
雪と恵は昼食を取りながら、大学生活のことについて話していた。
雪は恵が学科は違えど同じ大学に入学してきたことが嬉しくて、
つい色々アドバイスをしてしまう。
それに対して恵はニコニコと応えてくれるので、雪は嬉しかった。

するとふいに恵が、一昨日構内で健太先輩に会ったと言い出した。
恵の姿を見ると声を掛けてきた健太先輩は、案の定馴れ馴れしい態度で彼女に接して来たと言う。

自分のことは健太さんと呼んでほしいと言い、これからお互いをもっと知っていこうと言うとほくそ笑んだ、と。
例の脳内暴走列車・柳瀬健太である。

途中佐藤広隆が通りかかった際、ノートを借りようと健太先輩は彼を呼び止めたが、
佐藤は無視して立ち去った。

恵に携帯番号を聞こうとしていた健太先輩だったが、
結局そのまま佐藤広隆を追いかけてその場を後にしたと言う‥。

雪は予想通りの健太先輩の暴走ぶりに打ちひしがれた。

恵には経営学科の近くに来る時は必ず連絡することと、
また迫ってこられたら彼氏が居ると言うようにと注意した。

すると恵は何か言いたげに、視線を空に彷徨わせた。
おずおずと、聞きたかったことを口にする。
「ねぇ、ゆき姉‥さっきの先輩って‥人気あるんでしょ?」

恵の脳裏に、爽やかな笑顔を浮かべる青田先輩の姿が蘇った。
雪は彼女の興味津々な視線を感じて、「やっぱりこの話題がキター!」と身構える。

「まぁ‥ね。見ての通り、あの人はもう芸能人みたいなもんだから!あははは‥」

嘘では無かったが、青田先輩は雲の上の人だという雰囲気を醸し出しながら雪は彼についての見解を述べた。
すると恵は、その表情を曇らせながら多少自虐的にこう言う。
「そうだよね‥当然モテるよね‥かっこいいもん‥」

その表情を前にして、雪はなんだか悪いことをしたようで良心がチクチクと痛む。
続いて恵は、青田先輩の名前を聞いてきた。
”青田淳”と彼のフルネームを口にすると、恵は「名前までかっこいい」と頬を染めた。

その天使のような可愛さビームに、雪はやられっぱなしだ。

恵の心から恋心が生まれるのを、ひしひしと感じながら‥。

別の日、雪と聡美と太一は、三人でスーパーに来ていた。
今日は同じ学科の直美さんの誕生日。直美さんは同期だが、二歳年上のお姉さん的存在だ。
同学科の女の子たちで寄り合って、誕生祝いをすることになったのだった。
ケーキはもう他の子達が調達したということで、雪達三人はお菓子を買っていくことになった。

店内のパネルを見てお菓子コーナーはあっちだよと言う雪に対して、太一は野生の勘で違う方向へ歩いて行く。
その間にも彼は試食を食べまくり、店員に注意されていた‥ww
お菓子の棚を見て何がいいかと迷っていると、ふいに聡美が全然関係ないことを言い出した。
「ねぇ雪、とりあえず合コンしよーよ」

いきなり何を言い出すのかと雪は困惑したが、聡美はこの間合コンしたメンバーと意気投合したので、
今度は雪も一緒にどうかと誘ってきた。

いつ合コンなんかしたんだろう‥。
そう雪が問うと、ふいに太一がお菓子を落とした。

呆気に取られた表情でこちらを見つめる太一は、
明らかに動揺していた。

その不自然な態度を見て、雪は太一の抱いた恋心を確信する。

脳裏には去年の夏、
横山を殴った時に聡美に嫌われるんじゃないかと泣いていた太一が思い浮かんだ‥。

しばしぼんやりしていた雪だが、聡美に髪を弄られると我に返った。

聡美は合コンに行ったことを事前に雪に言わなかったため、
それを気にしてぼんやりしてるのかと気を揉んでいた。

雪が否定すると、聡美は「次からは何でも雪に話すから」と肩を抱いた。
再び合コンに行くかどうか聞いてきた聡美に、雪は合コンなど考えたことも無かったし、
あまりにも急すぎると難色を示した。
すると聡美は「青田先輩のことがあるからでしょー?」とからかってきた。

二人に進展があったら絶対話してね、と言う聡美に、雪は乾いた笑いを立てるしか無かった‥。


学校に着くと、早速直美さんの誕生日パーティーが始まった。
同期、先輩、後輩と女の子達が集まって、彼女の誕生日を祝う。彼女は誕生日ハットもかぶり、嬉しそうだった。

ただ一人の男子、太一は机に並べられた沢山のお菓子とケーキにがっついていたが‥。
ふいに同期の女の子が、雪の友達ですごく可愛い子がいると聞いたと言ってきた。

「健太先輩に紹介することになったんでしょ?超自慢してたよ」
雪は誇張された真実に驚きを隠せない。
「ちょっとぉぉ!なんでそんな話になってるの!彼氏持ちって言ったのに‥。
あまりにもしつこいから聞いてみるって言って流しただけだったのに‥!」

隣で聡美が「ハメられたわね‥」とお気の毒モードで言った‥。
女子たちの話題は、そのまま健太先輩の暴走機関車ぶりについてに移っていった。

~語られた暴走っぷり一覧~
・基本ホラ吹きだ。
・頼んでもないのにイッキした挙句、外で吐いていた。
・ご飯を奢ると言っときながら途中で姿をくらます。
雪はその話題を黙って聞いていたが、なぜかそこから話は横山翔についての話題に移った。

去年横山と一悶着あった雪と聡美は、その名前が出るとビクッと動きを止めたが、
学科の子たちは内情を知らないため、横山についての噂を続けた。

可愛い子なら誰にでも声を掛ける横山。その軽率な態度に皆が辟易していた。
中でも平井和美にまとわりついていた時は、その激しいバトルは凄かったと皆笑っていた。
しかし去年の秋学期から、なぜ彼が急に休学したかについては、誰も知らないでいた。

雪はささやかれる話題、久々に出てきた名前を聞いて、ぼんやりと去年のことを思い出していた。
すると携帯が鳴って、メールが一通入ってきた。

一緒にやろうって言ってた課題だけど、ちゃんとやってる?
来週にでも会ってお互い確認し合おう。^^

雪は青田淳からのメールに顔をしかめた。
”課題”という単語に目が留まる。
去年、平井和美が故意にプリントをすり替え、徹夜で課題に追われた記憶が蘇った。
懐かしい名前たちは苦い記憶を思い出させる。
雪は、心がズキズキと痛むのを感じていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<恋心2>でした。
今回も日本語版でカットされた内容が殆どでした。確かになきゃないで話は通じますが‥。
個人的にはスーパーで太一が試食しまくって店員さんに注意されてるのとか、なんでカットした!という感じですww
次回は<課外課題>です!
人気ブログランキングに参加しました
