朝。
雪の携帯から目覚まし代わりの着信メロディーが大音量で流れる。
目覚ましとしてセットされているのは、歌手フィソンの”不眠症”という曲だ。
♪針のような悩みも全部 切り裂いて明日へ♪

雪は手探りで携帯を探し、音楽を止めた。
まだ眠気の残る頭でご飯を炊いてないことに気がつく。朝ごはん無しである‥。

二回セットされたアラームからは、もう一度着メロが大音量で響いた。
♪夢よりもずっと君のことを思い夜を更かし~Feels like..♪

その大きなボリュームに、隣の浪人生は壁をバンバン叩いて来た。
「あんた二回もアラームセットしとんじゃないわよ!あんたのせいであたしゃ不眠症よぉぉ!」
外に出ると、暗いオーラを背負った彼に案の定注意された‥。

浪人生だからなのか、ちょっぴり神経質らしい。
ふと雪の携帯が鳴った。恵からのメールである。
ゆき姉!今日のご飯の約束忘れてないよね?
今日はこの間一緒出来なかった分、ランチに行く約束をしてあるのだ。

雪が恵からのメールに癒されていると、続いてもう一度メールを知らせる音が鳴った。
恵ちゃんの件どうなった?!上手いこと言ってくれたか?!

健太先輩からのメールだったが、雪は見ないフリして携帯を閉じた‥。
季節は三月といえど、まだ冷たい風が身に染みる。

雪が信号待ちをしていると、また携帯が鳴った。
授業の課題一緒にやらない?あとEメールアドレス教えて

雪はそのメールを見て、思わず顔をしかめた。
青田先輩は、この頃ずっとこんな感じだ。
携帯からは大音量の着メロが流れた。
♪どうして~悲しい予感は外れやしないの~♪

なにこのタイミング‥。
雪の大学生活が、また大きく変わろうとしていた。

「疲れた‥」

ゲッソリとそう漏らす雪に、そんな彼女を心配した聡美が声を掛ける。
「五月病とか?」「ううん、なんか‥甘いもの食べたいー」

二人はそのまま何気ない会話を重ねた。
「あれ?聡美、その携帯ストラップの人形って新しく買ったやつ?かわいいじゃん」
「でしょ?」

そして話題は今日のランチについてへと移り、二人はプリントアウトした地図片手に熱弁する。
「最近新しくオープンしたカレー屋さん、超人気らしいっすよ!」
「またインテリアがブログに上げたくなるほど素敵だって!」

雪、聡美、太一の三人は、実は三人だけのサークルを作っていて、その名も「味趣連(ミシュレン)」といった。
昼休みの度に大学の近くの美味しい店へ出陣するサークルだが、
太一が「味」担当、聡美が「趣(おもむき)」担当、雪が「連(つれ)」担当でミシュレンとは、上手く言ったもんである。

どうやら今日はカレー屋に出陣することになったらしく、聡美は前方の席に座っている青田先輩に話しかけた。
「先輩はそのカレー屋さん、行ったことありますか?」

青田先輩は、一年生たちを連れて行ってみたけど悪くなかったよと言った。
聡美が自分たちも年はイッてるけど後輩ですよとその身を乗り出す。

先輩は笑いながら、じゃあ今度なと言った。
雪はなるべく関わりを持たないようにと黙っていたのだが、今度は青田先輩の方から声を掛けてきた。
「雪ちゃん、悪いんだけどペン借りてもいいかな?」「あ‥はい!」

雪がペンケースの中からボールペンを探っていると、聡美と太一がグフグフと笑って雪の方を窺った‥。

その後、太一が青田先輩と世間話を始めた。健太先輩の姿が見えないのはインフルエンザだからだとか、
他の先輩達はみんな二日酔いで授業に来てないとか‥。そして最後には服の話題で盛り上がっていた。
楽しそうな会話をする二人を見て、雪は複雑な気持ちがした‥。

授業が終わって、聡美と太一は青田先輩と話せるのも雪のお陰だと喜んだ。

当然雪は釈然としない。
「あんた達が話しかけたはずなのに、なんで私がペンを貸さなくちゃならないの?」

すると二人はバカじゃないのと言った空気で雪にダメ出しだ。
「わかってないすね~!わざと雪さんの前に座ったんじゃないっすか!」
「うちらはあんたのダチだからよくしてくれるだけ!どんだけ鈍感よ?」

すると建物の影から、恵が雪を見つけて出て来た。
「ゆき姉!さっきからずっと向こうで待ってたんだよ!」

雪は辺りを見回して、健太先輩のことがあるからこっちの建物に近づいちゃダメ!とがなる。

その後恵を聡美と太一に紹介すると、雪はお昼は恵と食べるから先行ってと、二人を見送った。

雪と恵がランチは何を食べようかと話していると、後ろから聞き覚えのある声が掛かる。
「雪ちゃん!ペン返すの忘れてた」

ペンを受け取って雪がお礼を言うと、先輩がお礼は俺が言うべきでしょと笑った。
恵を見て雪の友達かと問う彼に、雪は互いを紹介する。

爽やかな笑顔で挨拶をする青田先輩を見て、恵は頬を赤らめた。

その後、恵は自分から自己紹介を始めて‥。

その積極的な態度と、上気した頬を横目で見ながら、雪は恵の感情に気がついてしまっていた。

誰からか、また携帯からは着メロが大音量で流れ始める。
♪どうして~悲しい予感は~外れたことがないの~♪

色々なことが、変わり始めていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<恋心>でした。
雪の朝の目覚まし着メロはこれのようです↓
不眠症(Insomnia) Wheesung
隣人の「あたしゃあんたのせいで不眠症よぉ!」という可笑しみがようやく分かりました‥。
どうして悲しい予感は~♪
というのはこれのようです。↓
ひとりのための心 Kim Jeong Hoon
色々なサウンドが携帯に入ってるみたいですね!テンボルも然りね!(やはりしつこい)
次回は<恋心(2)>です。
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雪の携帯から目覚まし代わりの着信メロディーが大音量で流れる。
目覚ましとしてセットされているのは、歌手フィソンの”不眠症”という曲だ。
♪針のような悩みも全部 切り裂いて明日へ♪

雪は手探りで携帯を探し、音楽を止めた。
まだ眠気の残る頭でご飯を炊いてないことに気がつく。朝ごはん無しである‥。

二回セットされたアラームからは、もう一度着メロが大音量で響いた。
♪夢よりもずっと君のことを思い夜を更かし~Feels like..♪

その大きなボリュームに、隣の浪人生は壁をバンバン叩いて来た。
「あんた二回もアラームセットしとんじゃないわよ!あんたのせいであたしゃ不眠症よぉぉ!」
外に出ると、暗いオーラを背負った彼に案の定注意された‥。

浪人生だからなのか、ちょっぴり神経質らしい。
ふと雪の携帯が鳴った。恵からのメールである。
ゆき姉!今日のご飯の約束忘れてないよね?
今日はこの間一緒出来なかった分、ランチに行く約束をしてあるのだ。

雪が恵からのメールに癒されていると、続いてもう一度メールを知らせる音が鳴った。
恵ちゃんの件どうなった?!上手いこと言ってくれたか?!

健太先輩からのメールだったが、雪は見ないフリして携帯を閉じた‥。
季節は三月といえど、まだ冷たい風が身に染みる。

雪が信号待ちをしていると、また携帯が鳴った。
授業の課題一緒にやらない?あとEメールアドレス教えて

雪はそのメールを見て、思わず顔をしかめた。
青田先輩は、この頃ずっとこんな感じだ。
携帯からは大音量の着メロが流れた。
♪どうして~悲しい予感は外れやしないの~♪

なにこのタイミング‥。
雪の大学生活が、また大きく変わろうとしていた。

「疲れた‥」

ゲッソリとそう漏らす雪に、そんな彼女を心配した聡美が声を掛ける。
「五月病とか?」「ううん、なんか‥甘いもの食べたいー」

二人はそのまま何気ない会話を重ねた。
「あれ?聡美、その携帯ストラップの人形って新しく買ったやつ?かわいいじゃん」
「でしょ?」

そして話題は今日のランチについてへと移り、二人はプリントアウトした地図片手に熱弁する。
「最近新しくオープンしたカレー屋さん、超人気らしいっすよ!」
「またインテリアがブログに上げたくなるほど素敵だって!」

雪、聡美、太一の三人は、実は三人だけのサークルを作っていて、その名も「味趣連(ミシュレン)」といった。
昼休みの度に大学の近くの美味しい店へ出陣するサークルだが、
太一が「味」担当、聡美が「趣(おもむき)」担当、雪が「連(つれ)」担当でミシュレンとは、上手く言ったもんである。

どうやら今日はカレー屋に出陣することになったらしく、聡美は前方の席に座っている青田先輩に話しかけた。
「先輩はそのカレー屋さん、行ったことありますか?」

青田先輩は、一年生たちを連れて行ってみたけど悪くなかったよと言った。
聡美が自分たちも年はイッてるけど後輩ですよとその身を乗り出す。

先輩は笑いながら、じゃあ今度なと言った。
雪はなるべく関わりを持たないようにと黙っていたのだが、今度は青田先輩の方から声を掛けてきた。
「雪ちゃん、悪いんだけどペン借りてもいいかな?」「あ‥はい!」

雪がペンケースの中からボールペンを探っていると、聡美と太一がグフグフと笑って雪の方を窺った‥。

その後、太一が青田先輩と世間話を始めた。健太先輩の姿が見えないのはインフルエンザだからだとか、
他の先輩達はみんな二日酔いで授業に来てないとか‥。そして最後には服の話題で盛り上がっていた。
楽しそうな会話をする二人を見て、雪は複雑な気持ちがした‥。

授業が終わって、聡美と太一は青田先輩と話せるのも雪のお陰だと喜んだ。

当然雪は釈然としない。
「あんた達が話しかけたはずなのに、なんで私がペンを貸さなくちゃならないの?」

すると二人はバカじゃないのと言った空気で雪にダメ出しだ。
「わかってないすね~!わざと雪さんの前に座ったんじゃないっすか!」
「うちらはあんたのダチだからよくしてくれるだけ!どんだけ鈍感よ?」

すると建物の影から、恵が雪を見つけて出て来た。
「ゆき姉!さっきからずっと向こうで待ってたんだよ!」

雪は辺りを見回して、健太先輩のことがあるからこっちの建物に近づいちゃダメ!とがなる。

その後恵を聡美と太一に紹介すると、雪はお昼は恵と食べるから先行ってと、二人を見送った。

雪と恵がランチは何を食べようかと話していると、後ろから聞き覚えのある声が掛かる。
「雪ちゃん!ペン返すの忘れてた」

ペンを受け取って雪がお礼を言うと、先輩がお礼は俺が言うべきでしょと笑った。
恵を見て雪の友達かと問う彼に、雪は互いを紹介する。

爽やかな笑顔で挨拶をする青田先輩を見て、恵は頬を赤らめた。

その後、恵は自分から自己紹介を始めて‥。

その積極的な態度と、上気した頬を横目で見ながら、雪は恵の感情に気がついてしまっていた。

誰からか、また携帯からは着メロが大音量で流れ始める。
♪どうして~悲しい予感は~外れたことがないの~♪

色々なことが、変わり始めていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<恋心>でした。
雪の朝の目覚まし着メロはこれのようです↓
不眠症(Insomnia) Wheesung
隣人の「あたしゃあんたのせいで不眠症よぉ!」という可笑しみがようやく分かりました‥。
どうして悲しい予感は~♪
というのはこれのようです。↓
ひとりのための心 Kim Jeong Hoon
色々なサウンドが携帯に入ってるみたいですね!テンボルも然りね!(やはりしつこい)
次回は<恋心(2)>です。
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