1月5日、輪番制で野党が支配する国会議長に大衆意志党(Voluntad Popular)のファン・グアイドーが選出されると、グアイドー氏は、「軍部の支持があるならばマドゥロ氏に代わり臨時大統領に就任し、その後に自由選挙を実施する用意がある」と表明し、米国とリマ・グループの要望に呼応する発言を行った。グアイドー議長は、1月23日、突然、野党の集会で、「(憲法)第333条及び350条に基づく責任を私は果たす、非暴力を約束する、(マドゥロによる)権限侵害を止めさせるため、ベネズエラの使命を与えられた大統領として国家行政権を正式に掌握することを誓う」と宣言した。しかし、この二つの条文は、憲法擁護の精神を述べたもので、大統領を宣言する理由は書いてない。グアイドー議長の宣言の直後、ポンペオ米国務長官は、「米国は憲法第233条に基づき(絶対的欠缺=不存在)就任したグアイドー新臨時大統領を承認する」と述べた。実は、グアイドー議長は、同日ボルトン(John Bolton)補佐官に、米時間9時25分、メディア時間午前10時25分、ベネズエラ時間午前10時25分に電話し、暫定大統領宣言の文言を相談していたのである(Bolton 2000:256)。
 確かに、憲法の内容からすれば、マドゥロ大統領の不存在を問うことには無理がある。しかも、同じ野党の社会主義運動党のフェリーべ・ムヒカ(Felipe Mujika)議長[GV 2019a]、エンリケ・カブリーレス正義第一党の指導者(El Nuevo Heraid 2019)も、自己宣言に反対しており、23日にグアイドー議長が暫定大統領を宣言するとは知らなかったと証言している。

 (2)大統領自己宣言を演出したトランプ政権
 実際は、前夜の22日、ペンス副大統領がグアイドーに電話し、大統領を宣言するなら支持すると約束していたのである。これは、数週間前から、米国政府上層部、同盟国、国会議員、ベネズエラの野党と極秘に進められた計画によるものであったと、その後『ウォール・ストリート・ジャーナル』は報道している[WSJ 2019]。同氏の自己大統領宣言は、国会の決定自体が無効とされている国会でも、事前の承認を得ておらず、街頭で行ったものであり、無法で、正当性は疑わしいものである。実際、19年1月21日~2月2日に行われたインテルラセス社による世論調査によると、マドゥロ氏を合法的と見る人々は57%。グアイドー氏を正当と認めるのは32%、回答なしが11%であった[GV 2019]。 

(3) 人道的支援の自己演出
 グアイドー氏が、2019年1月に自己大統領宣言を無法に行った後、2月23日早朝、グアイドー氏は反政府派を組織し、「人道支援物資」をコロンビア領からベネズエラ領に強硬搬入を行おうとした。政府側は、支援物資は国際赤十字あるいは政府間の合意により秩序ある形で受け取るとして、それに反対した。するとグアイドー氏は、支援物資を積載した三台のトラックをベネズエラ領に搬入しようとしたが、ベネズエラの国家警備隊に拒まれ入国できず、一台が炎上し、ベネズエラメディアの国家警備隊の仕業と見えるように仕組んだ。グアイドー氏は、支援物資っを積載したトラックの炎上は、国家警備隊が行ったものであり、マドゥロ政権が、国民の困窮に背を向けていることを示していると国際世論に訴え、国際メディアもそのように異口同音に報道した。しかし、その後、3月10日、『ニューヨーク・タイムズ』紙は、炎上させたのは実は反政府グループの行為であることを暴露した。

 (4) 今度はクーデターで政権奪取をねう
 4月30日になると、早朝、首都カラカスで野党の大衆意志党を中心とする過激派により、クーデター未遂事件が発生した。このクーデターは、二ヶ月前から米国国務省筋の首謀のもとに「自由作戦」という名前で計画され、レオポルド・ロペス(Leopold Lopez)、グアイドーなどの反政府派により実行された。これらの勢力は、フィゲーラ(Figuera) 内務省司法諜報局長官、モレーノ(Moreno)最高裁長官、パンドリーノ(Padrino)国軍司令官を調略して、マドゥロ大統領を放逐しようとした。フィゲーラは調略に陥り、レオポルド・ロペス大衆意志党党首を自宅軟禁から脱出させ、ロペスとグアイドーが、一部の国家警備隊、国防軍、国家諜報組織に呼びかけ、それに呼応して重機関銃で武装した数十人が蜂起した。ロペス党首とグアイドー議長は、30日早朝から再三再四、軍隊と市民にクーデターに加わるように呼び掛けたが、軍も市民もそれに反応しなかった。結局、同日午後7時頃にはクーデター実行者は、政府の反撃を受けて散発的に撤退し、クーデターは失敗した。
 このクーデターの準備に当たって、米国政府、反政府派は、執拗にモレーノ最高裁長官の離反を図り、同長官が、16年1月以来活動が無効とされ、19年1月に無効が再確認されていた国会を合法化して、それによりグワイドー氏の大統領就任を合法化しようと画策したことが判明している(WP、2019)。このことは、グアイドー氏の暫定大統領自己宣言が、合法的ではなかったことを、グアイドー派自身が認めたものである。

 (5) 再度クーデター起こすも失敗
 しかし、グアイドー一派は、2018年5月の大統領選挙後からマドゥロ政権打倒の計画を練っており、19年4月30日の「自由作戦」クーデター計画の失敗後、さらに、20年6月、チリのセバスティアン・ピネェーラ(Sebastian Pinera)政府、コロンビアのイバン・ドゥーケ(Ivan Duque)政府、米国のボルトン大統領補佐官の支援を受けて、6月23日~24日にクーデターを実行する手はずであった。しかし、ベネズエラ政府は、これを察知しており、クーデター計画に関与した7名の治安当局関係者のうち、6名を事前に逮捕し、クーデターは未遂に終わった。[DW 2019]。クーデターは、①マドゥロ大統領、ディオスタード・カベージョ(Adios Cabello)制憲議会議長及びフレディ・ベルナル(Freddy Bernal)タチラ州担当保護官を拘束し殺害する、②レベロル(Reverol)内務司法大臣を拘束し、首都の軍の基地を占拠する。③ゴンザレス・ロペス(Gonzalez Lopez)ボリーバル国家諜報局(Sebin)長官を拘束し、2009年から、セビン(国家諜報機関)に拘束されているラウル・バドゥエル(Raul Baduel)大将を解放し、大統領として宣誓させることを目的としていた。これらの攻撃には、イスラエル、米国、コロンビアの戦闘員も参加することになっていた。(EFE France 24、2019)。

(6) 国会議長に再選されず
 2020年1月5日、国会の新指導部が憲法第194条に従い、選出された。与野党の国会議員167人のうち、151名が出席(定足数は三分の二の112人)。出席野党議員の中には、マドゥロ政権と熾烈な言論戦を戦わせている、スターリン・ゴンサーレス(Stalin Gonzalez 新時代党Un Nuvo Tiempo)、ラモス・アジュップ(Ramos Allup、民主行動党)、ファン・パブロ・グアニバ(Juan Pablo Guanipa、正義第一党)などの有力な野党指導者もいた。グアイドー議長は、国会で再任されないと思っていたのか、欠席した。新指導部として、国会議長ルイス・パーラ(Luis Parra 正義第一党)。第一副議長フランクリン。ドゥアルテ(Franklyn Duarte キリスト教民主党)、第二副議長ホセ・グレゴリオ・ノリエガ(Jose Gregorio Noriega、大衆意志党)、書記ネガル・モラレス(Negal Morales 民主行動党 Aoccion Democratica)、副書記アレクシス・ビベネス(Alexis Vivenes 大衆意志党)が選出された。主要野党がすべて網羅されていた。投票では81人が賛成し、(そのうち野党議員は30人)、規程の過半数76名を越えており、適法的新指導部が選出された。
 新国会議長が選出されたことを知った米国務省のマイケル・コザック(Michael Kozak)西半球局次官補代行は、すぐさま、「国会の開催は、定足数不足で、偽物であり、グアイドー氏は引き続きベネズエラの暫定大統領である」とツイートした。このコザック発言に勢いづいて、グアイドー氏は午後5時半から保守系新聞『エル・ナショナル』紙の建物内で国会を開催し、100名が出席し、グアイドー(大衆意志党)を議長に、ファン・パブロ・グアニバ(正義第一党)を第一副議長に、カルロス・エドゥアルド・ベリスベイティア(Carlos Eduardo Berrizbeitia、ベネズエラ計画党 Proyecdto Venezuela)を第二副議長に選出した。[Eu 2020]。しかし、この「国会」は国会議場外で開催され、定数も満たしておらず、グアイドー氏の新議長選出は無効である。即ち、1月5日以降グアイドー氏は、国会議員で元国会議長である。従って、暫定大統領の資格ももちろんない。その後、ベネズエラの主要紙は、中道右派も含めて、グアイドー氏を議員と呼び、暫定大統領とは呼んでいない。

 (7) 再びクーデター起こすも失敗
 また2020年5月には、コロナ対策で非常事態宣言がなされている中、「ギデオン計画」でマドゥロ拉致未遂事件が勃発した。この事件は、2019年4月30日のクーデターが失敗して、大衆意志党の党主レオポルド・ロペスが、より確実にマドゥロ政権を転覆する方法として、同年10月から、グアイドーを実行責任者として、トランプ政権とも密接な関係がある、米国の警備会社シルバーコープ社と契約して、マドゥロ大統領を拉致し、米国に連行しようと計画した事件であった[WSJ 2020]。
 シルバーコープ社は、トランプ大統領の集会でも警備を請け負っており、トランプ政権と関係が深い。逮捕されたリューク・デンマン(Luke Denman)の自白によれば、ジョーダン・グドロー(Jordan Goudreau)に計画の指令を与えたのはトランプ大統領であった[BBC 2020]。
 3月23日、クリベル・アルカラ(Cliver Alcala、アメリカ麻薬取締局DEAの要因)が秘密裏にベネズエラに搬送する予定の大量の武器が、計画を知らないコロンビア警察の末端組織により公道で押収された。そのため23~25日に計画されていた「ギデオン作戦」は不可能となり、延期された。すると、3月26日、米司法省はマドゥロ大統領及び政権高官ら14人を麻薬テロや麻薬密輸の罪で起訴した。バー(William Barr)司法長官は声明で、マドゥロ氏の身柄拘束につながる情報提供には、最大1500万ドルの報奨金を提供することも明らかにした。
 同日、クリベル・アルカラは、マドゥロ暗殺計画は事実で、グアイドーが関与していると明らかにし[TS 2020]、この情報をベネズエラ政府は入手した。

 (8) 憲法違反、刑法違反を繰り返したグアイドー氏
 このようにグアイドー氏は、この二年間に三度のクーデターに関与し、一度の騒擾事件を引き起こし、二度にわたる国会無視の行動をとっている。これらの行動は、憲法の遵守を規定した、憲法第一条、第七条に、また大統領の権限の簒奪により大統領の絶対的不在を規定した憲法第233条、最高裁の権限を規定した第336条に違反しており、さらに国家反逆罪として刑法第四条にも違反していることが、ベネズエラの法学者により指摘されている。大統領として、決して正統性がないことは明らかである[Sputnik 2019]。
 ダータ・アナリシスのレオン(Leon)社長は、19年3月には国民の63%がグアイドー氏により政府を変えることは可能と考えていたが、20年5月現在では、それは20%になっているという。
 2020年7月21日、ベネズエラの中道保守の新聞『グロボビシオン』(Globovision)が、Dtanakisisという保守系の調査会社の調査結果を「グアイドーの人気地に落ちる」と題して、報道しているし、2020年6月、トランプ大統領はグアイドーのあまりの不人気に、グアイドー氏がベネズエラの正当なリーダーであるか、疑問を持っていると述べている[Axios、2020]。


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