さて、雪と淳が二人で携帯写真を撮った日のことを、淳の目線にてなぞってみよう。
その日、淳は真新しいスーツを身に纏っていた。
「おーい!青田さんよ!」

声を掛けて来たのは柳である。
「いや〜キマってるね〜!どこのモデルかと思ったぜ!」
「何だよお世辞なんか」「お世辞じゃねーっての」

「青田先輩かっこいい」と遠くで黄色い歓声が聞こえる。
柳はそちらを指しながらスーツ姿の淳を褒めちぎった。
「ほら見ろ、皆お前に釘付けだっつーの!マジでイケメてるからよ。自分でもそう思うだろ?」
「思ってないって」

「あ、俺ちょっと事務室に書類確認しに行かなきゃ」
「おう」

そう言って歩き出した時だった。
ポケットに入れていた携帯が、一通のメールを受信する。

先輩
授業のプリントを渡したいのですがどこにいますか?


「雪ちゃん?!」

淳は初めて彼女から送られて来たメールに心底驚いた。
周りの人が思わず振り向く程の大声で、その名を口にしてしまうほどに。


まるで吸い寄せられたかのように、淳はその画面に釘付けだった。
ようやく文章の内容が頭に入ってくる。
「あ、プリント‥」

あれほど切望していた彼女との接点が、再び現れようとしていた。
淳はその指先で、それを繋ぐ。
学館の二階まで持って来てくれると嬉しいな^^

そう返信した後も、淳はずっと携帯を手から離さなかった。
胸の中に、風が吹いているかのように落ち着かない。

ピロン

はい

一文字だけのその返信が、淳の心を躍らせる。
淳は早足で学館の二階へと上がって行った。


落ち着かない胸の内を持て余しながら、淳はジャケットを脱いだ。
無造作に髪の毛を整える。


するとガラスに映る自分の姿が、ふと彼の動きを止めた。
いつもより少しよそ行きの、その自分の姿が。

先程の柳の言葉が蘇る。
「お前マジでイケメてるから!」

胸の中に吹く風が、ふと甘い期待を煽った。
今の自分の姿を、彼女に見せたとしたら‥。


‥と考えた所で、淳は我に返った。
考えを打ち消すように、髪の毛をぐしゃぐしゃにする。
何考えてんだか‥


すると眼下に広がる風景の中を、彼女がこの建物に向かって歩いてくるのが見えた。
淳の視線は彼女に惹き付けられる。

オレンジ色の豊かな髪が、晩春の中で柔らかになびいていた。
彼女は今、淳の元へと向かっている。


まるでキラキラ光る風が胸の中を吹き抜けるような、そんな気持ちに包まれた。
彼女の表情、動き、その一つ一つが、全て特別なものに思えて‥。


春だからだろうか

俺はもうすぐ卒業する。
残された時間は、あと僅かだ

光る風が吹き抜けて行った後で、ふと現実に返って胸が鈍く傷んだ。
時の流れは変えられない。

一日一日を意味あるものにしたいと思った。

たとえ、今この瞬間が刹那に過ぎ去ってしまうとしても、
「‥先輩?」

「一緒に写真撮ろうよ」「はいぃ?!」

意味あるものとして、それを意義として刻みたいと。
カシャッ

「ゲッ?!」

「へ、変な顔してるじゃないですか!」「え?どこが?」
「目がラリってるじゃないですか!髪の毛ボサボサだし!間抜けな顔してますよ!」
「何もだよ?」「私だけ悔しいじゃないですか〜!先輩はアイドルみたいでいいかもしれないですけど!」

必死な顔をしてピョンピョン飛び跳ねる彼女。
まるで兎みたいなその姿に、思わず淳は笑顔になる。

「先輩の前髪屋根みたい!」「何っ」

その日淳は、一つ一つをメモしてあげるみたいに、
彼女と過ごす一時一時を、胸の中に刻んで行こうと決めたのだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<<淳>風光る>でした。
淳目線の話ですね〜^^
2017年の2月に更新された淳の回想編より、記事として時系列順に入れてみました。
行動全てに意義を持たせる生き方をしている、という風に雪の目に映った淳でしたが、
実は淳としては雪と出会ってからのことが大切で、それを意義として刻んで行こうという意志の現れだったのですね。
こうして並べてみると面白いですね〜^^
☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は文章が途中で切れ、
半角記号、ハングルなどは化けてしまうので、極力使われないようお願いします!
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その日、淳は真新しいスーツを身に纏っていた。
「おーい!青田さんよ!」

声を掛けて来たのは柳である。
「いや〜キマってるね〜!どこのモデルかと思ったぜ!」
「何だよお世辞なんか」「お世辞じゃねーっての」

「青田先輩かっこいい」と遠くで黄色い歓声が聞こえる。
柳はそちらを指しながらスーツ姿の淳を褒めちぎった。
「ほら見ろ、皆お前に釘付けだっつーの!マジでイケメてるからよ。自分でもそう思うだろ?」
「思ってないって」

「あ、俺ちょっと事務室に書類確認しに行かなきゃ」
「おう」

そう言って歩き出した時だった。
ポケットに入れていた携帯が、一通のメールを受信する。

先輩
授業のプリントを渡したいのですがどこにいますか?


「雪ちゃん?!」

淳は初めて彼女から送られて来たメールに心底驚いた。
周りの人が思わず振り向く程の大声で、その名を口にしてしまうほどに。


まるで吸い寄せられたかのように、淳はその画面に釘付けだった。
ようやく文章の内容が頭に入ってくる。
「あ、プリント‥」

あれほど切望していた彼女との接点が、再び現れようとしていた。
淳はその指先で、それを繋ぐ。
学館の二階まで持って来てくれると嬉しいな^^

そう返信した後も、淳はずっと携帯を手から離さなかった。
胸の中に、風が吹いているかのように落ち着かない。

ピロン

はい

一文字だけのその返信が、淳の心を躍らせる。
淳は早足で学館の二階へと上がって行った。


落ち着かない胸の内を持て余しながら、淳はジャケットを脱いだ。
無造作に髪の毛を整える。


するとガラスに映る自分の姿が、ふと彼の動きを止めた。
いつもより少しよそ行きの、その自分の姿が。

先程の柳の言葉が蘇る。
「お前マジでイケメてるから!」

胸の中に吹く風が、ふと甘い期待を煽った。
今の自分の姿を、彼女に見せたとしたら‥。


‥と考えた所で、淳は我に返った。
考えを打ち消すように、髪の毛をぐしゃぐしゃにする。
何考えてんだか‥


すると眼下に広がる風景の中を、彼女がこの建物に向かって歩いてくるのが見えた。
淳の視線は彼女に惹き付けられる。

オレンジ色の豊かな髪が、晩春の中で柔らかになびいていた。
彼女は今、淳の元へと向かっている。


まるでキラキラ光る風が胸の中を吹き抜けるような、そんな気持ちに包まれた。
彼女の表情、動き、その一つ一つが、全て特別なものに思えて‥。


春だからだろうか

俺はもうすぐ卒業する。
残された時間は、あと僅かだ

光る風が吹き抜けて行った後で、ふと現実に返って胸が鈍く傷んだ。
時の流れは変えられない。

一日一日を意味あるものにしたいと思った。

たとえ、今この瞬間が刹那に過ぎ去ってしまうとしても、
「‥先輩?」

「一緒に写真撮ろうよ」「はいぃ?!」

意味あるものとして、それを意義として刻みたいと。
カシャッ

「ゲッ?!」

「へ、変な顔してるじゃないですか!」「え?どこが?」
「目がラリってるじゃないですか!髪の毛ボサボサだし!間抜けな顔してますよ!」
「何もだよ?」「私だけ悔しいじゃないですか〜!先輩はアイドルみたいでいいかもしれないですけど!」

必死な顔をしてピョンピョン飛び跳ねる彼女。
まるで兎みたいなその姿に、思わず淳は笑顔になる。

「先輩の前髪屋根みたい!」「何っ」

その日淳は、一つ一つをメモしてあげるみたいに、
彼女と過ごす一時一時を、胸の中に刻んで行こうと決めたのだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<<淳>風光る>でした。
淳目線の話ですね〜^^
2017年の2月に更新された淳の回想編より、記事として時系列順に入れてみました。
行動全てに意義を持たせる生き方をしている、という風に雪の目に映った淳でしたが、
実は淳としては雪と出会ってからのことが大切で、それを意義として刻んで行こうという意志の現れだったのですね。
こうして並べてみると面白いですね〜^^
☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は文章が途中で切れ、
半角記号、ハングルなどは化けてしまうので、極力使われないようお願いします!
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