雪が構内を歩いていると、青田先輩が声を掛けて来た。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4f/c7/cae9c4cb4d1e139b29152eb4cdc17653.jpg)
手には先日雪が恵に貸した本を持っている。
雪はお礼を言うと、本を受け取った。彼が髪の毛を切ったことに内心気がつきながら。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/bb/7827483b4c3397dc5dcc79aaf67cd045.jpg)
そのままニコニコと雪の前に立っている先輩に、
雪はどうかしたんですかと声をかける。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/54/73/ea7eee8d9cca1beddfc95cb6c36dc373.jpg)
「俺、何か変わったと思わない?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1f/f4/8328a88d1f2d539d3b961a3a783528c3.jpg)
雪は最初彼が何を言っているのか分からなかったが、もしかしてと思い言ってみた。
「か‥髪?髪が短く‥」「うんうん!当たり!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/50/35/6aa3d74e96657f01f1114ba76c29e51f.jpg)
変じゃないかなぁと髪の毛を触りながら雪を見る先輩に、
雪はまさか嫌味じゃないよな‥と訝しげに思いながら、彼の髪型を褒めた。
(彼女は髪の毛にコンプレックスがあるので、サラサラヘアの彼が髪の毛について言及する事にことの外敏感だ)
「とっても似合ってますよ!先輩は格好いいから何だって‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/f9/94976fac56c8b7c80dd03a55bbee9669.jpg)
まぁ嘘ではないが、とりあえずリップサービス‥と思いつつ、雪はにこやかに言った。
「え?本当に?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/54/fb/453c207ad19fb9764a7b7758af4bc33d.jpg)
雪の予想に反して、青田先輩は真顔で返して来た。
リップサービスという心の声が聞こえたんじゃないかと思うような反応に、雪はたじろぎながら尚の事褒める。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/67/ef/d8a83b86c1007273359c539cdcc416ce.jpg)
「あー‥、ありがと」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/38/e7/1565a3ba14ed6917981aaafeecd48abe.jpg)
掴みにくい彼の見せるその表情は、多分照れてる時のもの。
雪はムズムズしながら、「本当のことを言ったまでです‥」と太鼓を叩いた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/a5/31e900ea46109c0ec53c39132e625104.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/15/58c9661fd535dfc083c893b435586ed8.jpg)
遠藤修が廊下を歩いていると、ふと前に赤山雪が居るのが目に入った。
彼女のサインが必要な書類が事務室にあり、折を見て呼びだそうと思っていたところだったので、
遠藤は早速声を掛ける。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/40/9a/7bccd9f375984d2cf0cff1e1bb34aff6.jpg)
すると壁の影に隠れていて見えなかった、彼女が談笑していた相手と目が合った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6a/56/07ae7923fe3c366ba528fb4883440caa.jpg)
青田淳‥。
遠藤はビクッと身体が強張るのを感じた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/b6/ce2697952333db2408406b5ad39f92d8.jpg)
遠藤は青田淳から視線を外し、雪に事務室に寄るよう言うと、そのまま早足で去って行った。
雪は先輩にお先に失礼しますと言うと、早足の遠藤を小走りで追う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/37/17/9e5641bab0a5881af0c6090f0f55b9ba.jpg)
雪の心に、モヤモヤとしたものが膨れ上がった。
なんだろう今の‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0c/a5/fab50c97266c059eecaba9880897b34f.jpg)
雪の鋭敏さが、先ほどの遠藤と先輩の間にあった変な空気を察知していた。
見ないフリ見ないフリ‥。気にしない気にしない‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2b/6c/0a44e2f1fd6c27eb5cc5b07dc0eb2917.jpg)
雪はその背中を追いながら、必死に頭をもたげるものを振り切ろうとした。
事務室では、遠藤がブラインドの隙間から窓の外を窺っていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/38/ef/eb1a2cb7b12e8bc98a8d1b0fa75ceb2f.jpg)
雪は就活キャンプ参加申込書の不参加欄にチェックを入れると、そのまま事務室を出ようとした。
すると、遠藤が声を掛ける。
「お前、青田と仲良いのか?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/05/56/b699b9e4f3e314aac7b78ca5331ca6f6.jpg)
雪はなぜこの人にそんなことを聞かれるのか甚だ疑問だったが、
作り笑いを浮かべると、たまに話す程度だと答えた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/a7/6e064c0ecf23b7e69f5a367e77f3f5ee.jpg)
雪が事務室から出て行くと、遠藤は再びブラインドの隙間から窓の外を見た。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/61/6b/201129fac4d4dbe70bc550fca948a3ec.jpg)
事務室の丁度下のあたりに、青田淳の姿が見える。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/91/d02b37bf90d7f01c77c68e7a8f8da946.jpg)
にこやかに、通りかかった後輩達に挨拶をしていた。
遠藤は彼の笑顔を見ながら、あの忌まわしい記憶を思い出していた。
何を考えてやがるんだ‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/18/0d/b6f5c4324bb1fc5305fde2c9cf6b982d.jpg)
遠藤は青田淳の姿を見つめながら、心の中がざわめくのを感じた。
また何か企んでいるんだろうか、また自分を脅迫してきやしないか‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4e/56/717981c6de05ee5e228d38c843b8ca7b.jpg)
前を見つめる青田淳であったが、次の瞬間遠藤と目が合った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/b2/c73a074e4769636bdc39536c9ba3a7fb.jpg)
遠藤は弾けるように窓から身を離すと、高鳴る心臓の音を聞きながら俯いた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/25/b2be8c554b9e9702d730863fbe1c2d8e.jpg)
ブラインドの締められた事務室は暗く、彼の心の中も暗雲が立ち込めていくような気がした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/47/e7/6aab08e17cd108c808e4384f1606078d.jpg)
お気に入りの歌を口ずさみながら建物から出てきた雪は、彼の姿に気が付いた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/46/3dc2c98e5de35ce7fd46a63f70da9b96.jpg)
目が合うと、先輩は笑って雪に手を振る。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/62/18/b9fcfe966b73d327e25d2e22f30afdd7.jpg)
「ここで何してるんですか?」「もうそろそろ出てくるかと思って待ってたんだ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/27/65/889e13d5d08df5bce34a9421bce1f8b2.jpg)
裏門か正門かと聞く先輩に、雪は正門と答えた。
しかしやはり彼の行動の真意は掴めず、なんだかぎくしゃくしてしまう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/41/2d/0d1b6bb7565a8811bde09ffa95bed2bb.jpg)
すると偶然、健太先輩と佐藤広隆が雪たちの傍を通りがかった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6a/90/8c0b087d03646741e105ab81f0200816.jpg)
この間喧嘩をした二人だが、和解のために飲みに行くと言う。
雪は健太先輩に恵のことを切り出そうかと思ったが、その雰囲気に結局口を噤んだ。
次授業で会った時言うしかないな‥と去って行く健太先輩の後ろ姿を見ていた雪だが、
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/fb/e1bfa30449cb879fd0af3f2c901249e7.jpg)
次の瞬間、青田先輩が大きな声を出した。
「雪ちゃん!足元に何かいる‥!」「ぎゃあっ?!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/38/b7/f8c7e15e76f7d64e9d5e5e1b3c807f1f.jpg)
叫びながら、バタバタとその場で足を動かした雪だが、その足元には何も居なかった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6a/db/3209b8e60f09edc7d9a0931036362297.jpg)
雪が呆気に取られていると、青田先輩は無邪気な笑い声を上げた。
「ぷははは!イタズラだよ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/7c/cecd2e641cb1d4abe6fae8aad41ff339.jpg)
「イ‥イタズラ‥?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/66/33bc598a2580652e4521e9ddda200e7a.jpg)
目を丸くした雪に、先輩はやりすぎたかと謝って来た。
雪は事態が飲み込めずにいたが、とりあえずわざと明るく笑って見せる。
すると先輩はまた笑顔になり、こんなことするのは初めてだと無邪気に笑った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/51/98/4a2ff373951f245e9d76be8e698fd97e.jpg)
よりによってなぜ私にこんなことを‥。雪は掴めない彼に戸惑った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/54/af/072edd6d010059accaf308ee56dac4b0.jpg)
「イタズラってすごい面白いのな」「‥先輩はやめた方がいいかと‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/37/b02f9484027200c8c7075ab63fb1b10b.jpg)
「なんで?」「んー‥、何か違う気が‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/58/9f/58b7095d153086fd4adc7f07e58f53f5.jpg)
「どんな風に?」「いや、なんとなく‥」
「あれ?虫がついてる‥」「もう騙されませんよ‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/42/f8/90ecde9704ca57c25ae029a9616f2ca8.jpg)
二人が構内を歩く様子を、ベンチに座った男が新聞で顔を隠しながらこっそり見ていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/93/7a930a70d6ac8bb6308b10dbf9a981d6.jpg)
その後姿が見えなくなると、男は新聞を下ろして舌打ちする。
「‥チャラチャラしやがって‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/09/ba/dc8220655476bf39c9f2c44712c0b72d.jpg)
亮は苛つきを感じていた。
女を前にしてあんな無邪気に笑う淳は、初めて見た、と。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
雪が事務室の建物から出てきた時に歌っていた歌はコレです↓
Maroon 5 - This Love MUSIC VIDEO
作者さんがMaroon5のファンらしいですね!
今回髪の毛を切った先輩ですが、前回写メ撮った時に「先輩の前髪屋根みたい」って雪が言ったからでしょうね(笑)
次回は<接触>です。
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![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4f/c7/cae9c4cb4d1e139b29152eb4cdc17653.jpg)
手には先日雪が恵に貸した本を持っている。
雪はお礼を言うと、本を受け取った。彼が髪の毛を切ったことに内心気がつきながら。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/bb/7827483b4c3397dc5dcc79aaf67cd045.jpg)
そのままニコニコと雪の前に立っている先輩に、
雪はどうかしたんですかと声をかける。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/54/73/ea7eee8d9cca1beddfc95cb6c36dc373.jpg)
「俺、何か変わったと思わない?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1f/f4/8328a88d1f2d539d3b961a3a783528c3.jpg)
雪は最初彼が何を言っているのか分からなかったが、もしかしてと思い言ってみた。
「か‥髪?髪が短く‥」「うんうん!当たり!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/50/35/6aa3d74e96657f01f1114ba76c29e51f.jpg)
変じゃないかなぁと髪の毛を触りながら雪を見る先輩に、
雪はまさか嫌味じゃないよな‥と訝しげに思いながら、彼の髪型を褒めた。
(彼女は髪の毛にコンプレックスがあるので、サラサラヘアの彼が髪の毛について言及する事にことの外敏感だ)
「とっても似合ってますよ!先輩は格好いいから何だって‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/f9/94976fac56c8b7c80dd03a55bbee9669.jpg)
まぁ嘘ではないが、とりあえずリップサービス‥と思いつつ、雪はにこやかに言った。
「え?本当に?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/54/fb/453c207ad19fb9764a7b7758af4bc33d.jpg)
雪の予想に反して、青田先輩は真顔で返して来た。
リップサービスという心の声が聞こえたんじゃないかと思うような反応に、雪はたじろぎながら尚の事褒める。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/67/ef/d8a83b86c1007273359c539cdcc416ce.jpg)
「あー‥、ありがと」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/38/e7/1565a3ba14ed6917981aaafeecd48abe.jpg)
掴みにくい彼の見せるその表情は、多分照れてる時のもの。
雪はムズムズしながら、「本当のことを言ったまでです‥」と太鼓を叩いた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/a5/31e900ea46109c0ec53c39132e625104.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/15/58c9661fd535dfc083c893b435586ed8.jpg)
遠藤修が廊下を歩いていると、ふと前に赤山雪が居るのが目に入った。
彼女のサインが必要な書類が事務室にあり、折を見て呼びだそうと思っていたところだったので、
遠藤は早速声を掛ける。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/40/9a/7bccd9f375984d2cf0cff1e1bb34aff6.jpg)
すると壁の影に隠れていて見えなかった、彼女が談笑していた相手と目が合った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6a/56/07ae7923fe3c366ba528fb4883440caa.jpg)
青田淳‥。
遠藤はビクッと身体が強張るのを感じた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/b6/ce2697952333db2408406b5ad39f92d8.jpg)
遠藤は青田淳から視線を外し、雪に事務室に寄るよう言うと、そのまま早足で去って行った。
雪は先輩にお先に失礼しますと言うと、早足の遠藤を小走りで追う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/37/17/9e5641bab0a5881af0c6090f0f55b9ba.jpg)
雪の心に、モヤモヤとしたものが膨れ上がった。
なんだろう今の‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0c/a5/fab50c97266c059eecaba9880897b34f.jpg)
雪の鋭敏さが、先ほどの遠藤と先輩の間にあった変な空気を察知していた。
見ないフリ見ないフリ‥。気にしない気にしない‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2b/6c/0a44e2f1fd6c27eb5cc5b07dc0eb2917.jpg)
雪はその背中を追いながら、必死に頭をもたげるものを振り切ろうとした。
事務室では、遠藤がブラインドの隙間から窓の外を窺っていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/38/ef/eb1a2cb7b12e8bc98a8d1b0fa75ceb2f.jpg)
雪は就活キャンプ参加申込書の不参加欄にチェックを入れると、そのまま事務室を出ようとした。
すると、遠藤が声を掛ける。
「お前、青田と仲良いのか?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/05/56/b699b9e4f3e314aac7b78ca5331ca6f6.jpg)
雪はなぜこの人にそんなことを聞かれるのか甚だ疑問だったが、
作り笑いを浮かべると、たまに話す程度だと答えた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/a7/6e064c0ecf23b7e69f5a367e77f3f5ee.jpg)
雪が事務室から出て行くと、遠藤は再びブラインドの隙間から窓の外を見た。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/61/6b/201129fac4d4dbe70bc550fca948a3ec.jpg)
事務室の丁度下のあたりに、青田淳の姿が見える。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/91/d02b37bf90d7f01c77c68e7a8f8da946.jpg)
にこやかに、通りかかった後輩達に挨拶をしていた。
遠藤は彼の笑顔を見ながら、あの忌まわしい記憶を思い出していた。
何を考えてやがるんだ‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/18/0d/b6f5c4324bb1fc5305fde2c9cf6b982d.jpg)
遠藤は青田淳の姿を見つめながら、心の中がざわめくのを感じた。
また何か企んでいるんだろうか、また自分を脅迫してきやしないか‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4e/56/717981c6de05ee5e228d38c843b8ca7b.jpg)
前を見つめる青田淳であったが、次の瞬間遠藤と目が合った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/b2/c73a074e4769636bdc39536c9ba3a7fb.jpg)
遠藤は弾けるように窓から身を離すと、高鳴る心臓の音を聞きながら俯いた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/25/b2be8c554b9e9702d730863fbe1c2d8e.jpg)
ブラインドの締められた事務室は暗く、彼の心の中も暗雲が立ち込めていくような気がした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/47/e7/6aab08e17cd108c808e4384f1606078d.jpg)
お気に入りの歌を口ずさみながら建物から出てきた雪は、彼の姿に気が付いた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/46/3dc2c98e5de35ce7fd46a63f70da9b96.jpg)
目が合うと、先輩は笑って雪に手を振る。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/62/18/b9fcfe966b73d327e25d2e22f30afdd7.jpg)
「ここで何してるんですか?」「もうそろそろ出てくるかと思って待ってたんだ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/27/65/889e13d5d08df5bce34a9421bce1f8b2.jpg)
裏門か正門かと聞く先輩に、雪は正門と答えた。
しかしやはり彼の行動の真意は掴めず、なんだかぎくしゃくしてしまう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/41/2d/0d1b6bb7565a8811bde09ffa95bed2bb.jpg)
すると偶然、健太先輩と佐藤広隆が雪たちの傍を通りがかった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6a/90/8c0b087d03646741e105ab81f0200816.jpg)
この間喧嘩をした二人だが、和解のために飲みに行くと言う。
雪は健太先輩に恵のことを切り出そうかと思ったが、その雰囲気に結局口を噤んだ。
次授業で会った時言うしかないな‥と去って行く健太先輩の後ろ姿を見ていた雪だが、
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/fb/e1bfa30449cb879fd0af3f2c901249e7.jpg)
次の瞬間、青田先輩が大きな声を出した。
「雪ちゃん!足元に何かいる‥!」「ぎゃあっ?!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/38/b7/f8c7e15e76f7d64e9d5e5e1b3c807f1f.jpg)
叫びながら、バタバタとその場で足を動かした雪だが、その足元には何も居なかった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6a/db/3209b8e60f09edc7d9a0931036362297.jpg)
雪が呆気に取られていると、青田先輩は無邪気な笑い声を上げた。
「ぷははは!イタズラだよ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/7c/cecd2e641cb1d4abe6fae8aad41ff339.jpg)
「イ‥イタズラ‥?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/66/33bc598a2580652e4521e9ddda200e7a.jpg)
目を丸くした雪に、先輩はやりすぎたかと謝って来た。
雪は事態が飲み込めずにいたが、とりあえずわざと明るく笑って見せる。
すると先輩はまた笑顔になり、こんなことするのは初めてだと無邪気に笑った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/51/98/4a2ff373951f245e9d76be8e698fd97e.jpg)
よりによってなぜ私にこんなことを‥。雪は掴めない彼に戸惑った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/54/af/072edd6d010059accaf308ee56dac4b0.jpg)
「イタズラってすごい面白いのな」「‥先輩はやめた方がいいかと‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/37/b02f9484027200c8c7075ab63fb1b10b.jpg)
「なんで?」「んー‥、何か違う気が‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/58/9f/58b7095d153086fd4adc7f07e58f53f5.jpg)
「どんな風に?」「いや、なんとなく‥」
「あれ?虫がついてる‥」「もう騙されませんよ‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/42/f8/90ecde9704ca57c25ae029a9616f2ca8.jpg)
二人が構内を歩く様子を、ベンチに座った男が新聞で顔を隠しながらこっそり見ていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/93/7a930a70d6ac8bb6308b10dbf9a981d6.jpg)
その後姿が見えなくなると、男は新聞を下ろして舌打ちする。
「‥チャラチャラしやがって‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/09/ba/dc8220655476bf39c9f2c44712c0b72d.jpg)
亮は苛つきを感じていた。
女を前にしてあんな無邪気に笑う淳は、初めて見た、と。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
雪が事務室の建物から出てきた時に歌っていた歌はコレです↓
Maroon 5 - This Love MUSIC VIDEO
作者さんがMaroon5のファンらしいですね!
今回髪の毛を切った先輩ですが、前回写メ撮った時に「先輩の前髪屋根みたい」って雪が言ったからでしょうね(笑)
次回は<接触>です。
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