雪と淳の、波乱に富んだ1年が終わった。
ステージは次の学年へと移り変わるのだが、その前に紹介しなければならない人物が居る。
河村亮 24歳

河村静香 25歳

さて、「河村」という苗字に聞き覚えはないだろうか。
そう、淳の幼少期、その性格に苦言を呈したあの河村教授と同じ名字だ。

河村兄弟とはこの河村教授の孫であり、幼くして青田淳の父親がその身柄を引き取った二人である。

この二人の存在無しでは次の話は始められない。
亮と静香のことをこれから、紹介したいと思う。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
彼らの祖父、河村教授は帰化した外国人だった。そのため亮と静香は混血の顔をしている。
幼少期に両親を事故で亡くし、それ以来二人は祖父に育てられた。
しかしその祖父も亡くなると、二人は祖父の遺言通り叔母の家へ預けられることになる。

この叔母は、河村教授の二人目の奥さんとの間に儲けられた娘だった。
第一夫人(若くして死別)と血縁関係にあった亮と静香は、彼女にとっては遺産相続の条件でついてきたお荷物であり、また二人が原因で夫とも離婚してしまう。
毎日酒を喰らい、人生を悲観して生きていた叔母は、いつの日からか静香のことが憎くて堪らなくなった。
「静香‥お前は大人を見下しやがって‥」

酔っ払っては、静香の何もかもに文句をつけ、虐待を繰り返した。
毎日毎日、お前はどうしようもないクズだと言われ続けて、静香は気が狂いそうだった。

亮にこの家を出ようと訴えたが、彼は耐えることを選択した。
彼はピアノの才能があり、叔母はそれをとても買っていたからだ。

静香は、ことあるごとに叔母に反抗した。

しかしその度に暴力はエスカレートした。腹を蹴られ、頬を張られ、そして何よりも心が踏みにじられた。
「お前みたいな子、捨ててくればよかったよ!」
「いらないよ!何の取り柄も無いお前なんか!」

「亮はお前と違ってピアノの才能があるから、後々恩返しもするだろうが、お前はただの用無しだ!」
容赦も心も無い言葉と暴力の隙間から、静香は亮を探した。
たった一人の弟。
たった一人の彼女の味方。
頭を抱え込むようにした姿勢から、ようやく彼の姿が見えた。

アパートのドアの外側で、彼は傷だらけの身体で震えながら様子を窺っていたが、やがて姉を見捨てて逃げ去った。
静香は下を向き、矢のように降ってくる暴力に耐えた。

才能のある弟は、ピアノの塾に行ったよと叔母が意地悪く言う。
静香はその幼心に絶望を知った。
ここには、私を守ってくれる人は誰も居ないと。

その日家を訪ねてきたのは、青田淳の父親だった。

そして彼女は自分の運命をかけて、大きな賭けに出る。
「おじさん」
「あたしを連れて行って!」

脱いだ服の下には、無数の痣が至る所にあった。
慌てる叔母と驚く弟をも構わず、静香は淳の父親に叫び訴えた。
「叔母さんはおじいちゃんの遺産目当てで私達を引き取っただけなんですって!」

「ここにはあたしを守ってくれる人は一人も居ない!」

亮はその言葉にギクリとした。
あの時逃げたことへの罪悪感が、心の底にこびり付いていた。
青田淳の父親は、血を吐くような静香の願いを聞いた。
「‥じゃあ、おじさんと一緒に行こう。」

サングラスのせいでその表情を窺い知ることは出来なかったが、
何かを決意している口調だった。
そうして二人は、青田淳の父親が用意した家に住み、学校へ通い、様々な支援を受けるようになる。

息子の本当の友人になってほしいという彼の小さな希望達は、ちょくちょく青田家に遊びに来ては彼の息子と親しくなっていった。
そうして時は流れ、三人は高校生になった。

ここである大きな事件が起こるのだが、そのためにはまだ語らなければならないことが沢山ある。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<亮と静香>幼少期、でした。
河村姉弟編に入りましたー!いかがでしたでしょうか?
チーズインザトラップの三大柱の一つである、河村姉弟と青田淳の関係ですが、その顛末は未だベールに隠れたままです。
ですので今明らかになっている所のみを時系列で追って行き、本家版で追加されればまた折を見て記事にしていきます。
カテゴリー分けしましたので、雪が3年生の話を記事にし始めても、河村姉弟の話はそちらのカテゴリにupするようにしたいと思います。
さて、次は三人の高校時代の話を始めたいと思います。
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ステージは次の学年へと移り変わるのだが、その前に紹介しなければならない人物が居る。
河村亮 24歳

河村静香 25歳

さて、「河村」という苗字に聞き覚えはないだろうか。
そう、淳の幼少期、その性格に苦言を呈したあの河村教授と同じ名字だ。

河村兄弟とはこの河村教授の孫であり、幼くして青田淳の父親がその身柄を引き取った二人である。

この二人の存在無しでは次の話は始められない。
亮と静香のことをこれから、紹介したいと思う。
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彼らの祖父、河村教授は帰化した外国人だった。そのため亮と静香は混血の顔をしている。
幼少期に両親を事故で亡くし、それ以来二人は祖父に育てられた。
しかしその祖父も亡くなると、二人は祖父の遺言通り叔母の家へ預けられることになる。

この叔母は、河村教授の二人目の奥さんとの間に儲けられた娘だった。
第一夫人(若くして死別)と血縁関係にあった亮と静香は、彼女にとっては遺産相続の条件でついてきたお荷物であり、また二人が原因で夫とも離婚してしまう。
毎日酒を喰らい、人生を悲観して生きていた叔母は、いつの日からか静香のことが憎くて堪らなくなった。
「静香‥お前は大人を見下しやがって‥」

酔っ払っては、静香の何もかもに文句をつけ、虐待を繰り返した。
毎日毎日、お前はどうしようもないクズだと言われ続けて、静香は気が狂いそうだった。

亮にこの家を出ようと訴えたが、彼は耐えることを選択した。
彼はピアノの才能があり、叔母はそれをとても買っていたからだ。

静香は、ことあるごとに叔母に反抗した。

しかしその度に暴力はエスカレートした。腹を蹴られ、頬を張られ、そして何よりも心が踏みにじられた。
「お前みたいな子、捨ててくればよかったよ!」
「いらないよ!何の取り柄も無いお前なんか!」

「亮はお前と違ってピアノの才能があるから、後々恩返しもするだろうが、お前はただの用無しだ!」
容赦も心も無い言葉と暴力の隙間から、静香は亮を探した。
たった一人の弟。
たった一人の彼女の味方。
頭を抱え込むようにした姿勢から、ようやく彼の姿が見えた。

アパートのドアの外側で、彼は傷だらけの身体で震えながら様子を窺っていたが、やがて姉を見捨てて逃げ去った。
静香は下を向き、矢のように降ってくる暴力に耐えた。

才能のある弟は、ピアノの塾に行ったよと叔母が意地悪く言う。
静香はその幼心に絶望を知った。
ここには、私を守ってくれる人は誰も居ないと。

その日家を訪ねてきたのは、青田淳の父親だった。

そして彼女は自分の運命をかけて、大きな賭けに出る。
「おじさん」
「あたしを連れて行って!」

脱いだ服の下には、無数の痣が至る所にあった。
慌てる叔母と驚く弟をも構わず、静香は淳の父親に叫び訴えた。
「叔母さんはおじいちゃんの遺産目当てで私達を引き取っただけなんですって!」

「ここにはあたしを守ってくれる人は一人も居ない!」

亮はその言葉にギクリとした。
あの時逃げたことへの罪悪感が、心の底にこびり付いていた。
青田淳の父親は、血を吐くような静香の願いを聞いた。
「‥じゃあ、おじさんと一緒に行こう。」

サングラスのせいでその表情を窺い知ることは出来なかったが、
何かを決意している口調だった。
そうして二人は、青田淳の父親が用意した家に住み、学校へ通い、様々な支援を受けるようになる。

息子の本当の友人になってほしいという彼の小さな希望達は、ちょくちょく青田家に遊びに来ては彼の息子と親しくなっていった。
そうして時は流れ、三人は高校生になった。

ここである大きな事件が起こるのだが、そのためにはまだ語らなければならないことが沢山ある。
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<亮と静香>幼少期、でした。
河村姉弟編に入りましたー!いかがでしたでしょうか?
チーズインザトラップの三大柱の一つである、河村姉弟と青田淳の関係ですが、その顛末は未だベールに隠れたままです。
ですので今明らかになっている所のみを時系列で追って行き、本家版で追加されればまた折を見て記事にしていきます。
カテゴリー分けしましたので、雪が3年生の話を記事にし始めても、河村姉弟の話はそちらのカテゴリにupするようにしたいと思います。
さて、次は三人の高校時代の話を始めたいと思います。
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