真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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南京大虐殺」への大疑問? NO4

2015年06月06日 | 国際・政治

 『「南京大虐殺」への大疑問』松村俊夫(展転社)には、第5部第5章の「南京事件の真相」の中にも、見逃せない文章がある。証拠や判断の根拠をきちんと示さないと、悪意に満ちた誹謗中傷と受けとめられても仕方がない文章だと思う。下記である。
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”・・・
 一方、難民たちは、それまで思いもかけなかった裕福な人々の住宅が立ち並ぶ安全区に入り、しかも、そのまわりの家々はすべて無人だった。まるで、いくらでも持っていって下さいといわんばかりにあらゆるものが揃っていた。持主がそこにいなければ、何でもいただいてしまうのが当時の支那人の生活感覚だったのである。
 掠奪した後は、その跡を消すために放火が始まる。また、潜入した便衣隊はプロだから、外国人や日本軍につかまるようなヘマをすることもなく、撹乱のために放火して回った。さらに、乱暴にも、日本兵と見せかけて本当に難民を殺したり、女を追いかけ回して強姦に及ぶことも少なくなかった。女たちはそれを承知の上で、日本兵に暴行されたと報告した。単に噂だけを流したものもいた。
 彼らとっては有難いことに、外国人たちには、殺人、略奪、強姦、放火は、すべて日本軍がやったと訴えさえすれば、疑われることなく事実として認めてくれた。難民たちは、誰に負わされた怪我であっても、それらしい話さえ作れば、日本軍にやられたことになって無料で入院・治療ができた。1938年1月半ば以降の『南京安全区檔案』に見えている通牒者はほとんど支那人だったが、そのまま記録されている。
 キリスト教関係者にとっては、難民がはいることによって、荒れた建物や設備、施設などの修理費を本部からもらうためにも、すべては日本軍によって破壊されたとする必要があったし、それゆえに敢えて噂話に乗っていった。最初に表記した外国人のうち、日本軍の暴行を伝えていたのは、キリスト教徒のうちの一握りの人々であった。声の大きな数人の外国人グループがすべてを牛耳っていたのである。
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 指摘したいのは、次のようなことである。

 「持主がそこにいなければ、何でもいただいてしまうのが当時の支那人の生活感覚だったのである」の根拠は示されていない。「掠奪した後は、その跡を消すために放火が始まる」についても、何か資料があるのだろうか、と思う。
 著者が現地調査を繰り返した中国史専門の歴史学者であるならば、そうした表現も認められるかも知れないが、そうでなければ、きちんとそうした表現を裏付ける資料を示すべきだと思う。著者は、日本人を侮蔑することを許さないが、中国人は侮蔑してもよいと考えているかのようである。

 「日本兵と見せかけて本当に難民を殺したり、女を追いかけ回して強姦に及ぶことも少なくなかった」とは誰の、どのような調査結果に基づく結論であろうか。「少なくなかった」と断定するのであれば、具体的にその実態を示す資料を明らかにする必要があると思う。想像に基づいて断定してよい問題ではないと思うのである。

 「女たちはそれを承知の上で、日本兵に暴行されたと報告した」などというのは、日本軍兵士は強姦や略奪、虐殺などしないという前提で資料を見るため生まれる空想ではないかと思う。「暴行された」と主張する女性の証言やそれを聞いた人物の直接的な証言がない限り、こうしたことを断定することはできないのではないかと思う。そんな証言が存在するということは聞いたことがない。

 「キリスト教関係者にとっては、難民がはいることによって、荒れた建物や設備、施設などの修理費を本部からもらうためにも、すべては日本軍によって破壊されたとする必要があったし、それゆえに敢えて噂話に乗っていった」というキリスト教関係者を侮蔑するような記述も、その根拠は示されていない。関係する資料も提示されてはいない。当事者や関係者の証言がなければ、こうしたことを事実のように書くことはできないはずである。根拠なくこうした断定をすることは、関係国や国際社会の信頼を失うことにつながると思う。

 著者は、最後に

こう見てくると、日中友好にとっても米中友好にとっても、そして、日米友好にとっても、最も障害となるのは、声高に「南京大虐殺」を叫ぶ人々であることはもはや疑う余地がない。

と書いているが、あまりに手前勝手であり、事実は全く逆だと思う。先日、米国をはじめとする海外の歴史学者や日本研究者ら187名が、連名で「日本の歴史家を支持する声明」を発表した。日本の歴史修正主義の動きに政権が荷担していることを、国際社会も懸念しているのである。

 松村俊夫氏のような主張を続けるならば、日本はますます孤立していく。現にそうした歴史認識が、様々な外交関係の問題を生じさせている。国によっては、経済を優先させ、日本の「歴史」の「修正」に目を瞑ることはあるかもしれない。しかしながら、中国や韓国をはじめとする近隣諸国が、大変な被害をもたらした日本の侵略戦争を正当化する歴史修正主義を素直に受け入れ、日本に信頼を寄せることは決してないと思う。
 客観的事実を直視し、関係改善につなげるべきだと思うのである。

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