真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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アメリカの「黒を白に変える力」

2023年10月07日 | 国際・政治

 私は、ウクライナ戦争に関するいろいろな情報に接するなかで、アメリカの圧倒的な軍事力と経済力が、戦争や紛争における諸問題の「黒を白に変える力」として働いていることを確信するにいたりました。
 結論を言えば、ウクライナ戦争は、ロシアの侵略で始まったのではなく、ヤヌコビッチ政権に敵対していたウクライナの反政府勢力を、莫大な費用を費やして支援し、ヤヌコビッチ政権を転覆して親米政権に変え、ヨーロッパ諸国に対するロシアの影響力拡大を阻止するためにアメリカが仕組んで始めた戦争だということです。
 また、プーチン大統領を「悪魔のような独裁者」に仕立て上げ、ロシアを「恐ろしい侵略国家」とするために、「ブチャの虐殺」がアメリカとウクライナによって仕組まれたのだと思います。すでに取り上げましたが、数々の疑惑が、それを物語っていると思います。
 アメリカは、他国に対して、そういう内政干渉や軍事侵攻をくり返してきたのです。それは、アメリカの対外政策や外交政策を調べればわかります。
  
 しばらく前に取り上げましたが、報道(https://parstoday.ir/ja/news/iran) によると、イラン政府報道官・バハードリー・ジャフロミー氏が、「アメリカ は善悪を逆さに見せることにおいて先端を走っている」と語り、「アメリカが見せるやり口のうち、最も得意とする強力なもののひとつに、虚言がある。この国は、嘘を真実に、真実を嘘に見せかけるのである」というようなことを言っています。そして、「言動・行動の両方において善悪を逆さに見せることはアメリカのお家芸である」とし、「アメリカは、様々な時代において真実を実際とは間逆に見せて、直接・間接的に戦争の中心的存在となってきた」と述べたということです。言われてみれば、思い当たることがいろいろあります。
 だから、「黒を白に変える力」は、バハードリー・ジャフロミー氏の言葉を借りれば、「善悪を逆さに見せる力」ということもできると思います。
 また、後述する山崎圭一氏の言葉を借りれば、「国際的同調圧力」と言うこともできると思います。同じようなアメリカの「力」の表現だと思うのです。

 核兵器の廃絶には、原爆を投下したアメリカの責任を問うことが不可欠だと思いますが、先日、広島市の平和記念公園米ハワイ州のパールハーバー国立記念公園が6月に結んだ姉妹協定に関わって、広島市の市民局長が、原爆投下の責任をめぐる議論を「現時点では棚上げする」と議会で答弁したことが報道されました。
 この姉妹協定は、文化・観光・教育の相互交流により平和構築を推進するということで、「未来志向」が強調されているとのことですが、見逃せないのは、米国側からの働きかけで締結に至ったということです。
 本来「未来志向」というような言葉は、責任を問われている立場の人間が使うべき言葉ではないと思います。 
 でも、松井市長は「理性をもって和解し、未来志向で平和を求める象徴」だと語り、アメリカのエマニュエル駐日大使も「かつて対立の場だった両公園は和解の場となった。よりよい未来の道筋を描く人々が日米双方でますます増えていくだろう」語ったということです。
 広島市は、アメリカの働きかけを受け入れ、原爆投下の責任を棚上げして、「未来志向」で歩むことにしたということです。
 だから、広島市にとっては、原爆投下の責任を棚上げして、アメリカと手を結んだ方が都合の良いことが、いろいろあるのだろうと想像します。
 周りとの軋轢や不和を避け、目先の利益や個人の利益を優先させれば、原爆投下の責任を棚上げするほうが得策なのだろうということです。
 そうやって、少しずつ、少しずつ世界をけん引する覇権大国アメリカに引きずり込まれていくのだと思います。
 それも、圧倒的な軍事力と経済力を持つアメリカの「黒を白に変える力」であり、姉妹協定の働きかけの結果、広島で現出するに至ったのだと思います。

 しばらく前、プーチン大統領が、「ロシアの領土的一体性が脅かされれば、あらゆる手段を使ってロシアと国民を守る。これは、はったりではない」と強調したことが、核兵器の使用を示唆したものとして、西側諸国できびしく非難されました。
 でも、日本に原爆を投下したアメリカでは、「原爆は100万人の米兵の命を救うために投下され、戦争を早期終結に導いた」ということで正当化されており、いまだに反省や謝罪はないということを忘れてはならないと思います。「未来志向」などといって、アメリカの原爆投下の責任を曖昧にしてアメリカと手を結べば、核兵器廃絶はできないと思います。

 また先日、沖縄県の玉城知事が、沖縄県名護市辺野古の新基地建設を巡る斉藤国土交通相の、設計変更申請を承認するよう求めた指示に抵抗し、期限内の承認はしないと発表しましたが、そうした沖縄の正当な主張も、日本政府には拒否され続けてきました。そして、民意を無視した「代執行」の手続きが進められています。さらなる不利益が、沖縄にもたらされることが心配されます。
 見逃せないのは、民意を無視して、まったく理不尽な要求をする日本政府の背後には、やはり、圧倒的な軍事力と経済力を持つアメリカの存在があるということです。 
 「我々の望むだけの軍隊を、望む場所に、望む期間だけ駐留させる権利」を主張したジョン・フォスター・ダレス(当時国務省顧問)の言葉を思い出しますが、アメリカと手を結んでいる日本政府は、どんなことがあっても、アメリカの要求を拒否することはないのだと思います。その結果、多くの沖縄県民に支持された玉城知事の取り組みが、「違法」であるとされ、「代執行」が行われつつあるのです。
 だから、沖縄でも、圧倒的な軍事力と経済力を持つアメリカの「黒を白に変える力」が働いているのだと思います。
 アメリカの「黒を白に変える力」は、イラン政府報道官ジャフロミー氏が言ったように、時には、「虚言」によって、また、時には「事件のでっち上げ」によって、また、時には「利益誘導」によって、また、時には軍事的その他の「脅し」によって働くのだと思います。
 日本では、松本清張が「日本の黒い霧」で明らかにしたように、労働組合の急成長や共産党、社会党など革新勢力の急拡大を阻止し、日本を共産主義の防波堤、すなわち「反共の砦」にするために、アメリカのCIAが下山事件、松川事件、三鷹事件その他の事件を画策、実行し、労働組合員や共産党員の仕業する事件がありました。それらの事件によって、日本の社会は劇的に変わったということです。

 ウクライナ戦争で、停戦を働きかけることなく、ウクライナ軍を支援する立場で、いろいろな主張をする専門家といわれる人たちも、ロシアを敵視するアメリカの軍事力や経済力を背景としたさまざまなかたちの「黒を白に変える力」としての利益誘導に引きずられている、と私は思います。
 
 関連した記述が、前回取り上げた「混迷するベネズエラ 21世紀ラテンアメリカの政治・社会状況住田育法・牛島万(明石書店)にあります。
 山崎圭一氏は、同書の「第5章。民主化を拒む国際的同調圧力」のなかで、アメリカの「左派政権潰し」を「巨大なマシーン(仕組み)が起動している」と表現していました。
 そして、「マシン」の構成要素として、
米国政府、その同盟国、それに同調する多くの先進国および途上国、国連人権高等弁務官事務所、米州人権委員会、人権擁護団体(NPO)、世界的通信社、各国マスメディア(テレビ、新聞、週刊誌)などである。
 と指摘し、さらに、
特定の人物や法人が全体に君臨して、マシンを操作しているという意味ではない。
 としていました。また、
マシンの構成者が、定期協議を開催して、「左派」政権潰しの政策調整をしているわけではない。筆者の込めた意味は、指導者としての米国政府の影響力が強いが、あくまで「結果的に」各参加者の動きが同調的で、全体がマドゥロ政権潰しの一つのマシンに「見える」という状況である。望月衣塑子らの『同調圧力』という効著があるが[望月、前川、ファクラー2019]、チャベス─マドゥロ政権は悪い政府だと認識せよという国際的な「同調圧力」が生じているのである。これは弾みがついた一つの社会現象なのであって、一度動き出す止めることは難しい。こうして、世界の多くの地域でマドゥロ政権非難の大合唱が響き渡っている。
 とも指摘していました。
 アメリカの圧倒的な軍事力と経済力は、さまざまな国や地域、組織、団体で「同調圧力」として、現出しているということではないかと思います。
 その「同調圧力」が、戦争や紛争における「黒を白に変える力」であり、「善悪を逆様に見せる力」だということです。

 大事なことは、アメリカがウクライナの内政に干渉したり、軍事介入したりしなければ、ウクライナ戦争はなかったということです。オバマ政権時代に国務次官補を務めた ビクトリア・ヌーランドが、「ウクライナの民主化に50億ドルを費やした」というようなことを講演会で語ったことが知られていますが、そういう「左派」政権潰し内政干渉軍事介入が、ウクライナ戦争をもたらしたということです。
 アメリカがウクライナでやっていることは、ラテンアメリカを中心に、世界中でくり返してきたこととまったく同じだと思います。
 でも、それが、西側諸国では「悪魔のような独裁者プーチン率いる「恐ろしいロシア」による「侵略戦争」として認識され、ウクライナ軍の支援が続けられているのです。
 だから、日本の主要メディアや西側諸国で語られるウクライナ戦争は、ほとんど「虚構」であるといってもいいように思います。
 
     
 現在、日本をはじめとする西側諸国では、台湾に危険が迫っているような報道がありますが、アメリカが台湾の内政に干渉したり、軍事介入したりしなければ、台湾有事などないと思います。人口2300万ばかりの島国が、14億を超える人口の大国中国と戦争ができるわけはないのです。また、台湾が中国と戦争をしなければならないような搾取や収奪その他深刻な人権問題などもないと思います。台湾の人たちの多くも、現状維持を望んでいるといいます。にもかかわらず、アメリカは大量の高度な武器を台湾に売りつけ、中国が台湾の武力統一を企てているなどと言って、緊張をつくり出しているのです。私は、中国が台湾の「武力統一を企てているというのは、アメリカお得意の「虚言」だと思います。統一を目指しても、武力統一など考えてはいないと思います。

 


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