真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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台湾有事を望んでいるのは誰か

2022年09月01日 | 国際・政治

 「台湾の悲劇 世界の行方を左右する台湾」(総合法令)の著者正木義也氏によると、アメリカのトルーマン大統領は、1950年初頭に、台湾について下記のような三つの重大な政策を発表しています。
一、アメリカは台湾人の軍事基地設置を希望しない
二、中国情勢の干渉にアメリカ軍隊を使わない
三、国民党に軍事援助しない
 この政策は、中台問題、すなわち中国(中華人民共和国)と台湾(中華民国)との問題を、この時期のアメリカは、国内問題ととらえていたことを示していると思います。
 しかし、朝鮮戦争が勃発すると、トルーマン大統領は、「今や共産勢力が、地下運動に頼る段階を終え、武力侵略および戦争を実行するに至った」と述べて、南北朝鮮の内戦に軍事介入するとともに、台湾海峡への第七艦隊の出動を命じています。この台湾海峡への第七艦隊の出動が、事実上中台の内戦にも介入することにつながったということです。中国人民解放軍(中国共産党軍)による台湾解放を頓挫させることになったというのです。
 
 また、1971年の国連総会で、アルバニアが提案した中華人民共和国の中国代表権を認め、中華民国政府(台湾=国民政府)を追放する決議が採択されています。さらに翌年に訪中したアメリカのニクソン大統領は、「中国は一つであり、台湾は中国の一部である」という中国の主張に同意する内容を盛り込んだ、米中共同宣言(上海コミュニケ)を発表し、米中国交正常化を実現させました。その結果、中華民国政府(台湾)は、日本をはじめ、世界の各国とも正式な国交を断絶され、現在に至っていると思います。

 でも最近、アメリカの要人が、次々に台湾を訪れている状況は、中台問題が、すでにアメリカにとって、中国の国内問題ではなくなっていることを示していると思います。
 社会主義体制の国である中国の急成長や一帯一路の政策は、アメリカの覇権を危うくするのみならず、世界中から利益を得ているアメリカの存亡にかかわるので、アメリカは、台湾独立派を支援して、中国をたたき、弱体化に結びつけたいのではないか、と私は疑っています。台湾が、第二のウクライナにさせられるのではないかと心配なのです。

 世論調査によると、台湾は、すでに中国とは相互依存があり、8割以上の人たちが「現状維持」を希望しているということです。また、台湾行政院の大陸委員会が昨年9月に行った世論調査では、「広義の現状維持」を望む人は85.4%を占めており、この割合は毎年ほぼ同じ率で、「すみやかに独立」は例年約5%、「すみやかに統一」は約1%だということです。
 大部分の台湾人は非民主的な中国との統一はうれしくないが、台湾の輸出の44%を占め、台湾の海外投資の60%以上が存在する中国大陸との経済関係が独立することによって切断されたり、戦争になったりしては大変、という現実的な判断から「現状維持」を支持するのだろうといいます(DIAMOND onlineの報道)。
 また、「中国は軍事侵攻しない」と受け止めている台湾人が、約6割を占めるとの情報もあります。

 それでもアメリカは、一部の親米的な政治家と共に、無理矢理危機感を煽り、様々な情報を流して、台湾の人たちを、自らの都合のよい方向に動かそうと躍起になっているように、私には思えます。

 なぜなら、アメリカは、くり返し、台湾に武器を売却しているからです。
日経新聞は2020年10月、下記のように報じています。
【台北=中村裕】米政府は26日、台湾への対艦ミサイルシステムなど総額23億7000万ドル(約2500億円)の武器売却を承認し、議会に通知した。21日には空対地ミサイル(AGM)など総額18億ドル(約1900億円)強の武器売却を承認したばかり。米国から台湾への武器売却が加速している。
 台湾は米国からの武器購入を増やし、軍事力の強化を急いでいる(7月、台中市)=ロイター
今回売却を決めたのは、「ハープーン」と呼ばれる米ボーイング製の対艦ミサイル最大400発のほか、ハープーンを搭載した沿岸防衛システム100基など。
 21日にはボーイング製の空対地ミサイル「SLAM-ER」135発や、米ロッキード・マーチン製のロケット砲システム「HIMARS」など3種類の兵器システムの売却を承認したばかりだ。…”

 だから、アメリカは、着々と、台湾の人たちが望んでいない戦争の準備を進めているように思います。

 ふり返れば、台湾は、日本のみならず、中国国民党の蒋介石政権にも、苦しめられています。台湾の人たちの思いの背景を知るために、「台湾の悲劇 世界の行方を左右する台湾」正木義也(総合法令)から、一部抜萃しました。
 国共合作で戦った第二次世界大戦終結後、中国国民党軍による解放区攻撃などによって、ふたたび中国国民党と中国共産党の軍隊は内戦状態となりましたが、人民解放軍との「三大戦役」で国民党軍は敗退し、台湾に逃れたにもかかわらず、軍事力を背景に、圧倒的多数の台湾の人たちを、圧政下においたのです。
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                    第四章 台湾民族 謝雪紅の運命

 血の自供
 台湾ではこの頃、中国国民党特務による中国共産党の地下組織への大がかりな弾圧が始まっていた。
 蒋介石が、大陸の最後の拠点、成都から台北に向った1949年12月よりも2ヶ月も前の10月すでに、国民党特務によって台湾地下組織の最高責任者、工作委員会書紀・蔡孝乾は逮捕されている。中ソ両国の領袖が、厳冬のモスクワ会談を行っていた50年1月29日、蔡孝乾の逮捕が公表された。国民党特務はこの間に地下組織摘発の十分な情報を自供させていた。蔡孝乾は毛沢東が抗日戦争時代に行った長征に同行。中国革命のメッカ、延安での革命活動も経験している。「名誉ある」中国共産党幹部党員であったがスネを削られるような陰惨な拷問を受け、台湾における地下組織の、組織図と党員名を全面自供した。800名の秘密党員が逮捕され、9000人が検挙された。
 この自供により、国民党特務のてによって3000人が銃殺された。
 弾圧工作を指揮したのは、蒋介石の息子の蒋経国である。父親と共に成都から台湾に逃げ込んで来ると、ただちに地下共産党の弾圧にとりかかった。50年4月には、正式に国防相政治部主任となってその後、30数年間恐怖の白色テロを全島に繰り広げた。
 20代に、モスクワで学んだソ連共産党仕込みの粛清方法を蒋経国は存分に発揮した。
 その残虐さと冷酷さは日本の植民地時代の特高警察よりひどいものだった。中国共産党の台湾地下組織は壊滅し、一人の党員も逃げられなかった。
 こうして、中国大陸からの軍事攻撃に呼応して、台湾島内で武装闘争を引き起こして台湾を武力解放しようとした中国共産党の思惑は完全についえた。
 毛沢東と共に長征に参加した蔡孝乾は、台湾革命の信奉者何千人もの血のあがないの上にたって、全面自供・裏切りの功績により、その後国民党軍隊の幹部に登用されている。

 朝鮮動乱
 1950年6月25日明け方北朝鮮軍隊は、陸路と海路6ケ所から38度線を突破し、韓国側に侵入した。翌日の26日夜には、ソウル北方14キロの地点に到達し、早くも韓国の首都ソウルは、陥落寸前となった。北朝鮮軍の侵入がスターリンの指示によることは明らかだった。北朝鮮軍はソ連製の武器で武装していた。翌日の26日、ソ連戦闘機ヤク二型機と、アメリカの戦闘機ムスタングは、ソウルの上空で空中戦を行った。アメリカ大使館10名の目撃によればヤク戦闘機4機ソウル上空に現われ、米機2機のうち1機を追尾した。爆弾2個を投下したが、ムスタング戦闘機は撃退した。
 韓国を西側の海から攻撃するためモスクワの中ソ会談において、スターリンが渤海と黄海の青島や大連など7つの軍港の管轄を求めて毛沢東に拒否されてから、6ヶ月がたっていた。
 一方、ロンドン発AFPによると、オーストラリアのスペンダー外相は、北朝鮮の韓国侵入について次のような声明を出している。
「北朝鮮軍の韓国侵入は中共軍の台湾侵入を誘発するかも知れない」

 蒋介石の幸運
 北朝鮮軍が韓国に侵入して3日後の1950年6月26日、ソウルは陥落した。この日、米国防総省はアメリカ第七艦隊が台湾海峡に到着し、警戒中であると発表した。
 米軍スポークスマンは、
 「まだ敵との接触はないが、台湾と朝鮮の両海域で米海軍の警戒はすでに始まっている」
と語った。
 1月初頭には、トルーマン大統領は、台湾をめぐっての中国共産党軍と中国国民党軍の争いは国共内戦との立場を取り、不介入を表明していた。
 しかし、朝鮮戦争の勃発は、その政策を一気に覆すこととなった。
 トルーマンは開戦直後の声明で、
 「今や共産勢力が、地下運動に頼る段階を終え、武力侵略および戦争を実行するに至った」
 と述べた。
 連動して起こる侵略事態にそなえ、アメリカ海兵隊は朝鮮に武力行動を起こすと同時に、台湾海峡への第七艦隊の出動が命令された。
 「中国共産軍が台湾を占領するような事態になれば、太平洋地域の安全とアメリカ軍に対し、新たな脅威となる」と声明は述べていた。
 ・・・
一方、蒋介石は朝鮮戦争の勃発によって、再びアメリカの強力な支援と援助を得られる幸運に恵まれた。


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