Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

<淳>その生い立ち(2)

2013-07-01 01:00:00 | 雪と淳の生い立ち
河村教授は見ていた。

淳の一挙一動を。



秀紀と座っている時、その両耳を押さえこんだ暗い表情も、



女の子と手をつないで出て行く時、



そっと秀紀のコップを取っていったことも。


河村教授は彼の後を付けてみた。




柱の影から、子供二人の会話を盗み聞く。



「お酒のコップ、間違えて持って来ちゃった」

「それワイン?私ちょっと飲めるわよ!」

女の子が、それを飲みたいと強請った。淳が具合悪くなるかもよと注意を促したが、結局女の子はそれを飲んだ。



教授は見ていた。それからの経過を。

酒を飲んで気分が高揚したのか、女の子の声だけが響いていた。

「あははは!この人形が可愛いって? あたしの一番の宝物なの。でも淳が欲しいならあげる。本当よ!」

「え?半分でいいって? じゃあ仲良く半分こね!そうしよそうしよ~!あははははは‥」

ブチッ!



教授は幾分驚いた。女の子が、人形の胴体から首をちぎり取った。

女の子はヘラヘラと笑いながらむしられた人形を持って、「これでもうあたしはあんたの親友ね?」と言った。

酔っ払った女の子は、それきりスヤスヤと眠った。





淳は二つにちぎられ、綿の出た人形を見て呟いた。



「‥今見ると、別に欲しくもないや」







教授は見ていた。

その後、淳が両親にお酒を過って飲んだんだと告白し、家に帰るまでを、ずっと。

当然酒の入ったコップは秀紀のものだったので、それがバレると彼は親からげんこつをくらった。



涙目になった秀紀が淳を呼び止めようとすると、淳はある仕草をした。



それが”げんこつのお返し”という報復の意味なのか、”ここが違うんだよ”といった侮蔑の意味なのか、

どちらかは定かではない。

しかし秀紀はこの後こってりと絞られ、淳は笑顔を振りまいて大人たちから可愛がられた。








淳は母親と共に、家へと車で帰っていった。

若き日の青田淳の父親が、二人が去るのを見送っていた。



振り返ると、彼が立っていた。

「河村教授」



教授は、淳の父親に話があると言った。君の息子の話だ、と切り出すと、彼の表情は幾分曇った。

「どういうことですか?」



教授は話始めた。

先ほど柱の影から見た、二人の子供の様子を。




女の子は何も異常は無かった。

子供が子供らしく、その自我を育んでいる様子が窺えた。



その手には、異常な人形が握られていた。

しかしそれは紛れもなく異常の無い彼女の手で行われた。

「今見ると、あまり欲しくもないや」




彼は自分の手は一つも汚さず、目的を達成したのだ。まるで狡猾な大人のように。





彼は暫し言葉を失った。

しかしそれは驚きというよりも、どこか既視感を憶えたからであった。

「君の息子は、君の幼い頃にそっくりだ。

周辺が放っておくのを許さない環境故に、しかたがないが‥」




河村教授は、淳の行動には過激な面があると分析した。

それは子供らしくない、時に大人さえ超越した面があると。



淳の父親は、教授に改めて謝辞を述べた。

自分が今何不自由なく社会生活を送れているのは、あなたの教育があったからだと。

しかし敢えての意見として、淳の見解については少し過敏すぎるのではと苦言を呈した。

「私は昔、怒りを覚えるとまるで制御が出来ませんでした。

けれど、淳は先ほどのようにトラックが壊されてもよく堪えていたし、普段から物静かで忍耐力のある子で‥」




淳の父親が続けようとすると、河村教授はそれを遮った。

「そこが気になると言っているんだ。本音が分からないだろう?」




彼は淳が秀紀にやり返した場面を説明した。





「あの幼さで、平然と大人を騙したのだ。

更に他人の手を利用することまで計算に入れていた。

自分の手は絶対に使わず..、攻撃を受ければ必ず同じだけ返すんだ。少し背筋が寒くならないか?」




河村教授は引き続き淳を見守る必要があると説いた。必要があれば自分が淳の教育を含め引き受ける、とも。

しかし淳の父親は、そこまで聞いてもまだ自分の意見を変えなかった。

「私にはよく‥分かりません。僭越ながら、教授の考え過ぎじゃないかと‥」



河村教授は、そうかもしれないと頭を掻いた。どうも職業病でね、と苦笑しながら。

その後彼は二人の孫のやんちゃぶりについて語った。孫の話になると目尻が下がり、彼はおじいちゃんの顔になった。



引き続き何かあったら連絡をして欲しいと言い残して、彼は去っていった。








河村教授が亡くなったのは、そのすぐ後のことだった。


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淳の幼少期のエピソード1です。

次回はエピソード2、

<淳>その生い立ち(3)へ続きます。



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